Mr.children 「GIFT」が教えてくれた自分の理想像

15年前の北京五輪の際に、NHKのテーマソングでした。
当時は、オリンピックのための曲というつもりで聞いていました。オリンピックのタイアップソングなのに、歌詞の一番最初が「いちばんきれいな色って何だろう?」とは、すごく挑戦的!なんて。


…しかし時間が経って色々経験も増えて、その歌詞の意味が、実感を伴って腹落ちするようになりました。僕らそれぞれにとって、「いちばんきれいな色」って必ずしも「金」という共通の色ではないんですね。
 

「白か黒かで答えろという難題」「白と黒の間にある無限の色」

  
日頃の生活や仕事を送るうえで、白か黒かで答えたり考えたりしないといけないことばかり。

特に僕は仕事柄、「科学」という分野にいるので、なおさらです。
AとBを比較するデータは定量的(数値で表せること)な議論が必要だし、ある基準を境に、差の有無を評価する必要があります。

それが「科学」と言ってしまえば、それはそうです。
 
しかしながら、この「科学」に携わり続けて気づいたことは、世の中の出来事や自然現象は総じて、そのように数値で表せないものばかりということ。

そんなことやっと気づいたの?と言われそうですが、、、そうです。あんまりそのようには考えたことがなかったのです。
  
定量的に議論するにも、ある切り口でしか対象を評価していないことになります。
 
もちろん、それはある一つの側面では正しいけれども、別の側面からはかならずしもそうとは言えない。
 
科学的に定量的に論じるのは、あくまで便宜的にそうしているだけであって、それが必ずしも、事実を反映しているわけではなかったり。

もちろん、その便宜性を元にして科学技術が発展してきたことは疑いようもない事実であって、それは否定できないものです。
 
真の科学者が目指しているのは、論文を書くこと以上に、この便宜的な説明が世の中にある普遍性を反映しているような、価値ある意味をもたらすことのできる発見。それが「時の評価に耐える研究」というものなのでしょう。
 
物事を便宜的に記述するのは、分解して考えていかないと捉えることができないという、生物としてのヒトの認識・仕組みの限界でもあるかもしれないなとも思います。

それは、口から入った食べ物を人に取り込むときに、小さく消化してからでないと取り込めないことと似ています。

また、高校までの科目は、生物・化学・物理と別れています。自然界はこれを分けて利用しているわけではないにも関わらず。


一方で、科学者であると同時に人間である僕は、この便宜性の重要性は認めつつ、「GIFT」の歌詞にあるように、白と黒との間には無限の色があることに自覚的でいたいとも思います。
 
グレーなものをグレーで複雑なまま捉えると訳が分からなくなって、悩ましいことが増えてしまうかもしれない。それは優柔不断と言われるかもしれないし、白か黒かで判断しろという圧力を受けるかもしれない。
 
けど、それで悩むことは実はとっても人間らしい。それで悩むことは、自分にとっては幸せなことなのかもしれない。自分は2つの分野にまたがった研究分野で研究をしていますが、きっとその分野が好きなのも、2つの側面を同時に見ないといけない優柔不断さが魅力的だからかも。AIもさすがに「悩んで幸せ」という感情を持つことはできないんじゃないかなぁ。


「日差しがあるから日陰もある。すべてが意味を持って互いを讃えているのなら、どんな場所でも光を感じられる。」


また、日差しが当たる部分は見てわかりやすいものばかり。それは世の中の物事も人の性格や事情なども。ともすればそこばかりに目が行きがち。しかしながら、明るいことの背景には明るくないことも多くあるわけです。
 
いつも笑っているあの人は、深刻な悩みを抱えているのかもしれない。
  
仕事が順調に見えるあの人は、実は不安で仕方ないかもしれない。
  
すごく誠実な人であるあの人は、自分のコンプレックスの海でもがいているかもしれない。
  
つまり、それゆえに生じる日陰があることが往々にしてあります。それは深刻であればあるほど、周囲や友達、家族に共有できず、一人で抱え込まざるを得ないものだったり。また、そのため、自分自身がどれだけそのことで悩んでいるか、しんどい思いをしているか、周囲には理解されず、しんどくなってしまいます。
  
そんな、その人が抱える闇のようなもの、そこに想いを馳せられるような人、そしてそこにそっと手を差し伸べられる、そんな人が優しい人なのかなぁなんて思ったり。


何度となく聞いて詩の中身を考えて、自分はそんな人で在りたいなーとぼんやり思うようになりました。さて、今後、自分はどんなGIFTを子供たちにあげていけるのでしょうか。


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