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#連載小説
神影鎧装レツオウガ 第九十六話
Chapter11 決断 02戻る 総合目次 | マガジン | 進む
月面。
モノクロフィルムよりもくっきりと、白と黒が分かたれた死の世界。
深夜の墓場より静まりかえったこの場所に、動くものなぞ何一つ無い。
筈、だった。
「あン?」
地平線の近く。宇宙と地面の境目辺りに、何やら蠢く点が一つ。よくよく目をこらしてみれば、それは一台のバイクであった。
排煙代わりの霊力をたなびかせ、地面
神影鎧装レツオウガ 第六十四話
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Chapter09 楽園 01
◇ ◇ ◇
揮発していく霊力光、剥き出しになるコクピット。かくしてレツオウガは、二人のパイロットを外気へさらけ出した。
しかもそれは、以前のオーディン・シャドー戦のような激闘の結果ではない。
たった一発の銃弾が、それをなしてしまったのだ。
『 !』
コクピット中央。コンソールに左腕を固定するメインパイロ
神影鎧装レツオウガ 第五十四話
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Chapter06 冥王 18
「あー」
気の抜けきった声を上げながら、巌は扉を開ける。
ファントム・ユニット執務室。壁掛け時計を見上げれば、時刻は午後二時少し過ぎ。
途端、空腹を訴え始める胃袋。時間の間隔を思い出したのだ。
腹をさする巌。だが今から食堂へ行っても、ごはんが出るまで大分時間がかかってしまう。
「どーすっかなあ」
「なぁに、ここで食
神影鎧装レツオウガ 第五十三話
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Chapter06 冥王 17『kill me』
三百年以上前。地獄の火クラブが終焉したその日から、ひたすらに自身の再生を求め続けてきた男達の、最初で最後の懇願。
その重さに、コクピット内の誰もが、一瞬言葉を失う。
『殺してくれ、か』
ぽつりと。
静寂を最初に破ったのは、モニタの向こうに居る冥《メイ》だった。
『よもや、僕の前でそんな妄言を吐くヤ
神影鎧装レツオウガ 第三十八話
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Chapter06 冥王 02
何気ない足取りで、冥は紫色の転移術式を潜る。
目的地はとある洞窟の内部。BBB《ビースリー》からの提供資料で構造自体は理解していたが、座標設定自体は適当だ。
ただまぁ、大がかりな出し物をするならここだろう、と。
冥は洞窟の深部――かつてここを根城にしていた連中が、大ホールと呼んでいた場所に転移先を指定した。
「おや
神影鎧装レツオウガ 第三十三話
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Chapter05 重力 03 すたすたと、天来号の通路を歩いて行く風葉と巌《いわお》。目指す先は転移室である。
細身ながら、まったく芯がぶれない背中。相当な鍛錬を詰んでいるのだろう巌の背を見ながら、風葉は口を開いた。
「あの、前から疑問に思ってたことが幾つかあるんですけど、聞いても良いですか?」
「んー? なんだい?」
ちらと振り返る巌。細い眼差し
神影鎧装レツオウガ 第二十七話
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Chapter04 交錯 04 欺瞞、目算、権謀術数。
どこかで、誰かが、思惑を練っている。恐らくは今、この瞬間も。
神影鎧装を、Eマテリアルを、それらの筋道上にある利権を。
飽きもせず、懲りもせず、虎視眈々と狙っている――。
天来号《てんらいごう》へ出入りする度、凪守《なぎもり》の同僚と顔を合わせる度に、そんな空気を辰巳《たつみ》は嗅ぎ取ってい
神影鎧装レツオウガ 第二十二話
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Chapter03 魔狼 13 轟、轟、轟。
もう幾度目かになる激突が、Rフィールドを激震させる。
「う、お、おぉぉぉっ!」
嵐のごとく霊力を渦巻かせ、絶え間なく降りしきる剣閃、剣閃、剣閃。
鋼の巨体が、二つの闘志が、キロメートル単位の空間を縦横無尽に乱舞する。
「は、あ、あぁぁぁっ!」
レツオウガは霊力装甲を、オーディンはマントを。改めて霊力噴
神影鎧装レツオウガ 第二十一話
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Chapter03 魔狼 12 陣羽織を着込んだ鎧武者。
それが、最も端的にレツオウガを表せる言葉だろう。
当然ながら、素体であるオウガの形は一切変わっていない。しかして機体各所――すなわち肩、手首、胸、背中、膝、足首のEマテリアル上へ展開された霊力装甲により、その姿は群青と灰銀の二色に塗り分けられていた。
鋼の身体を覆う、光の鎧。それだけでも相当