Yuuta

生命科学の研究者です。抽象化思考、自分とは違う視点、子供たちと戯れることが3度の飯と同…

Yuuta

生命科学の研究者です。抽象化思考、自分とは違う視点、子供たちと戯れることが3度の飯と同じか、それ以上に好きです。

最近の記事

あれこれ話すゼミナール「生物と無生物のあいだ」~ 第1章 2023/10/14 の記録

今期のゼミナールでは、生物と無生物のあいだを読んでいます。 10/14(金曜日)は、参加者が読んできた第1章を元に、3人ずつの3つのグループに分かれて、それぞれ話をしました。 第一章は、ロックフェラー大学に留学していた 野口英世の話です。野口英世はお札になっているくらいに日本人にも有名な科学者ですが、 実は彼の発見は彼の死後、科学的には間違っていたことが明らかになっています。   各グループでは、やはりそういう事実がありながらも、 「なぜ野口英世がそんなに日本でお札に

    • あれこれ話すゼミナール「生物と無生物のあいだ」

      僕の勤務している大学では、2年生 前期から「ゼミナール」という科目があります。このゼミナールという科目では、学生さん自身が、学びたい先生にお伺いを立て、その先生の元で学ぶ機会を得ることができるというスタイルです。 今回、考えることが大好きな学生さんたちの多くが、履修申請を出してきてくれたので、何か面白いことをやれないかなと考えました。 そこで、かねてからその感想を共有したいと考えていた生命科学に関する本を読み、それを参加者で共有する「読書会」のようなものを企画しました。

      • Mr.children 「GIFT」が教えてくれた自分の理想像

        15年前の北京五輪の際に、NHKのテーマソングでした。 当時は、オリンピックのための曲というつもりで聞いていました。オリンピックのタイアップソングなのに、歌詞の一番最初が「いちばんきれいな色って何だろう?」とは、すごく挑戦的!なんて。 …しかし時間が経って色々経験も増えて、その歌詞の意味が、実感を伴って腹落ちするようになりました。僕らそれぞれにとって、「いちばんきれいな色」って必ずしも「金」という共通の色ではないんですね。   「白か黒かで答えろという難題」「白と黒の間に

        • 日本語の解像度は思考の厳密さの指標と言えるか

          言葉ってその人が見えている世界そのものなんだなと思うことがあったので、書きます。以下は「見ているりんごが本当にりんごか?」といった、哲学的な話題ではありません。単なる日本語の解像度の話題です。   突然ですが、これをご覧になっている貴方は、日常的に以下の2つの文章を区別するコミュニケーションをとっていますか? ・なぜリンゴは赤く見えるのですか? ・なぜリンゴは赤いんですか? このとても似ている2つの文章、僕の周りの学生さんには、区別して使っている人、そもそも区別していな

        あれこれ話すゼミナール「生物と無生物のあいだ」~ 第1章 2023/10/14 の記録

        • あれこれ話すゼミナール「生物と無生物のあいだ」

        • Mr.children 「GIFT」が教えてくれた自分の理想像

        • 日本語の解像度は思考の厳密さの指標と言えるか

          大学生のヤングケアラーの学生さんと話して感じたこと

          以前、午前中の授業を休みがちな学生さんに事情を聞いたことがあります。 よく話を聞いてみると、まさに「大学生のヤングケアラー」でした。 https://bigissue-online.jp/archives/1080391889.html ヤングケアラーとは「18歳以下」と定義されますが、実は3世代が同居している実家に住んでいる大学生(特に親御さんが定年していない方)の中にも一定数の割合でいるのではないかと思うようになりました。 日本人的な気質として、「家庭のこと」は「自

          大学生のヤングケアラーの学生さんと話して感じたこと

          「人に寄り添う」とは

          ある卒業生が久しぶりに連絡をくれ、色々と現在の状況で苦労・葛藤していることを共有してくれました。世の中色々と理不尽だなと思うとともに、その方が「人に寄り添える人になりたい」と伝えて下さったのが印象的だったのですが、「人に寄り添う」ってどういうことだろうかと考えてみました。   ぱっと思いつくのは「その人のありのままを認めること。」 それは、”人それぞれ”という一見相手のことを理解している風に見せて、体よく相手を切り捨てることとは違います。です。”人それぞれ”って、あまりポジテ

          「人に寄り添う」とは

          元教え子からの嬉しい言葉

          先日久しぶりにオンラインで話した元教え子が、今やっている営業の仕事を辞めて、今後、海外でこれまでとは全く違う領域にチャレンジすることを教えてくれました。   その際に言われて非常に嬉しかったのが、「営業でも仮説立ててそれを検証していくことの繰り返しなんですよ。そういう意味で、おそらく研究のやり方と全く一緒なんです。Yuuta先生には、4年生の1年間しか教わらなかったのだけど、その時に、なぜそれをやると思う?とか、なぜそう考えるの?、なぜそう思うの?なぜ?なぜ?なぜ?って聞か

          元教え子からの嬉しい言葉

          頭の中の試行錯誤を楽しもう

          6月頃から始めた、単なる雑談をする取り組み「しゃべり場」を「シグモイド会」と名付けました。その由来は、下記のnoteとなります。 長いのでざっくり要約すると、「シグモイドのグラフって、xの値が大きくなって早く増加すること心待ちにしてるけど、そうなるのに時間がかかるのなら、いっそのことグラフが立ち上がる前段階の時間を楽しまない?ということです。つまり、シグモイド会の本名は、シグモイド(の立ち上がりを速くするのではなく、地を這っている時間を楽しむ)会なのです。決して時代に流され

