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自選歌抄

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ベスト盤みたいなことです
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自選百首⑦

朝焼けのような反射が目に入る角度の席は残してほしい あたりまえみたいに出征してみたくなってただろう産まれていたら 会っていた時間の短さからすればこんなに打ち解けるはずもないのに あのなんか理由わからないんだけどここに居てっていわれたきりで アルペジオなんて言葉も知らないで聴いてた曲がしあわせだった あれは桜じゃ、なくて梅だよ。かんたんなつもりが実はひとりなんです 居酒屋に先に入って待っている友だちが僕にいる移動中 居酒屋のメニューをぜんぶ頼んでも、あの「また来よ

自選百首⑥

ねころんでポカリこぼしたパーカーのへんなもようをみせてあげへん 気をゆるしかけた途端にやなことをあえて言ったらそれもハマった 不可欠になりたい 雪が積もってた頃の写真がめっちゃ明るいね 抱き合って見えてないとき「しめしめ」という顔をされていますように 好きだったひとに恋愛しなさいと言われているせんぷうきのまえで 作ったらひとに見せたくなるものと決めつけてまた傷付けていた 恋人がくれた強炭酸水はわたしをとても凡人にする 家に来る気配のことを夕立と呼んでふたりで愉し

自選百首⑤

さぶすくりぷしょん ことばのすくなさがやさしさになる非凡なよるに よくしゃべる手と足と薄い唇と眼鏡と宇宙飛行士の傘 つねにぼくだけに知らされてないことある気がしてるひとたちの村 褒めすぎてもう会えないな梯子してくるわと言って屋根へ昇った いつも見ているだけだった夜に来て自分のためにつくるチャーハン 横移動する人たちの京都駅とかかな、いつか撮る映像は 家に来る人がどうやらいるみたい。食パン溜まってゆく冷凍庫 会えるからまたつくろうよ連絡もしないよそれがお祝いですよ

自選百首④

求められることを求めてしまう夜それを言いふらしてしまう夜 ぼくからはすごく奇跡にみえるのに鳴り止まなくて押し込めている あまり目を見ないで話していてもこのレイアウトなら不自然じゃない 雨粒が車窓に当たってもういちど喋りたかったのを思い出す 改札で見送ってから家までのショートカットに使う噴水 出ることも折り返すこともできなくてヒントを探す夜の非通知 切ってから掛けないほうがよかったと思う電話の実質0円 旧友が今はもうない居酒屋でフカコウリョクってよく使ってた 先

自選百首③

やなひとがやなことを言うのは君がいいことを言うのとおなじこと ラブミーテンダー 夢とわかってみる夢の話を聴かせてくれてうれしい シンプルな棒と棒との組み合わせ、あるいはさみしい夜の具現化 階段をすべて踏んだらお別れだ 永遠にやまなそうな春雨 さわれるかさわれないかの距離のこと奥二重って君は呼んでた アクリル板を挟んで少し戦争の話をしたがよくきこえない きみがふりむいてなにかを言う ぼくの立ち位置はここでいいみたいだ 聞き取れなかったその言葉もぼくの座右の銘にして

自選百首②

オリジナルのハンドサインを向けられても伝わらないってわかりますよね むかしむかし発掘されたガラケーを梅酒に浸して無限に嫁ぐ カーテンを未来に過去と会いに来て平泳ぎには愛が速すぎ 要するに犬が二人で手を繋ぎ傘を丸めて公園を消す 流れ着く港を選ぶことなんて世界の中じゃ眩しいことさ 思い返せば、君とわたしのあいだには、常に誰かがいて喋ってる それはまるで君がわたしに出会うまえみたいな朝で、とても自由で 昨日まで君と食べてた肉まんの匂いが嫌になり投げ棄てる 雪合戦した

自選百首①

はつなつのぷらっとこだまに飛び乗ればあなたを許して忘れてしまう 数え切れないほどとはとても言い切れない二人で会った夜のいくつか すれちがうひとの視界にいるぼくとぴったり同じ歩幅であるく 砂時計あふれてはじける瞬間の鼓膜にとてもやさしい異音 真夜中のというかもはや明け方の窓を開けると聴こえたお経 残高がゼロになったらきっとこの花火を飼うよ 畳の部屋で 冷やかしの温湿度計を睨んでる有り余るほど綺麗な斜視で きっと知らないんだと思う三角の交差点いまは工事中だって 「

