気持ちと行動を分けるという視点
前回、前々回と、気持ちに寄り添う大人のサポートについて書きました。
今回は、気持ちと行動を分けるという視点について書きたいと思います。
主体性を尊重し、子どもたちが「やりたい」と言ったことばかりやっていると、わがままで好き勝手なことをする子に育つのではないかと言われることがあります。しかし、実際はそうではありません。むしろ、その逆です。自分が「やりたい」という気持ちと同じだけ、他の人の気持ちも尊重する必要があるからです。
前回の「気持ちを伝え受け止め合う関係」で書いたように、例えば、子どもたちが海に出かけて磯で遊んでいた時に、2人の子が魚を捕ろうとタモ網を取り合っていたら、私たちは、まずそれぞれの言い分を聞きながら気持ちを受け止めていきます。そして、お互いが「使いたい」という気持ちであれば、それぞれの気持ちを受け止めあってもらい、解決策は提示せず「じゃあどうする?」と本人たちで決めるように促します。
聴いたり受け止めあったりする「気持ち」に対して、解決策は「行動」の部分です。100%自由なのは気持ちだけであって、行動は制約されます。気持ちは自分だけのものですが、その気持ちを行動に移すと、他者との関わりが生まれてきます。自分の気持ちと相手の気持ちをどちらも尊重しつつ、行動について完全に両立しない時はどこかに折り合い点を見つけることになります。そういう体験を繰り返すことで、自分の気持ちを表明するとともに、相手の気持ちを聴くという本当の意味で思いやりを持ちながら、話し合いができる子へと育っていくと考えられます。これが、わがままで好き勝手する子に育つのとは逆だという理由です。
この気持ちや行動に関してのイメージは、図のようになります。
このことは、否定された場合を考えると分かりやすいと思います。「そんなことをしてはダメだ」と行動を止められたり、「そんなことを考えてはダメだ」と考えを否定されたりしてもそれほど傷つきませんが、「そんな感情になってはダメだ」と気持ちを否定されるとすごく傷つきますし、ましてや「お前はダメなやつだ」と人格を否定されたらもっと傷つきます。
気持ちは人格に近いところにあり、行動は目に見えるところにあるけど人格からは遠いところにあります。だから、行動だけを見て関わっても、人格を育てることにはなかなか繋がりません。気持ちにアプローチするということは、より人格に近い部分との関わりであり、それによって人格形成を目指しているといえるのです。
子どもと関わる時、その子の気持ちは?行動は?切り分けて考えると少し今までと違ったことが見えてくるかもしれません。ぜひ試してみてください。
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