マガジンのカバー画像

神影鎧装レツオウガ

193
運営しているクリエイター

#連載小説

神影鎧装レツオウガ 第九十六話

神影鎧装レツオウガ 第九十六話

Chapter11 決断 02戻る  総合目次 | マガジン | 進む

 月面。
 モノクロフィルムよりもくっきりと、白と黒が分かたれた死の世界。
 深夜の墓場より静まりかえったこの場所に、動くものなぞ何一つ無い。
 筈、だった。
「あン?」
 地平線の近く。宇宙と地面の境目辺りに、何やら蠢く点が一つ。よくよく目をこらしてみれば、それは一台のバイクであった。
 排煙代わりの霊力をたなびかせ、地面

もっとみる
神影鎧装レツオウガ 第六十四話

神影鎧装レツオウガ 第六十四話

戻る  総合目次 | マガジン | 進む

Chapter09 楽園 01
◇ ◇ ◇

 揮発していく霊力光、剥き出しになるコクピット。かくしてレツオウガは、二人のパイロットを外気へさらけ出した。
 しかもそれは、以前のオーディン・シャドー戦のような激闘の結果ではない。
 たった一発の銃弾が、それをなしてしまったのだ。
『      !』
 コクピット中央。コンソールに左腕を固定するメインパイロ

もっとみる
神影鎧装レツオウガ 第五十四話

神影鎧装レツオウガ 第五十四話

戻る  総合目次 | マガジン | 進む

Chapter06 冥王 18
「あー」
 気の抜けきった声を上げながら、巌は扉を開ける。
 ファントム・ユニット執務室。壁掛け時計を見上げれば、時刻は午後二時少し過ぎ。
 途端、空腹を訴え始める胃袋。時間の間隔を思い出したのだ。
 腹をさする巌。だが今から食堂へ行っても、ごはんが出るまで大分時間がかかってしまう。
「どーすっかなあ」
「なぁに、ここで食

もっとみる
神影鎧装レツオウガ 第五十三話

神影鎧装レツオウガ 第五十三話

戻る  総合目次 | マガジン | 進む

Chapter06 冥王 17『kill me』
 三百年以上前。地獄の火クラブが終焉したその日から、ひたすらに自身の再生を求め続けてきた男達の、最初で最後の懇願。
 その重さに、コクピット内の誰もが、一瞬言葉を失う。
『殺してくれ、か』
 ぽつりと。
 静寂を最初に破ったのは、モニタの向こうに居る冥《メイ》だった。
『よもや、僕の前でそんな妄言を吐くヤ

もっとみる
神影鎧装レツオウガ 第三十八話

神影鎧装レツオウガ 第三十八話

戻る  総合目次 | マガジン | 進む

Chapter06 冥王 02
 何気ない足取りで、冥は紫色の転移術式を潜る。
 目的地はとある洞窟の内部。BBB《ビースリー》からの提供資料で構造自体は理解していたが、座標設定自体は適当だ。
 ただまぁ、大がかりな出し物をするならここだろう、と。
 冥は洞窟の深部――かつてここを根城にしていた連中が、大ホールと呼んでいた場所に転移先を指定した。
「おや

もっとみる
神影鎧装レツオウガ 第三十三話

神影鎧装レツオウガ 第三十三話

戻る  総合目次 | マガジン | 進む

Chapter05 重力 03 すたすたと、天来号の通路を歩いて行く風葉と巌《いわお》。目指す先は転移室である。
 細身ながら、まったく芯がぶれない背中。相当な鍛錬を詰んでいるのだろう巌の背を見ながら、風葉は口を開いた。
「あの、前から疑問に思ってたことが幾つかあるんですけど、聞いても良いですか?」
「んー? なんだい?」
 ちらと振り返る巌。細い眼差し

もっとみる
神影鎧装レツオウガ 第三十一話

神影鎧装レツオウガ 第三十一話

戻る  総合目次 | マガジン | 進む

Chapter05 重力 01『なーるほどね、事情は理解したよ』
 日乃栄高校付属翠明《すいめい》寮、その男子棟の三○一号室。
 机上に浮かぶ立体映像モニタ越しに、辰巳《たつみ》と風葉《かざは》は巌《いわお》へ諸々の報告を終えた。
 二人とも鎧装は既に解除し、元の制服に戻っている。
 しかして、二年二組へはまだ戻れずにいる。時間がかかりすぎたためだ。
 

