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掌編|無機質な温もり
キッチンの灯りからは、ため息が聞こえる、走馬灯のように日々を回想させる、オレンジ色の記憶は、少しずつ違う色に変わっていった、ごきげんよう、春はもうすぐ着地するよ、未だ、心は乾いたままだ
喉を潤そうと、冷蔵庫にお願いしても、中身はすっからかんだ、仕方なくコンビニへ向かう、途中ですれ違う人々は、皆、どの方向を指差しているのか分からず、路頭に迷っているように見える、乾風が吹くとともに、髪は乱れ、何処か
掌編|混じり気のない無色
この掌編は3分で読み終えます
ふとした瞬間に現れた、それはそれは、肌を突き刺すような痛み、その時に感じる憂鬱、されど、何故か希望を纏う、空気感染するそれは、人を、様々な路線へと導く、ある人は絶望と対峙し、ある人はただ毎日に祈りを捧げる、喜ぶ人もいれば、膝をついて、その運命を憎む者もいる
勝ちや負けを、一心不乱に競い合って、得られるものはたかが知れている、それを、予定調和の如く、どの時代でも、人
掌編|勝手にしやがれ
この掌編は1分で読めます
毎日が陰鬱とした気分だった、フランス映画の語り口調は、黒の遮光カーテンから漏れる光によって、より眠気を誘う、「愛しているつもりであなたは愛しているのね、それは愛とは言わないわ、自己愛よ」背の低いテーブルの質感だけが本当だった、意識と無意識が混在しているような、薄い日々、匂いはない
時たまに、胸がざわつく想いがするものだから、日向で寝転ぶ猫のような気分のまま死を迎える
掌編|知られざること
欲を言えば、貴方を抱きしめていたかった
別れの日は、突然、やって来るものではない、徐々に匂いを放ち、立ち込めるその空気に、いよいよと、心の準備を整えていく、ある日、交わした言葉が、亀裂を生み、シャツのボタンを掛け違えたような心地になった、少しくらい待ってと伝えても、手遅れで戻れない事柄なんて、この世界ではざらにある、虫が息を潜めて鳴いていても、それに気づけない、あっという間に、雲は太陽を隠し