ミュージシャンのための教育スケッチブック

このノートの目的 ・いろいろな刺激を受けながら音楽をスケッチしてみる。 こんな人に…

ミュージシャンのための教育スケッチブック

このノートの目的 ・いろいろな刺激を受けながら音楽をスケッチしてみる。 こんな人に読んでほしい ・作曲をしている人、してみたい人。即興も含まれる。 ・音楽に興味がある人。創作一般に興味がある人。 ・何か考えてみたい人。

マガジン

  • ソングライティング・ワークブック

    歌を発想して最終的に他人に聴いてもらうまでに、どういう作業をすればいいか。また、たくさんの歌を継続的に書くには何をすればいいか。それを「課題」というかたちでこのnoteに毎週公開しています。

  • Jazz練習帳

    Jazz初心者、あるいは学び直したい人のための。「即興演奏」と「Jazz」は重なっている部分もあるが、重なっていない部分もある。その区分線は人によって異なる。ここでは私の主観で「Jazzの言葉」をどうやったら身に着けられるか、練習方法を考える。

  • ぽっぽぷうりの100のうた

    主にソングライティング・ワークブックを書きながら思いついたものを集めています。 ソングライティング・ワークブックはこちら; https://note.com/yasuoakai/m/m862c7f1178c4 いつ100曲になるのかわからないけれど。

最近の記事

ソングライティング・ワークブック 第161週:Cole Porter(11)

ソングライティング・ワークブック目次へ Begin the Beguine-リピート記号のない歌(3)T(トニック)-D(ドミナント)-D(ドミナント)-T(トニック)と(カウンター)メロディラインのクリシェ ポルカ、ワルツなど古いダンス音楽やポピュラーソングによく使われるTD-DT(トニックからドミナントで問いのフレーズを作り、ドミナントからトニックで答えのフレーズを作る)形は、『Begin the Beguine』でも使われている。TD-DT形については今までも述べて

    • ソングライティング・ワークブック 第160週:Cole Porter(10)

      ソングライティング・ワークブック目次へ Begin the Beguine-リピート記号のない歌(2)曲の転調と歌詞の「転調」が一致する 一見してわかるように、過去の失われた愛を思い出す歌だ。Porterが実際に「ビギン」を見聞きしたのはパリだったけれど、場面設定はあたかも海岸の夜、オーケストラが音楽を奏でているというような、南国リゾートという感じ。歌詞の中の話者がどこにいるのかは本当にはわからない。大金持ちであちこちクルーズしてまわることのできたPorterらしい生活感

      • ソングライティング・ワークブック 第159週:Cole Porter(9)

        ソングライティング・ワークブック目次へ Begin the Beguine-リピート記号のない歌(1)『Begin the Beguine(ビギン・ザ・ビギン)』が初めて歌われたのは1935年で、ミュージカル『Jubilee』においてだった。June Knightという人が歌ったようだけれど、その動画や録音は見つからない。以下、Alfred版の『The Cole Porter Song Collection: Volume One 1912-1936』に、掲載されているそれ

        • ソングライティング・ワークブック 第158週:Cole Porter(8)

          『Blow, Gabriel, Blow』について、続き。 ソングライティング・ワークブック目次へ 近頃は何でもありだね(Anything Goes)(7)持続と展開 『Blow, Gabriel, Blow』のコーラスは、A(16小節)+A(16小節)+B(16小節)+B'(16小節)+A'(16小節)とでも言えるような構成になっている。Aセクションはそれだけで、小さな有節歌曲として成立する; 基本的にはこの16小節の小さな歌を5回繰り返して、ひとつのコーラスとする

        ソングライティング・ワークブック 第161週:Cole Porter(11)

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        • ソングライティング・ワークブック
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          6本
        • ぽっぽぷうりの100のうた
          29本

        記事

          ソングライティング・ワークブック 第157週:Cole Porter(7)

