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山際響:短編集

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山際響の短編まとめです。
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#掌編

湾岸タクシー

湾岸タクシー

「就活生ですか?」
 そのタクシー運転手は言ったが、私は眼を向けることすらせず、この自動車は無人で動いているかのように、その声を無視した。
 女性だから馴れ馴れしいのかと、私は警戒していた。外に眼を向けると一日の終わりの風景が、私の意思とは無関係に眼に入ってきた。空の夕日から遠い部分は、藍色に染まり星を待っていて、空と海の交わる境界には、溶鉱炉のような橙色が、荒くて太い筆で描かれたように水平線と平

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四月の雪

四月の雪

 おそらく、生身の人間に会うのは大学を卒業してから初めてだった。
 しかし、あまり人間に会ったという気がしなかった。
 彼女はもちろん幽霊ではなく、実体がある。薄い皮膚を通して、青い血管が見えるし、彼女には血も涙もあるに違いないが、残念ながら、私には信じられなかった。
 こんな失礼な考えを私は不意に思いつく。いつもの事だ。そして、それを悟られてしまうのではないかと緊張するのだが、彼女に関しては、そ

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雨のち晴れ

 一年のうち、七割は雨の日なんだって!
 この地域の話さ。信じられない。雨が降るからここら辺は森だらけで林業が盛んなんだよね。
 僕は奴の車に乗って、港町へと向かっているんだけど、今も雨が降っている。
 道路の両側には、大きなモミの木がいっぱい生えている。曇り空だから薄暗いし寂しい道さ。ものすごい大きな木を乗せたトラックが一分ぐらい前に、僕らの車を追い越してから、車なんて見てないね。
 僕らの住ん

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