初体験#春風怪談
この記事はこの企画に乗せていただいております。
この企画の二つめです。投稿一個目はこちら↓↓
前回が私の人生の中で一番怖かった恐怖体験で、今日は私の人生初の恐怖体験です。子供の頃の話なので全く怖くないんですけど、当時は怖くてわ~わ~騒いだというお話です。
母の実家は同じ県内の山側にあり、魚屋兼割烹仕出しのお店を営んでおりました。当時、地元では美味しいと評判の仕出し屋でした。私の家は小さい頃結構な貧乏で、繁忙期になると母がバイトをしに行っていました。
私の父はずっと単身赴任で外地で仕事をしていて家には基本不在だったのです。
その時も同じように母の実家で手伝いを終えて、普段なら一泊するところ、繁忙期になるとたくさんの人を使って半住み込み状態でやっていたので部屋がなかったのか、ホントに珍しい事に、夜母が運転する車で帰路についていました。
私は確か4~5歳くらいだったと思います。
後ろに座りながら外を眺めていました。子供時代は虚弱体質で、車の匂いが苦手ですぐに車に酔ってリバースするような弱い子だったので、そんな不快な車の中では眠りにつく事さえ出来なかったのです。
外は山と田んぼしかないような田舎道を見るともなしに見ながらいた時です。真っ暗な景色の中に不自然な色が存在している事に私は突然気づきました。
向こうの山の奥から真っ赤な目がこっちをじっと見ているのです。
私はビックリして「おか~さん!おか~さん!向こうから赤い目こっち見とる!!」と大騒ぎしました。
車を運転している母は事も無げに
「アンタ、それ自分の目映っとるだけやわいね。」
と言って全く取り合ってくれる様子はありません。
って言うか、いくら子供でもそんな事↑↑言われなくても思いつきます。
でも私はその目は私の目ではないと感じていました。私は車に座っています。向いている方向はどうしても斜め前です。シートに座った状態で90度横に身体を傾けるには無理があると思いました。
赤い目はものすごい真正面から見ている感じでした。
(私だって、この目がただガラスに映る自分の目ならいいと思ってるよ!)
それならそれで自分でも何とかこれは怖い事じゃないんだと納得したい一心で、原因を究明すべく様々な仮説を立てました。
もしかして隣にいる妹が浅めに座って私側の窓の景色を見てるのが反射している?と思い至って隣を見ると、妹は形もなくグッスリ眠りこけていました。私に見られて急に狸寝入りした様子もありません。
私は子供心にその目が本当に反射なのか検証してみようと、自分は前を向いて目だけで外を見てみました。
赤い目は私のそんな諸説や小細工など関係ないかのように揺るぎなく真っすぐこちらを見ていました。
(やっぱり私の目じゃない!!)
と確信した私は、再び母に私が体の向きを変えても目の位置は変わらないのだという事を訴えましたが
「アンタも遅くなって疲れたがいろ。そんなもん気にしられんな(気にするな)」と言われただけでした。
母にとってはそんなものの信憑性はどうでもよく、仮にその信憑性が証明されたところで何ともならない話でした。
私は仕方がないので外を見るのを止めました。田舎道を抜けて自分の家の市街地まで帰ってきた時に恐る恐る外を見るともう赤い目は消えていました。
その母の実家も、私が小学生の時に商売の要で一家の大黒柱だった祖父が亡くなり、中学になると祖父の後を継いでいた叔父も39歳の若さで亡くなってしまったので男手を失った母の実家は商売をやめてしまい、私達も大きくなってきたので泊りに行く事もなくなりました。
それ以降、お盆と正月に祖母(母の母)に会いに行くくらいになりましたが私が大学生くらいの時に、母の実家に行く道すがら、自分が子供の頃、〇〇温泉の近くを通った時に赤い目を見たという話しをすると、
「ええ、アンタそう言えば一回ワアワア騒いどった事あったねえ~」
と母も懐かしそうにつぶやきました。その頃には私にとってもただ子供の頃の懐かしい思い出の一つなだけなのでした。
お粗末様です。
この企画をご提案くださったあんこぼーろさんに感謝。