          ミュージカル『Anything Goes』の舞台をを生で見たことはない。私が主に参考にしているのは、2021年にロンドンのバービカン(Barbican)で録画されたDVD(Blu-Rayもある)で、Reno役がSutton Foster(2011年ブロードウェイでこの役を演じていた人。この年演じる予定だった別の人が負傷したためFosterが再び演じることになった)、Billy役がSamuel Edwards、Moonface Martin役がRobert Lindsay、Ho

          ソングライティング・ワークブック 第157週:Cole Porter(7)

          ソングライティング・ワークブック 第156週:Cole Porter(6)

          前回紹介したCole Porterについての映画『De-Lovely』の邦題は『五線譜のラブレター』。Amazon Prime(MGM)で観ることができる。 ソングライティング・ワークブック目次へ 近頃は何でもありだね(Anything Goes)(5)ときめく半音階と跳躍(It's De-lovely) 『It's De-lovely』はもとは映画のために書かれたが、それには使われず、ミュージカル『Red, Hot, and Blue』(1936)で歌われた。歌ったの

          ソングライティング・ワークブック 第156週:Cole Porter(6)

          ソングライティング・ワークブック 第155週:Cole Porter(5)

          ソングライティング・ワークブック目次へ 近頃は何でもありだね(Anything Goes)(4)半音階を滑り落ちるモチーフ この頃のソングライターたちの多くは、程度の差こそあれクラシカルを学んでいた。だからフレーズのつなぎ方、並べ方もその作法がよく使われている。また、覚えやすさはその歌が成功するかどうかを左右する大事な要素だった。できれば芝居を見終わった客が帰り途に口ずさみたくなるようなものが求められていた。 覚えやすさの大切さは歌詞についても言える。言葉の繰り返し、韻

          ソングライティング・ワークブック 第155週:Cole Porter(5)

          ソングライティング・ワークブック 第154週:Cole Porter(4)

          ソングライティング・ワークブック目次へ 近頃は何でもありだね(Anything Goes)(3)『Anything Goes』の時代 ミュージカル『Anything Goes』が初演されたのは、禁酒法(Prohibition in the United States、1920-33)が終わってすぐのことだった。大恐慌(the Great Depression、通常1929-1939が大恐慌時代とされる)はまだ影を落としていたが、1933年にFranklin D. Roos

          ソングライティング・ワークブック 第154週:Cole Porter(4)

          ソングライティング・ワークブック 第153週:Cole Porter(3)

          ソングライティング・ワークブック目次へ 近頃は何でもありだね(Anything Goes)(2)わたしをハイにするのはあなた(I get a kick out of you) 『Anything Goes』の主人公はBillyというウォールストリートのブローカー。(舞台上の物語の始まりより前で)富豪の婚約者がいる貴婦人Hopeにタクシーで出会い、良い感じになってしまう。彼女ととその富豪の婚約者Evelynがロンドン行きの豪華客船の上で結婚式を挙げるのを、Billyと、その

          ソングライティング・ワークブック 第153週:Cole Porter(3)

          ソングライティング・ワークブック 第152週:Cole Porter(2)

          ソングライティング・ワークブック目次へ 近頃は何でもありだね(Anything Goes)Cole Porterが関わった有名なミュージカルと言えば… 『Kiss Me Kate(キス・ミ―・ケイト、1948年初演)』だろうか?数々のミュージカルの映画化で有名なMGM(メトロ・ゴールドウィン・メイヤー)も1953年に映画化しているし、日本でも宝塚がやっていたように記憶している。ウィキペディアによると2019年まで何度もブロードウェイでリバイバル上演されているようだ。今では

          ソングライティング・ワークブック 第152週:Cole Porter(2)

