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【文章】心が柔らかくなる瞬間を。

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写真と言の葉。どこかにある物語。
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#コラム

ジョニ・ミッチェルと東京タワー。

ジョニ・ミッチェルと東京タワー。

ジョニ・ミッチェルの「BLUE」を聴きながら東京タワーを読んでいた。

そう言うべきか。

東京タワーを読みながらジョニ・ミッチェルを聴いていた。

そう言うべきか。

カクテルを混ぜ合わせた時のようなある種の浮遊感と甘い空気感が漂った平日の昼下がり。

ふと記憶が浮遊する。

「君と彼女が一緒にいる所を想像できるよ。」

そうそのバーのマスターは、何も言ってないのにその人の名前を出して。
それか

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サヨナラCOLORに想いを馳せて。

サヨナラCOLORに想いを馳せて。

サヨナラCOLOR
この歌を初めて知ったのは、高校1年生の春。

中学生の頃に始めたギター。
どうやら他にもギターを弾ける同級生がいるらしい。
そんな噂を耳にしてその同級生と一緒に公園でギターを弾いた時、彼が歌ったのがこの曲だった。

それまで知っていた曲と違って
なんだか大人な感じがした。

「何この曲?」

「サヨナラCOLORだよ。こないだ駅前で歌ってたらさ、たまたま失恋した人が来てさ、この

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映画のような日常

映画のような日常

昼下がり。
気候が心地良く用事を済ませて目的地もなく自転車を漕いでいく。

そう言えばと思い出して。

美術館へ。

「平成」から「令和」へ、美術界を席巻したトップアーティストたちの作品達が集まったジパング展を観に行った。

魔界。

そう言いたくなるほど
作品のひとつひとつのエネルギーに慄いて
ただの紙、ただの木、そう言ってさえしまえるものに確かな命の息吹が宿っていて。
アーティストとは、そうい

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本を蝶にして。

本を蝶にして。

夕刻のチャイムの時間が変わった。
10月がやってきたんだなぁ。

「やわらかなレタス」というエッセイを読んでいた。江國香織さんの。

なんだか甘やかな香りのする読後感が好きで酔いしれる。
顔を上げて驚く。
そこには、紙と文字しかないのだ。

なんて。

そんな魔法をかけてしまう人がいる事。
きっと彼女は、魔法遣い。
そして
これは、魔法の書だ。

だけど、それは、感じられる人にしか感じられないもの

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宇宙を漕いでいく。

宇宙を漕いでいく。

星が綺麗だ。と、稲穂の匂いがして
上を見上げた瞬間に
星が似合う夜空になってきた。と、頭の中で聴こえてきて。
冬の夜空を想像した。

AM4:30。
半袖じゃ少し肌寒い。
けれど
夜空に見惚れて
自転車を漕いでいく。

田舎道の幸い。
誰もいないので
おぼつかないハンドルさばきでも
問題なく進んでいく。

自転車で、宇宙を漕いでいく。

うそみたいなほんとう。

ねぇ君だったら何を
信じる?

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グラスの中に旅路

グラスの中に旅路

ハイボールを飲んでいる。
ディワーズというスコッチウイスキーの。

すっきりとした味わいで飲みやすい。

ただいまライブのリハーサル終わり。
今宵は、バーライブ。

ライブの前には飲んだり飲まなかったり。
いやほとんどの場合は、飲まない。
やっぱり多少なりとも演奏に支障があるから。
でも今日は、ソロライブ。
飲みながら色んな話をして歌を歌いたい。

人の身体って実直だよね。
そんな事を思いながらグ

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天使は、そんなところにいるのかもしれない

天使は、そんなところにいるのかもしれない

あと2ヶ月後には、クリスマスをやってるらしい。
信じられない。と、思いながら
スーパーまでの道を歩く。
人の対応力について思い馳せたりなんかしながら。

気付いたら空に入道雲は、なく
天使の羽のような雲が広がっている。
天使を、最初に見た人が居たから
天使は、生まれたんだろうか。
なんて
思考は、あれよ、あれよと、回り道をする。
考えるべき事を考えるよりそんな時間が人を造っていくような気もする。

