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三年目

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2021年の詩まとめ
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2021年8月の記事一覧

0831

0831

美術室の隣の音楽室
重い扉を引けば天井が高く臙脂色に囲まれた空間
すべての教室にある机や椅子たちは
違和感として存在していて
五線譜黒板にらくがきすること
なんだか躊躇われて
いつだって綺麗で長いチョークが並んでる
夜中に絵画の音楽家たちが奏でるピアノ聴きたくて
忍び込んだ8月31日

「   」

「 」

美術館の企画展示室
いちばん広い展示室の中央に置かれているベンチに腰掛けて
目の前の作品だけを静かに見つめる時間
あの時間をつくれるひとが羨ましかった
そのうち作品を見ているのは瞳だけで
きっと今晩の夕食の献立なんかを考えていたり
玄関に飾る植物を選んでいたりする
ゆるやかに現実が混じっている
いつも埋まっているベンチはおとなだけの特権で
あとすこし詰めてくれたらひとり座れる微妙な空白は
おとなた

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summer

summer

校舎裏のプール
夏限定で僕たちの学校生活の一部となる
去年の一年生が育てた朝顔が
今年はプールのフェンスに絡まって
植物係だけが青い花を見ていた朝
直射日光に焦げるプールサイドを
ともだちの肩つかみながら走らないように
心だけ走って
塩素のにおいと泳げない僕の
夏の記憶のにおい

ふとん

ふとん

こどもの頃、掛け布団から足先がはみでていると
おばけやなんだか怖いものに引っ張られるって
根拠もない恐怖に怯えていた
暗闇に紛れてやってくるそれらに恐怖して
夜が怖かった
暗いことが怖かった
純粋な恐怖はいつのまにか居なくなって
夜に
暗闇に
安心しているおとなのわたしたち

当たり

当たり

アイスの当たり棒がでた
こどもの頃はいくら願っても当たらなかったのに
興味が薄れた頃にやってくるなんて意地悪ね
もうすこし暑ければ午後のおやつに引き換えてしまいたかったけれど
君との約束がなくなってしまったついでに買っただけだから
ほんとうは当たりなんてほしくなかったよ
神様が味方してくれないのはいつものことなのにね
遠くで蜩が鳴いてる
すべて汗になって流れたわたしのなかの水分は涙になれなかった