自選九十九首

人生ではじめてホームランをみたしゅんかん、俯瞰の俺がうまれた あまぷらであにめ まだまだ頑張れば背中のあんたに追いつけるかも? はじめてと今日をくらべてしまうのです キャットタワーがまだ置いてある エレベータは夜の生き物 ぱくぱくと小さな私の望みを食べる さびしくて道に落ちてたムーを読む 帰ってこないあなたが悪い ベランダに出てみると西日が強い ふと、飛行機の絵を描いてみる 魔法瓶の中身もだんだんぬるくなるほどでも私は待てるんだから 秋になったらあんかけチャーハ

自選九十首

ふれたくてふれればおわり いままでの関係性が疑似餌のように 好きなひとに会いたい気持ちがどんなのか忘れてしまった 糸電話の糸 ブルーライトカットメガネをしんじてた しんじてたってどういうことば? ポケットに手を突っ込んで残額を計算しながら回るコンビニ もう短いゆうやけいろのクレヨンで犬の後ろの背景を塗る 図書室の鉄の本棚のなかから私を見つけてくれた小説 見抜かれて立つのが怖い座るのも怖い終わりが訪れそうで お台場でおしりが濡れて嫌だったぜんぶいまさらぜんぶいまさ

自選八十八首

たまに会うついでに歩く細い細い細い道 春風邪と春風 私にとってあなたはすでに死んでいるつまりどこかできれいに生きる 青い服着ている君に近づくとナショナルジオグラフィックのパーカ あなたから影響された性格がわたしの中にはまだあるのかも あのときなぜ四国旅行にいったのか憶えてなくて電話をしたい 耳鳴りを聴かせてあげる くっついて 昔のことでひとつ噓つく 帰り際、駅まで一緒に歩くやつ、やりたくなったといって呼ばれる 港町から港町へやってきて僕らは同じ坂を登った 木が

自選八十首

猿山を何時間でも見てられる君と仲良くなれるだろうか  北鎌倉駅にいるって言われても昔みたいにすぐ行けないよ だけどまあ今かもなって思えたらまた誘うからまた遊ぼうね 予測変換されるたんびに泣いちゃうしかわいいサラダを作って食べる 見つけると入ってしまうブックオフ愛ってなんだ愛ってなんだ 類型でほとんどのことはわかります スプリングハズカムかもしれず 重いじゃなくて重たいと言う 溢れ出す 君はシャワーを浴びただろうか 放課後のコートダジュール満室でシダックスまで歩い

自選七十七首

雪の絵の紺色きれいごめんなさい在廊時間は避けて来ました 「折り合い」というタイトルで良い曲を作ってしまう星野源さん へこんでる麦わら帽子が公園のベンチにあって僕のではない 鍵括弧の中だけ変な声で読むやさしい君がやめた留学 木綿でも絹でもいいよ豆腐なら、くらいの解像度で生きている イヤホンをはずして歩く秋の夜 砂漠っていう比喩がきらいだ 晴れながら降る雨みたいに愛してよ一緒に並ぶエッグスンシングス 今日いちども笑わなかったつまらないきみも好きよと指毛がゆれる エ

自選七十首

だれかからもらった名前を聞き慣れて、言い慣れてうつくしい海岸 重ね着で踊ってた君/僕はまだ半袖だった そういう季節 可愛い絵のグラスを贈る 割れるまででいいから使ってほしいと思う めんどくさいことはやめてもいいよって誰かが言ってくれたみたいで 夕方から巻き返したぜ プチトマトぷちぷちぷちぷち 今日はいい日だ もういちど会いたくさせてよ弱いセリフなんか言ってたね忘れちゃったよ 一年で髪短いしタバコやめてるし痩せてるし  髪、似合ってるし この風はもしや秋かも鴨せい

自選六十六首

生肉をどんどん食べる 世界じゅうに友だちがいる気になってくる 信じるよ君の絶対音感を いまの信じるよはどうだった? へんなグミいっぱいくれる先輩がいますタピオカ味スイカ味 こんな日もどこかでだれかが本当に会いたいひとに会いにいく日だ さみしいのが多様性だね さみしいねって言い合えるって信じていたね 生きたいね 濡れたページは丁寧に剥がしてあげる 今日も明日も 無理をしてでもぜんぶ買う色違いはあらかじめ回避できるせつなさ 手づくりのドレッシングをかけすぎたり足りな