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ジントニックと煙と月の狭間。

ジントニックと煙と月の狭間。

「誰でもいいなら、誰かで埋めてよ。」

そう言って、彼女はジントニックに口をつけた。

午前2時。
常連客がちらほら残っているだけの店内は、薄暗い。

彼女の隣に座っている僕は、返す言葉を見つけられず、ただ耳を傾ける。

「でも、結局さ、私じゃないとダメな場所なんてないんだよね。誰でもいい場所に、たまたま辿り着いただけ。それを運命だなんて嘯いて、適齢期だからって結婚して、不倫は文化だなんて都合のい

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アーケードのバスケットを思い出すだろうか。

アーケードのバスケットを思い出すだろうか。

9月。
残暑が残る夕暮れ時に
気付けばシャッター街になったアーケードを歩いていると

どこからかバスケットボールの軽やかな音が聞こえてきた。

シャッターの閉まった店々が並ぶ。
この通りは、昼間ですら人影はまばらで
どこか寂しげな雰囲気が漂っている。

汗を拭いながら
下を向いて歩いていた。

ふと視線をあげると
通りの先に小学生の姿が見えた。
五人ほどの女の子たちが
活発に
バスケットボールで、

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クロワッサンと夏の日の贈り物

クロワッサンと夏の日の贈り物

8月の上旬。
夏の始まりに心浮かされて。
少し早起きをして、パンを買いに出かけた。

日中に比べると
空気はひんやりと心地よく
街は静けさに包まれていた。
その日は、土曜日だった。

その道中。
開店したばかりの旅行会社の窓口に並んでいるカップルの姿が目に留まった。

こんなに早い時間から
休みの日に、ふたり揃って旅行会社にいる姿を見てなんだかあたたかい気持ちになった。 

幸せって何かを悟るよう

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神様になれない夜に

神様になれない夜に

「神様も、自分で神様になることを選んだのかな?」

華の金曜日。20時過ぎの居酒屋は、騒がしい。

そう呟いた彼女は、俯きがちに
焼酎ロックの氷をカラカラと遊ばせている。

島美人。

この居酒屋に来るといつもボトルキープで入れる焼酎。

ボトルキープのはずなのに、その日の内に飲み終わってしまう。

店を出る頃には、ふらふらのくせに 

それからカラオケに行こうと言って先陣を切って走り出す。

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8月の空とアイスクリームの青

8月の空とアイスクリームの青

「8月32日をほんとに夢見るなんて馬鹿みたいだよねぇ。」

夏休みの終わりが近付いていたその日。
気怠げに彼女は、そう言って駅前のコンビニで買ったアイスクリームを舐めた。

その光景がそれから先「夏」を思う時の代名詞になるとは、知らずに僕は、ぼんやりと眺めていた。

空には、澄み切ったアオが広がり、雲ひとつない。

「例えば、この空のあおさが心だったらどうする?」

隣で同じようにアイスを食べてい

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蝶とネクタイ

蝶とネクタイ

「生まれた事に意味なんてないのにさー。
生まれてきた意味なんて考えて世界発展させてきた人類ってちょーゆーのーじゃね?」

たまたま寄った居酒屋で絡んできたデリヘル嬢は、そう言って、炒飯を頼んでいる。

そして
何故か瓶ビールのグラスが私の目の前にも置かれている。

「そっすね。あ、ざっす。いただきます。」と、乾杯をしながら。

持ち前の人間力を彼女は、発揮する。

褒めてみるとうるせぇ殺すぞと睨ま

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信じる。は、寂しいに似ているような気がする。

信じる。は、寂しいに似ているような気がする。

「ほんとに信じるって心の中で黙って思う事じゃないかな。」

ぽつんとその人は、言って遠い目をする。

信じる。には、人それぞれの”信じる”があるような気がする。

小さな弱さが見え隠れする。
スンとした意志を感じる。

信じるは、孤独に似てるような気がする。

信じる。って言葉に君はどんな背景を見ますか?

心の中で黙って想われている人にその想いが届けばいいなとぼんやり思う。

心の中に大切な人が

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