          頭の中の試行錯誤を楽しもう

          今は微分、未来の自分はそこまでの間の自分という積分

          昨日は同僚の先生方と話す会をやってみました。 思っていた通り盛り上がり、日は軽く跨ぎました。 その際話題に挙がったのが、やはり、 #大学生の日常も大事だ まともに大学に登校していない1年生の子たちの状況、心が痛いですね。9月から授業はオンライン、実習はリアルと、両者併用になりそうとのこと。状況が改善されることを祈るばかりです。大学の価値ってはっきり言って授業そのものではなくて、それに付随する様々なこと、例えば価値観を180℃変えるような本と出合ったり、友人と飲み明かしたり、

          今は微分、未来の自分はそこまでの間の自分という積分

          雑談に関する雑談、すなわち「メタ雑談」してみました

          先日、しゃべり場 2回目を行いました。 第1回目は僕が声かけた学生さんがほとんどでしたが、第2回目は社会人の友人たちも参戦して下さり、10人ちょっとの会でした。盛り上がりすぎて、今回も午前1時頃まで話しました。僕が退出した時間以降も、初めましてどうし4人で引き続き話していたそうです。若いって素晴らしい。   さて、今回僕がいたグループで話題になったのが、「雑談」です。 雑談は大事!とはいうものの、「雑談」についてあれこれ考えることなんてなかなかないし、面白いかなと思い、

          雑談に関する雑談、すなわち「メタ雑談」してみました

          シグモイドについての考察

          以前から考えていることを言葉にしようと思い、筆を執りました。理系だったら学校で習う曲線です。シグモイド曲線はWikipedia先生によると以下のものになります。 生命科学で最初に学ぶシグモイドは、ヘモグロビンの酸素飽和度でしょうか。 ヘモグロビンはいくつかのサブユニット(サブユニットとは1つのタンパク)からなっていて、1つのサブユニットが酸素と結合することで、他のサブユニットがより酸素と結合しやすくなります。これによって、ちょっと酸素濃度が上昇すればより酸素への結合が起こり

          シグモイドについての考察

          大学生の考える「正義」とアンパンマン、そして時々仮面ライダー

          先日有志の学生さんたちとおこなった議論で、ある学生さんが、マイケル・サンデルの「これから正義の話をしよう」を紹介してくれました。 その学生さんの考える「正義」とは、「多数決で人数の多い方」とのことです。何故そう思うかというと、自分自身が「意見としてマイノリティ側にいることが多いため、人数が多い方が正義となってしまうという経験」から、ある意味ネガティブにそれを捉えているといった感じでした。なるほど、自分の経験に紐付けた定義です。面白い。    また、別の学生さんにこの話題を振

          大学生の考える「正義」とアンパンマン、そして時々仮面ライダー

          読書会という名のしゃべり場

          僕の授業や実習を受けて質問に来てくれる、そしてその後やり取りが続く学生さんは、ほぼ100%世間的には変わった子です。  しかしながら、それゆえ独自の視点を持っています。僕の所属している組織では一学年が240人いることもあり、学生さん同士は一度固まったメンバーになってしまうと、それ以外と関わる機会はあまりないようです。異なる学年ならなおさら。また、独自の視点を持っている学生さんたちは、周囲と隔絶された自身の頭の中で考えることが好きな内省的な子たちです。内省的な人はあまり社交的

          読書会という名のしゃべり場

          ウイルスという存在の意味

          読書という趣味と授業の小ネタという実益を兼ねて、ウイルスに関する本を読んでいます。研究でウイルスを使っているため基本的なことは知っているつもりでしたが、天然のウイルスについては結構知らないことが多く、とても勉強になっています。病原性のものが主ですが、それ以上に生物とは何か?を考える非常に優れた機会なのかもしれません。授業の話のネタが増えそう。ウイルスの歴史もさることながら、その増殖戦略はため息が出るほど巧妙です。なぜこういう生命体?が存在しているのか、謎です。     ヒトが

          ウイルスという存在の意味

          今年度の修士発表会が終わりました。

          本日、自分の所属する学部において、博士・修士・学士全員の発表が終わりました。今年度の卒業生・修了学生もその成長に目を見張るものがありました。今回は自分がちょっと感動してしまった学生さんたちのエピソードを描きたいと思います。   ---------------------- ケース1 それまで後輩たちもうんざりするくらいに愚痴が多かった(と噂で耳にしていた)学生さんが、僕がやろうと伝えた実験に対して「この局面の優先順位から考えると別の実験を優先すべきではないか?」と言ってき

          今年度の修士発表会が終わりました。

          認知的不協和の解消のための3ステップ

          僕は生命現象の不思議に魅せられ研究をしていますが、その一方で、人の認知やらその人が作り上げられてきた「その人の歴史」(これも広い意味での生命現象)にとても興味を持っています。   色々な人と出会い、その人がどのように世界を見ているのか?ということを教えてもらうことで、自分が知らなかった・考えたことのない見方を知ることは、新しい世界を知ることと同等のように感じています。   その過程で、多くの人にとって、「言動を理解できない他者の理解・対応の仕方」には3段階あるように感じるよう

          認知的不協和の解消のための3ステップ