「イーストトーキョー」蔵前や清澄白河の可能性。クラフトとアートとカルチャー。
イーストトーキョーはこれからもっと面白くなる。
かつては、世田谷区にある大学に通い、井の頭線の駅が最寄りのエリアに住み、表参道の会社に通っていたが、この歳になり隅田川の向こうに住むようになって、イーストトーキョーに面白さを感じるようになった次第だ(もっとも今の職場は渋谷だが)。
若者が集まる東京の街と言われたら渋谷を筆頭に代官山に表参道、下北沢や吉祥寺、高円寺、三軒茶屋などが挙がると思うが、これらはもれなく山手線の西エリアにある。
渋谷は戦後開発が進んでいなかったエリアに西武グループが入りPARCOなどを建設して、音楽やアート、演劇などの芸能などを根付かせていったことが大きいと聞く。いまでこそ渋谷は一大歓楽街だが、歴史を辿れば渋谷村という村である。もともと何もないエリアは逆に言えば、白紙のキャンパスでもある。渋谷は駅ができ、複数路線が乗り入れるターミナル駅となり、大手デベロッパーの土地開発が入り、若者に支持されて出来上がっていったのだろう。
翻って、山手線の東エリアは東京駅周辺の丸の内などを筆頭に、銀座や上野、秋葉原など、もちろん栄えている。銀座は今も昔もちょっと特別な街だ。
この辺りはもともと江戸城があり、城下町として商人や職人が住んでいた街でもある。日本橋が五街道の起点だったことを考えれば、かつての文化の発信地は日本橋周辺だったはずだ。そんな日本橋の上には首都高が走っていて、今は見る影もない(日本橋エリアは充分栄えているが)。
いま日本橋周辺は、首都高の地下化が推進され、大きな再開発が進んでいる。兜町などは既にK5やease、Nekiなど新進気鋭のお店が集まる注目のエリアになっている。十数年レベルの開発だが、本来エリアの中心地となるべき日本橋の景観を邪魔している首都高が地下化することで景観が開け、今以上に街としての賑わいが創出されることが想像される。
だが面白くなっていくのは、何も日本橋ばかりではない。
個人的見解だが、音楽や演劇などの芸能やアートはキャッチーで若者が集まりやすい。新しい芸能やアートが集まれば若者が集まり、新しいお店もでき、カルチャーが出来る。銀座はともかく、それ以外のイーストトーキョーエリアは歴史があるが故に新陳代謝が緩やかだったのだろうと想像する。銀座を若者の文化の発信地というと少し違う気がするし、秋葉原はかなり独自の進化を遂げている。これまでイーストトーキョーで新しい文化の発信地と想起される街はなかった(あくまで個人的見解だが)。
だがそんなイーストトーキョーはこの10年ほどでそのイメージを覆しつつある。蔵前と清澄白河だ。この2つの街は食やクラフトがアートを巻き込み、人を集め始めている。
蔵前は元倉庫を改装したホステルとバーのNuiを筆頭にマクレーンオールドバーガーや菓子屋シノノメなどの飲食店が隅田川を中心に現れている。またエムピウなど革製品のショップやカキモリ、Syuroなどのセレクトショップが集まり、東京のブルックリンと呼ばれるようになった。
清澄白河はご存知のとおり、2015年にブルーボトルコーヒーが上陸して以来、コーヒーの街というイメージが着いた。そのほかにもアライズコーヒーやオールエスプレッソなど、ニューカマーが並ぶ。リトルトーキョーなど人が集まる場所もある。蔵前と同じく工場や倉庫などが多いことから、ロースターなどが集まってきているが、近頃はコーヒーに留まらない。深川蒸留所やCAN-PANYなどのクラフト飲料を作る場所も増えてきている。
蔵前や清澄白河は元来職人の街だった。いや今でもハンドクラフトから町工場まで裏手に入ると工場や倉庫がある。そしてクラフトとアートは密接である。クラフトで有名な街として京都や金沢、松本などが挙げられるが、いずれもアートの街としても有名であり、密接な関係がある。街の持つ歴史やコミュニティなど彼らを受け入れる土壌があるのだろう。
クラフト精神を持つ蔵前と清澄白河は、場所を生かして新たな食のトレンド発信地となったり、新たなプロダクトを生み出したりしている。そして今後はアートととも密接に繋がりながら進化していくと思っている。なにより清澄白河はもともと現代美術館があり、アートの土壌がある。音楽や芸能ほどキャッチーではないが、クラフトとアートがカルチャーへと繋がっていくはずだ。
そう、蔵前も清澄白河もまだ発展途上の街なのである。だから面白い。
なにより歳を重ねると渋谷の喧騒より、もの静かなイーストトーキョーの方が落ち着くのだ。笑