もっとみる
神影鎧装レツオウガ 第三十話

神影鎧装レツオウガ 第三十話

戻る  総合目次 | マガジン | 進む

Chapter04 交錯 07「GIIIIIIIlッ!」
 竜牙兵が再び吼えた。骨でありながら近代の軍隊に似た戦闘服を着込む兵士達が、徒党を組んで殺到する。辰巳達に襲いかかる。
「GI、GIIッ!」
 左、右。閃く骨兵どものコンバットナイフ。中々の動きだ。だが二人には通じない。
「シッ!」
 まず辰巳側。斬撃の隙間を絶妙にかいくぐりつつ、放たれるカウンタ

もっとみる
神影鎧装レツオウガ 第二十九話

神影鎧装レツオウガ 第二十九話

戻る  総合目次 | マガジン | 進む

Chapter04 交錯 06「……、」
 風葉は絶句した。
 信じられないのだ。目の前の光景が、あまりにも。犬耳を初めて見た時の方が、まだ現実感があったかもしれない。
「ええ、と」
 軽い頭痛。頭を振って追い出す。しかる後、風葉は状況を改めて思い出す。
 つい数分前、翠明寮の食堂で禍《まがつ》の鎮圧任務を受けた。それは良い。ごはんを食べ損ねた事も含めて

もっとみる
神影鎧装レツオウガ 第二十七話

神影鎧装レツオウガ 第二十七話

戻る  総合目次 | マガジン | 進む

Chapter04 交錯 04 欺瞞、目算、権謀術数。
 どこかで、誰かが、思惑を練っている。恐らくは今、この瞬間も。
 神影鎧装を、Eマテリアルを、それらの筋道上にある利権を。
 飽きもせず、懲りもせず、虎視眈々と狙っている――。
 天来号《てんらいごう》へ出入りする度、凪守《なぎもり》の同僚と顔を合わせる度に、そんな空気を辰巳《たつみ》は嗅ぎ取ってい

もっとみる
神影鎧装レツオウガ 第二十六話

神影鎧装レツオウガ 第二十六話

戻る  総合目次 | マガジン | 進む

Chapter04 交錯 03 チン、とエレベーターが到着を告げる。目的地、とある高層ビルの最上階に到着したのだ。
「では、参りましょうか」
 そう言ったのは黒いスーツに黒メガネの男、サトウである。今日も能面のような笑顔を貼り付けながら、サトウは誰も居ない廊下へ躊躇無く踏み出す。
「うぃーす」
 次いで気だるげに言ったのは、仮面の男ことグレンだ。コツコツ

もっとみる
神影鎧装レツオウガ 第二十四話

神影鎧装レツオウガ 第二十四話

戻る  総合目次 | マガジン | 進む

Chapter04 交錯 01 日本でレツオウガがRフィールドを食い尽くしていた、丁度その頃。
 遙か西方、北極圏に位置する島国アイスランド。その首都レイキャビク。
 日本との時差は約九時間。整然と立ち並ぶ町並みは、未だ深夜の帳に眠っている。
 そうした、建物の内の一件。
 屋上。唐突に、電気とは違う光が瞬いた。霊力光である。
 光源は扉。少し錆が浮く蝶

もっとみる
神影鎧装レツオウガ 第二十二話

神影鎧装レツオウガ 第二十二話

戻る  総合目次 | マガジン | 進む

Chapter03 魔狼 13 轟、轟、轟。
 もう幾度目かになる激突が、Rフィールドを激震させる。
「う、お、おぉぉぉっ!」
 嵐のごとく霊力を渦巻かせ、絶え間なく降りしきる剣閃、剣閃、剣閃。
 鋼の巨体が、二つの闘志が、キロメートル単位の空間を縦横無尽に乱舞する。
「は、あ、あぁぁぁっ!」
 レツオウガは霊力装甲を、オーディンはマントを。改めて霊力噴

もっとみる
神影鎧装レツオウガ 第二十一話

神影鎧装レツオウガ 第二十一話

戻る  総合目次 | マガジン | 進む

Chapter03 魔狼 12 陣羽織を着込んだ鎧武者。
 それが、最も端的にレツオウガを表せる言葉だろう。
 当然ながら、素体であるオウガの形は一切変わっていない。しかして機体各所――すなわち肩、手首、胸、背中、膝、足首のEマテリアル上へ展開された霊力装甲により、その姿は群青と灰銀の二色に塗り分けられていた。
 鋼の身体を覆う、光の鎧。それだけでも相当

もっとみる