見出し画像

自選百首⑤

さぶすくりぷしょん ことばのすくなさがやさしさになる非凡なよるに

よくしゃべる手と足と薄い唇と眼鏡と宇宙飛行士の傘

つねにぼくだけに知らされてないことある気がしてるひとたちの村

褒めすぎてもう会えないな梯子してくるわと言って屋根へ昇った

いつも見ているだけだった夜に来て自分のためにつくるチャーハン

横移動する人たちの京都駅とかかな、いつか撮る映像は

家に来る人がどうやらいるみたい。食パン溜まってゆく冷凍庫

会えるからまたつくろうよ連絡もしないよそれがお祝いですよ

録音をしているのでそ~っと動く二十年前たぶん白浜

噓だけどなんか信じてきてしまうような世界の歌のことだよ


いろいろなことがほんとにいっぺんにわかってしまった夜の舞鶴

わたしたちとても忙しそうですねなんででしょうね売り切れですか

たぶんこれ握手とかって呼ばれてる時間なのかもしれないですよ

やわらかさのことを説明したいのに知り合ってまだ半年だった

謝らせたかったわけじゃないことは自分を見ればわかってしまう

ねえいっしょに6時なったら7時なったら8時なったら9時しよう?

仲良くても緊張するねと言い合ったシチュエーションをもういちどだけ

約束を覚えてますか 覚えてない側にもいちどなってみたいな

初回だけ観るより最終回だけ観るようにあなたと付き合っている

恋をしてとても普通になっている去年の梅雨の私の写真


スムーズなことはいいことなのかなあタイムゾーンを切り替えながら

説得をされて納得させられて腑に落ちたけど舌打ちをした

直前まで考えないようにしようと心に決めた半年前だ

いつか来る気はしてたこの瞬間に自慢話が間に合ってない

さてとても興味津津なのにそれを難なく隠してしまえるあなた

気が遠くなりそうなほどそっけない返信なのにスクショしている

鍵を閉めている時間を待っている外で 僕はいつも外で

たこ焼きを褒め爪を褒めエプロンを褒めるあいだに埋まる三年

どれだけのことが伝わったんだろう咄嗟につかんだそのてのひらで

気が遠くなるというのはここじゃないどこかを望む人の症状


縦向きの動画を横になりながら観ているときの両側の黒

ケーキを一緒にたべてるだけだ明らかにケーキを一緒にたべてるだけだ

窓側の席にあなたを座らせて光らせて見るほっぺたが好き

サマータイムのせいで一度も会えなくて忘れていった誤差が恋人

松本か長浜だったと思うけど迷子になってそのままたぶん

先生が残業してる サンダルをこどもみたいにパタパタさせて

そう持つの!?そう頷くの!?そう笑うの!?そう歩くの!?ありがとうございました

点滅の時間をとめて会いにきた彼の頭をすこし撫でたい

決めつけはよくないよって教えたら決めつけるのを控えてくれた

九千円が無限に出てくる抽斗にお返しのお団子を入れておく


限界と希望が同時にやってきて希望にすこし帰ってもらう

二人乗りみたいなエレベーター昇る予行練習めいた宇宙を

ほんとなら一歩も動けないような関係項のなかで踊った

健康ならあした私と会いましょう不健康ならいま会いましょう

手を取って走ってくれたあの夜に捨てた依存と拾った依存

旅先の短い橋の待ち受けを赤外線で僕にもください

あやまってばっかりなのでもう早く11月になれって思う

那覇ツアー、ぼくはだいたいこのくらいなのを隠して隠せていない

いつか乃木坂の誰かが出馬して僕ははじめて投票に行く

勉強と貯金とダイエットはいつも頑張っただけ結果を呉れる


バキバキの画面を見せて笑わせたのは八月の永遠だった

無視してるみたいに過ごす平日も営業してる やきそばやさん

ほっとくと同じところを回ってる毎日いつのまにか好きだよ

もう最後なのでなんでもいいような気分がたぶん功を奏した

とても気をつけながら会いにきてくれた、あるいはぜんぶ見当違い

なぜこれでどうにかなるって思ってたのかも今からすれば謎だし

秋なのにタルタルソースの味がして私は離婚してしまえそう

出遅れてしまってずっとそのロスを海へ放ってしまえずにいる

忌憚なくと言われてほんとに忌憚なく言ってしまってススるラーメン

休憩に一瞬見れた夕空がきれいなだけでもういいんだな


説明をしてみるのならあなたから依存されたいという欲望

関節が桃色なのですか、はウケる しかも畳の部屋ですからね

目薬を使って返されている今 忘れられそうになっている顔

明らかなことがいくつもありますね たとえば君はとても優しい

白米のかわりにカリフラワーばかり食べさせられているような日々

「海岸」と言ってみてって言われたりあいつは変なともだちだった

だれひとりいなくなりそうな気配に立ち向かおうとしている花瓶

振り回されているつもりだったのが脆弱性のはじまりだった

独特な意見を述べて楽しいと言わせてみたい肘のかさぶた

可哀想だとおもわれているのなら犯してみたいスピード違反


はずされるときにわずかに反射して緑が春を連れ去るようね

つるつるじゃないか 探せば片想いされていた日もあるんじゃないか

ひとくちだけもらったレモン牛乳が甘すぎたせいなんだと思う

渦潮をつくりたかったわけじゃない真正面から目を見たかった

ほんとうに何も真面目に考えてなくてごめんなさいの手料理

伝えたいことがないのであらすじを説明してた神社の奥で

まだここに並んでいない飲み物のどちらにするか悩んでしまう

ジョークだとバラすのがいくらなんでも早すぎたんじゃないかと笑う

間違えて座ってしまわないように立っている、いや、君に会いたさ

よし決めた数年前のようにまた関係ないと思って生きよ


今はもうねまきになっているかつてとても褒められていたパーカー

あのよるのぼくはたしかによっぱらいだったけどうんよっぱらいだね

どちらからともなくなんて噓ですよ金平糖の白を飲み干す

はじめてのときは笑った起きてすぐ飲むものじゃないよなルートビア

こんなにも見慣れていると噓みたいだけどひとつも知らない味の

俺もそうだからわかると励ましてあげられるなら近づけるのに

やったーと最後に言ったのがいつか考えてたらすごくねむれた

ふだんなら言うまでもない悶々がその日はすこし漏れて、しまって、

あきらかに何かをおもっているような富良野の 雨が強くなる前に、

ゆるゆるのワンピース 愛 紙袋コレクションだけ見に来てほしい


無意識に誰かを探しているような数十年がまずあるでしょう

話したいことがこんなに思いつく時期が来たときどうしているの

こんなこと自分以外に言ったっていいことないってわかってるのに

遠いよと君がいうたび距離でなくこころのほうで揺らされている

中指のほくろをなめてほしくなる夏のホテルの名をほしいまま

影響とパンを与えてくれそうな人の後ろについて歩いた

キャンドルに絵が描いてある! はじまったんだなあと思う、そんな明け方

好きになる人がバーテンダーなのかバーテンダーを好きになるのか

いたら会うかもしれなくて数時間ぼーっと座っていてみたベンチ

網棚のパインアップル忘れられ集約駅で熟し終わった





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?