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二年目

121
2020年の詩まとめ
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2020年10月の記事一覧

オルゴール

オルゴール

どんな曲でも聴いているとさみしくなってしまうね

過去を丁寧に掬いとって小さな箱に詰める

欠片が静かに跳ねて脳に眠っているあの日の記憶が覚醒します

忘れてしまわないようにそっと蓋を閉めて両手で包み込む

つぎはいつ開けるかわからないけれど

決して古くならない魔法の箱

迷子

迷子

秋の夕方、誰かに呼ばれた気がする

迷子になってしまいそうな空気のにおい
懐かしくて、すこし焦げくさい、でも嫌いじゃない

夕日を背にしてのびる影につられてどこまでも歩いて歩いて街のすみっこ
あと数歩進めば消えてしまえるかな
あかく燃える夕日にとけて一部になる

もうおうちに帰ろう、チャイムが鳴ります
誰でもないそれがわたしを現実に連れ戻す

何処からか漂う夕餉のにおい
わたしを迷わすにおいは消え

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東から

東から

きっとわたしが居なくなっても朝日の届かない部屋がひとつ増えるだけで
君にはちゃんと朝日が届く、そのくらいの変化しかないんだよ

線香のにおいがまだかすかに残る喪服をクリーニングにださなきゃ、

日常に戻る
わたしがいない世界がはじまることにきっと君は疑問を抱かない
君は生きているから

わたしはいつか誰かの記憶にしかならない
記憶のわたしは誰にでも優しくて大切な存在になってしまうでしょう

だか

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梅雨

梅雨

雨の日は無理して笑わなくても許されるような気がして
傘で表情の見えない君の機嫌をうかがわなくても許される気がして
雨音だけがふたりを隔てているのに、とても遠くに居るみたい
世界の音をかき消してくれるこの音が嫌いになれません
湿気でヘアスタイルが崩れるからと愚痴をこぼす君はかわいいよ
すべてが洗い流されてリセットされたらいいのに、と
スタバのカウンターから眺めながら飲むフラペチーノは味気ない雨の日に

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