今年度の修士発表会が終わりました。

本日、自分の所属する学部において、博士・修士・学士全員の発表が終わりました。今年度の卒業生・修了学生もその成長に目を見張るものがありました。今回は自分がちょっと感動してしまった学生さんたちのエピソードを描きたいと思います。
 
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ケース1
 それまで後輩たちもうんざりするくらいに愚痴が多かった(と噂で耳にしていた)学生さんが、僕がやろうと伝えた実験に対して「この局面の優先順位から考えると別の実験を優先すべきではないか?」と言ってきたという印象的な出来事がありました。
 
ともすればスルーしがちな些細な出来事ですが、これまで「言われたことをやる」とか「人を軸にして生きる」いう考え方で生きてきた(と思われる)学生さんから出た言葉として、とても感動しました。
 
この学生さんは、「他者中心の考え方」から脱却し、これからは目の前のことを「自分事」と捉えられるようになる考え方の素地を得たのではないかと思います。学生時代にこのような経験をできると大きな自信になるのではないでしょうか。
 
 
 ケース2
 また、ある学生さんは自分のプレゼンテーションを考えるにあたり、研究の目的を自分なりに深く深く考えました。ともすれば目的とは先生が与えてくれるものと考え、言われたことを鵜呑みしてそれ以上深く考えない、考える時間がもったいないというのが、大学生にはありがちです。
 
しかしこの学生さんの生来の性格もあって、僕から言われた目的がなぜそうなのか?自分の考える目的は手段なのか目的ではないのか?違っていれば、それをどう考えて正していけばよいか?というやり取りを何度となくしました。
 
最終的には本人が腑に落ちる形で収束しましたが、その学生さん曰く、「目的を鵜呑みにすると何も考えなくて楽ではあります。だけど大事なのは、たぶん目的を腑に落とす過程であれこれ考えることですよね。それで結果的に自分の中に引き出しが増えること、それが大事なのではないかと思いました!」と。この学生さんは研究目的を考えることで、極めて汎用性の高い考え方を学んだのだと思います。
 
また、発表後に話した際にも「この一年は研究というよりも実験ばかりやっていたというのが反省点。」だと言っていました。これらを区別して使える学生さんはあまりいません。今後どうなっていくのでしょうか。楽しみです。
 
 
ケース3
別の学生さんは、4年時にディスカッションのやりとりが全く的外れだった学生さん。他の先生のテーマで研究を行っていましたが、修士一年の時に一念発起(?)して、僕のところへ来て「週一で昼ご飯をサシで食べましょう」と言ってきました。その時には全く本を読まない子だったのですが、今では本がないと生きていけない人になりました。
 
最初におすすめした本はV.E. フランクルの「夜と霧」です。いつしかその学生さんの方から本を紹介してくれるようになりました。ブレディみかこさんの「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」は特に面白かったです。  
 
また、研究についても非常に多くの論文を読んで、最後の最後まで自分が納得することを目標として研究を行っていました。研究はなかなか大変そうでしたが、この学生さんは、「夜と霧」のメインメッセージでもある、「どんな状況でも自分の心が持つ希望を失うことはない」を学んだのだと思います。今後もそのような生き方をしていくのでしょう。
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どの学生さんのケースも、先生から教えてもらうという状況でありつつも、自分が何かを得ようと獲得型の主体性を発揮していることが共通点です。「日本の大学生は勉強しない」とは常套句ですし、粗視的にみると僕もそう思います。しかし微視的にみると、大学生・大学院生も「大事な超本質的なこと」をちゃんと学んで、大きく成長しています。
 
学生さんたちは、僕との関わりでイラっとすることは数知れずかもしれません。ただ、様々なイベントを通して学生さんの成長を感じることのできるこの仕事はやっぱり面白いと思いました。
 
今年度は学会やイベント総キャンセルのため、しっかり準備して新年度が迎えられそうです。

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