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「校則問題は学校を卒業しても続く」生徒個人が意見をいえるように校則を見つめ直す【みんなのルールメイキング 後編】

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中高時代、筆者は学校の校則に何も考えずにしたがっていた。しかし生徒自身が自分自身に関わるルールについて考え直すことは社会に出てからも大切な経験になるのではないだろうか。

前編はこちら。

「ルールメイキング」は学校の校則・ルールの対話的な見直しを通じて、全員が主体的に関われる学校をつくっていく取り組みだ。

前半の記事「『これって何のための校則なの?』校則の見直しから、先生と生徒の信頼が生まれた【みんなのルールメイキング 前編】」では学校単位でプロジェクトを進め、実際に先生と生徒が会話の場を作り、校則を変更した体験を持たれる山木結衣さんを取材した。

一方で、校則見直しでは学校の協力が得られにくい場合もある。中村眞大さん(以下、中村さん)は、そのような生徒も個人単位で参加できるプログラムを企画している。その目的は単に校則の問題を解決するためだけではなく、個人が社会に出たときに「自分の意見を言えるようになってほしい」という思いがあった。

後編は中村さんに、個人単位で参加できるルールメイキングの支援や、その目的について伺った。

インタビューを受けてくれた方:中村眞大(なかむらまさひろ)さん:高校在学中にドキュメンタリー映画「北園現代史~自由の裏に隠された衝撃の真実~」を作成。現在は認定NPO法人カタリバ(以下、カタリバ)の「みんなのルールメイキング」の大学生サポーター。

中村眞大さん。写真=取材者撮影

ルールメイキングに積極的でない学校でも

ーー現在支援している、個人でも参加できるルールメイキングについてお聞きしたいです。

「僕はカタリバの『みんなのルールメイキング』のプログラムの一つである「大学生サポーター」の活動に参加しています。カタリバのルールメイキング事務局が取り組んでいるのは、学校や自治体と協働しながらルールメイキングを推進していくことですが、僕たち大学生サポーターは事務局が担いきれない生徒の交流の場を作っています。
 
基本的にカタリバのルールメイキングは、学校の同意を得て生徒もやりたいと言って初めて成立するものなんですね。ただ限界もあって、学校長の同意がなければ、学校としてルールメイキング活動を始められないっていう現状があります。校則を変えていくプロジェクトなので、先生方の同意がなければプロジェクトを進めるのは難しいですよね。
 
学校の中で校則見直しをしたいけれども、先生方に対話を求めても、うまく応じてもらえない場合がまだまだあります。
生徒は見直しをしたいけど、どうやって先生方と対話をしたら良いのか…学校としてルールメイキングに取り組んでいくためには、生徒起点で何をしたら良いのか…そんなことを考えている人が集まって意見交換や情報共有ができる場を僕らはつくっています。

活動内容としてはどういった形で対話のきっかけを作れるかという話をしたりとか、 中高生たちの興味を持つようなイベントを開いたり、中高生同士で交流して繋がったりしています」

ーー中村さんは学生サポーターとしてどのようにこの活動をサポートされるのですか?

「中高生メンバーをグループに分けて、 学生サポーターが2人くらいの体制でついています。グループでメッセージを送りあえるオープンチャットがあり、そこで定期的にミーティングを開いたり、イベント企画のお手伝いをしたりします。

イベント企画は中高生メンバーが主催なので細かい部分の手伝いだったり、作業のアドバイスだったりを行います。例えば、イベントにお呼びする弁護士さんにメールを送りたいってなった時のメールの文面を確認したりとかです」

個人では難しいイベントも力をかりて

ーー具体的なイベントの例としてはどのようなものがありますか? 

「校則に詳しい弁護士の方をお招きして、オンラインで勉強会を中高生メンバー主催で開催しました。

実は中高生メンバーの1人から、学校と対話をしていく中で、校則の法律に関する知識をつけたいという意見が出ました。ルールメイキング事務局にも協力を得て教育法専門の弁護士の方にゲストで来ていただきました。

弁護士さんの説明を聞くことで、僕自身もすごい勉強になることがたくさんあったので、中高生メンバーからしても結構新しい学びがあったと思います。 

生徒個人で弁護士さんを呼ぶって結構難しいと思うんですね。中高生メンバーのコミュニティに入ってることで、 弁護士さんとか、大学の先生とかをゲストに連れてきて、勉強会を開けることは良い点なのかなと」

中村眞大さん。写真=取材者撮影

ーー生徒個人が参加できる場づくりやプログラムを企画されていますが、最終的に生徒にどう成長して欲しいなどありますか?

「校則を見直しすることがゴールではありますが、それが現実的に難しい場合もあります。それでも生徒たちが学校を超えて対話や意見を言ったりすることを通じて、『自分の意見を言ったら、こういう風に社会でルールを作れるんだ』、『ルールは押し付けられるものじゃなくて、自分たちで作っていけるものなんだ』と認識してもらおうと私たちは思っています。

多くの人にとって、自分の意見が受け入れられた経験を持っている生徒が、まだまだ少ないという現状があります。 

民主主義社会では市民が声を上げて、それが政治だったりとか、行政に反映されていくっていうのが、本来のシステムではあります。しかし、学校にいる間に自分の意見が意思決定の場面で反映された経験が少ないので、社会に出てからもなかなか自分の意見を言えない、言っても無駄だという風に思ってしまうことがあります。

国民の意見が、結果的には法律を作ることになります。 例えば、国民が政治家にこういう法律を作って欲しいですと言って、政治家が発言をして議会可決されれば、その法律が通るというのが日本の社会です。学校でも、生徒が意見を言って、それが学校のルール等に反映される経験をしていくことが大切だとおもいます。

2022年9月に開催されたリアルイベント「ルールメイキング・サミット」をサポートしている中村さん(左) 写真=カタリバ提供

校則の問題は学校だけの問題でない

ーー最後に読者の方にメッセージをお願いします!

「個人的にはすでに高校などを卒業された方には『卒業したからそれでいいや』にはなって欲しくないなと思っています。

ルールメイキングは単に校則を見直すプロジェクトではありません。生徒一人ひとりが自分の所属している学校のルールに意見を出すこと、それを集約して、生徒同士や先生・保護者・地域の方を交えながらルールを見直していく、その過程に学びがあります。

そういう経験を学生時代にできたか否かで、社会に出た時の選択肢が変わってきます。社会には校則以上に沢山のルールがあるのだと思います。時にはそのルールに苦しめられることもあるかもしれません。その時に『ルールを変えよう』と思えるかどうかで、人生が変わることもありえるかもしれません。

そう考えると『卒業したからいいや』ではなくて、社会全体に通じる問題なんだと思います。だから社会に出てからも、1人の大人として中高生を応援して欲しいです。誰でもできる応援の仕方として校則問題に取り組んでいる政治家に投票するとか、校則問題のニュースをリツイートするとか、ぜひ注目してみていただけたらなと思います。
現在中高生である方に関しては、  人権侵害の恐れがあるような生徒指導を受けてる場合は、例えば子どもの人権110番といういつでも相談できるような弁護士の相談窓口があったりとか、校則見直しに取り組んでる団体だったりとか相談できる窓口はたくさんあります。

悩んでることがあったら、抱え込み耐えるのでなく、相談をしてみるとか一歩踏み出してみていただければ、 何か変わるきっかけになるかもしれません」

中村眞大さん。写真=取材者撮影


執筆者:河辺泰知/Taichi Kawabe
編集者:石田高大/Takahiro Ishida、原野百々恵/Momoe Harano



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