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心動かされた本とか映像のはなし。
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いつでも白紙にもどれることを願って

いつでも白紙にもどれることを願って

皆さんは「好事家ジュネの館」というYoutuberをご存知だろうか?
「暗く・悪しく・美しく」をモットーに、アングラ文化やサブカルチャーに属するコンテンツを紹介・解説しているチャンネルである。

私は彼女のおかげで、宮西計三という稀有な漫画家を知った。中井英夫の短編や寺山修司の戯曲に耽溺した。青山正明の『危ない薬』が今さっき届いて、今月のお金が厳しくなければ村崎百郎の『鬼畜のススメ』も買おうかなと

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そこにいないという美しさ

笹原玉子さんの「偶然、この官能的な」という歌集を読んだ。

※この記事で取りあげた短歌はすべて、上記の書籍から引用しています。

柔らかな言葉遣いで、そのうえリズミカルなものが多い。口に出して読むと余韻が残る。短“歌”なのだから、本来はそうあるべきなんだよな、と思いつつ、このリズミカルさは、あまりないかもしれないな、とも思う。

ゆめみどり蝶の古名がひらひらとみどりのゆめかゆめのみ

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幻想ってなんですか

幻想ってなんですか

やっっっと読了した!
ツヴェタン・トドロフ著『幻想文学論序説』

幻想的なモチーフが出てくるからといって、それが幻想文学であるとは限らない。ということが、よく分かった。モチーフというと、妖精などを思い浮かべると思うが、寓意(あることを言って、それとは別のことを示しているもの。例えば諺とか)に属するものもあり、一概に幻想とは言えない。

また、禁忌的な欲望をそのまま表出させると、検閲に引っかかってし

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私にも永遠解く力を下さい

私にも永遠解く力を下さい

笹井宏之著『えーえんとくちから』の感想。
この記事で取りあげた短歌はすべて、以下の書籍から引用しています。

笹井宏之さんの短歌は呪文めいている。
そのうえ、この言葉でなければならない、という必然性が常につきまとっている感じがする。選ばれた言葉に質量がある、というか。

えーえんとくちからえーえんとくちから永遠解く力を下さい

「えーえんとくちから」はピントのずれた画像のようにせまり、それが「永遠

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