          Jazz練習帳-1926年にLouis Armstrong and His Hot Fiveによって録音された『Muskrat Ramble』を学ぶ

          目標ジャズピアニストEthan Iversonが自身のブログで、初心者はLouis Armstrong(ルイ・アームストロング)やLester Young(レスター・ヤング)の引用とあとはブルース風のフレーズを合わせてインプロすればいい、と書いていた。この『Muskrat Ramble』は、Armstrongの演奏のなかでは比較的コピーして演奏しやすいと言える。 トランペットやコルネット以外の楽器の人もArmstrongのソロを覚える価値はあるだろう。リズムや、ひとつひと

          Jazz練習帳-1926年にLouis Armstrong and His Hot Fiveによって録音された『Muskrat Ramble』を学ぶ

          ソングライティング・ワークブック 第151週:Cole Porter(1)

          ソングライティング・ワークブック目次へ パースペクティヴCole Porter(コール・ポーター)は1891年インディアナ州ペルー生まれ。Jerome Kern(ジェロム・カーン、1885年生まれ)より若く、George Gershwin(ジョージ・ガーシュウィン、1898年生まれ)より年上。ついでに、Irvin Berlin(アーヴィン・バーリン、『White Christmas』など)、Richard Rodgers(リチャード・ロジャース、『The Sound of

          ソングライティング・ワークブック 第151週:Cole Porter(1)

          Jazz練習帳-Reichert(ライヒェルト)のエチュードを使ってドミナントとトニックを体で覚えるための予備練習

          先に公開した、『Songoro Cosongo』のcoroを使ってT-D (S)-D-Tを感覚で掴む練習、『La Vida Es Un Carnaval』のcoroを使ってT-D(S)-D-Tを感覚で掴む練習のための予備練習。対象は、まだ調性とトニックとドミナントの関係が理解できていない(頭でわかっていても、響きやそれぞれの楽器を演奏する体に入っていない)人。 以下の練習の元ネタはフルートを学ぶ人には有名なライヒェルト(Reichert)のOP. 5『7つの日課練習曲』の第

          Jazz練習帳-Reichert(ライヒェルト)のエチュードを使ってドミナントとトニックを体で覚えるための予備練習

          ソングライティング・ワークブック 第150週:Violeta Parra(11) 

          ソングライティング・ワークブック目次へ いびつなリズムとアイロニーVioleta Parraにはこんな歌もある。 いびつな拍子のマーチという感じだ。 1965年に録音として発表された。この場合、Parraは政治権力と宗教的権威の両方を批判していると言える。「鳩」は普通に平和のシンボルとして使われている。続けよう。 no tiene sello をどう訳したら良いのか、わからなかった。直訳なら、シールやスタンプがない、という意味だけど。モーゼの十戒の第5戒は、父と母を敬

          ソングライティング・ワークブック 第150週:Violeta Parra(11) 

          ソングライティング・ワークブック 第149週:Violeta Parra(10)

          ソングライティング・ワークブック目次へ El gavilán (続き3)何度も挙げているけれど、まだ聴いたことがない人のために。 Mauricio Valdebenitoによるトランスクリプション。 鷹には爪がある、と人々は言った 一応訳してみた。「7つの要素」がちょっとわからないけれど、「芸術の7要素‐線、形、空間、価、形式、質感、色(7 elements of art-line, shape, space, value, form, texture, and co

          ソングライティング・ワークブック 第149週:Violeta Parra(10)

          ソングライティング・ワークブック 第148週:Violeta Parra(9)

          ソングライティング・ワークブック目次へ El gavilán (続き2)もう一度貼り付けておく; メンドリはどこか? Parraが自ら語ったように、『El gavilán』が、「鷹に恋するニワトリは結局鷹に殺されてしまう」という寓話だとしても、歌詞は物語を単純に語らない。つまり、誰かナレーターが「昔々あるところに鷹に恋するメンドリがおりました」といったような三人称で話を分かりやすく語る、といったようなことはしない。また、登場人物が自ら「私はメンドリです」と出てきて語り始

          ソングライティング・ワークブック 第148週:Violeta Parra(9)