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ミスを分析する|勉強は自分を知ること(高校物理・大学受験)

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■ 間違いは消さずに残そう

よく生徒に「消さなくていいよ」と声をかけます。生徒の中には、自分の間違いに気づくと反射的に間違った部分を消しゴムで消してしまう人がけっこういます。

そのときは「消さないで、バツ印をつけたり色ペンで印をつけるだけでいいよ。自分の間違いは必ず残しておこう」と伝えています。

どうしてもノートには「正しいもの」だけを残しておきたくなるものです。「間違い」はノートの中に存在すべきじゃない。そう思う気持ちもよくわかります。自分の間違いを見るとなんだかイヤな気持ちになってしまう。わかります。

けれど「自分が犯した間違い」は自分のことを知るための大切なヒントです。消してしまってはもったいない。貴重な勉強の機会を自ら捨ててしまうことになります。

■ 「ミス」は自分を知るヒント

「ミスをしたらよく分析しておこう。どんどん収集して自分のミスの記録を作ろう」とよく話しています。

ミスを「ケアレスミス」や「うっかりミス」という言葉でごまかしてしまうと危険です。

■ そのミスは本当に「単なる注意不足」によるものなのか?
■ 仮に注意不足だったとして具体的には「どのような注意」が不足していたのか?
■ 注意が不足してしまうと「なぜ」そのようなミスが生じるのか?

ミスには原因があります。自分のどこかにミス発生装置が埋め込まれているのです。ミスが見つかったら、どこにミス発生装置があるのかを突き止め、仕組みを理解し、ミスが再び生まれないようにする。

ミス発生装置がどこにあるのかが見つからない。そうした場合でも、そのミス発生装置がどんなときに起動するのかを調べましょう。「〇〇という条件が揃うとミス発生装置が起動する」と判れば、ミスの発生を防げるでしょう。

ただし気を付けたいのは、ミス発生装置は自分の一部だということです。

自分がこれまでに学んだこと、自分のこれまでの経験。そうしたものが複雑に組み合わさってミス発生装置はできています。

したがってミス発生装置を見つけたとしても、簡単に取り除くことができない場合が多いのです。

ということは、ミス発生装置について丁寧な調査を行い、うまく付き合っていく術を見つけて、共に生きていくしかありません。

「ミスについて知ること」は「自分について知ること」なのです。

【ここまでのまとめ】ミスを見つけたらそのミスをよく分析し、「ミスの原因、ミスの発生要因」を調べ、同じミスを発生させないための対策を練りましょう。

■ 「ミスはなくならない」減らしつつ気づこう

ミス発生装置とうまく付き合うにはどうすればよいでしょうか?

ミス発生装置は自分の一部です。ミスの発生を減らすことはできても完全にゼロにすることは難しいです。

どんなにゆっくりと丁寧に問題を解いていても、ミス発生装置が起動すればミスは発生します。ましてや受験生であれば、限られた時間の中、極度の緊張状態で問題を解くことになりますから、ミス発生装置も起動しやすくなります。

なので「ミスを無くす」という発想を変えましょう。

【発想の転換】ミスを無くす → ミスをフォローできるようにする

「ミスをフォローする」とは具体的には次の3つの行動を指します。

【フォロー step1】自分がミスをしていることに気づく
【フォロー step2】ミスしている箇所を見つける
【フォロー step3】見つけたミスを修正する

最も重要で最も難しいのは【step1】の「気づく」ことです。

気づいてしまえば、それ以降の【step2】【step3】の具体的な行動は自動的に始まるはずので、まず「気づく」ことが重要になります。

ミスに気づくための方法を2つ紹介します。

【気づく方法1】これまでのミスの記録をもとに点検する
【気づく方法2】求めた解を吟味する

【方法1】は、これまでに自分がしてきたミスについて調べた記録をもとにして

 「いつものあのミスしてないかな?」

と点検することでミスを見つけるというものです。

そのために「自分のミスの傾向を把握しよう=自分を知ろう」というのがこの記事で伝えたいことです。

【方法2】はいわゆる「検算」と呼ばれているものに近いでしょうか。物理での「解の吟味」については別の記事で解説しています。

■ 「正しいもの」のインプットだけが勉強じゃない

単純な「ミス」から、少し話を広げて「間違い」について考えます。

「正しい解法を身につける。正しい計算の仕方を身につける。正しい考え方、正しい知識を身につける……この作業が勉強だ!」……??

こんな風に自分の中に「正しいもの」をドンドンつめこんでいくと「正しい行動ができるようになる」それが勉強だ、という考え方は危ういです。ノートも同じです。正しいものだけ残す、というのでは意味がない。

いくら「正しいもの」をつめこんでも、自分の中に「間違い発生装置」があれば間違った答えを導きだしてしまいます。

「正しい考え方」を身につけるためには、自分の中にある「間違い発生装置」を見つけ出し、飼い慣らす必要があります。

「間違い発生装置」を見つけるためには、積極的にアウトプットをして、間違いを外に出す。

問題を解く。誰かに説明する。こうやって自分の中にあるものを外に出す。そのときに自分の中にある間違いも同時に出てくるはずです。

出てきた間違いを手がかりにして、自分の中にある間違い発生装置の姿をあぶり出していく。

勉強とは自分を知ることだと私は考えています。

(記事おわり)

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