越野 泰徳

引退しました。 今は、どこにも属さず、何者にもならず、来し方と行く末について思索してい…

越野 泰徳

引退しました。 今は、どこにも属さず、何者にもならず、来し方と行く末について思索しています。 https://twitter.com/yasunorikoshino https://www.instagram.com/koshinoyasunori/

最近の記事

ちょっと変な旅 敦賀・金沢 2

【2日目】2/10(土) 敦賀09:26 --- しらさぎ1号 --- 10:48金沢 季節料理 おでん 黒百合 → 金沢海みらい図書館 → 金沢温泉金石荘 → Vacation Rent 金沢 → 尾山神社神門 → 長町武家屋敷跡 → 大衆割烹 魚吟 → バー 漱流 → だいぬき屋 → Vacation Rent 金沢▲ さて、旅行2日目は敦賀から金沢へ。 サンダーバードに乗って1時間半弱の10時48分に金沢到着。 到着後、大きな荷物をコインロッカーに入れ、11時開店と

    • 気づいたら校長になっていた

      平成29年4月7日午後4時、ボクは少しあせっていた。 4月に入ってあれこれ忙しくはあったが、あいさつまわりも、ホームページの更新も、校長会も、職員会議も順調で、校長としてのスタートはまあまあうまく切れている。ただ一つ、問題は宴会だ。 その日の夜、学校を転入・転出した教職員のための歓送迎会が催されることになっていた。 当然、開会のあいさつは校長であるボクがしなければならない。そして、どうせなら校長らしく、少しは気の利いた、人間味と教養あふれるあいさつをしたい。しかし、校長

      • ちょっと変な旅 敦賀・金沢 1

        2月に金沢へ行ってきた。 もともと「金沢へ行きたい」という明確な動機はなかったのだが、元日の地震の影響で観光客のキャンセルが相次いでいるということだし、とりあえずは、雀の涙ではあるけれど少しお金を落としてこようと思い立ち、金沢を訪れることにした。それに、北陸応援割がはじまってしまうと、人々でごった返すことになるだろうし・・・。 【1日目】2/9(金) 京都17:09 ーーー サンダーバード3号 ーーー 17:59敦賀 まるさんや → ビジネスホテル スイートピー▲ 金沢

        • アタマのおかしな校長

          先日、ある方から「アタマのおかしな校長」と言われ、ナノ(10⁻⁹)レベルのショックを受けたのですが、よくよく考えると、かのスティーブ・ジョブズ氏も“ STAY FOOLISH ”と言っておられるとおり、世の中に変革をもたらすのはだいたいアタマのおかしな人たちだし、成果と知名度はともかく、これまでの常識にとらわれず学校改革に励んでいるつもりの私としては、ギガ(10⁹)レベルの励ましを受けたものと、大変光栄に存じている次第です。 社会は進化してきました。生物が突然変異を原動力と

        ちょっと変な旅 敦賀・金沢 2

          「教え込む教育」から「引き出す教育」へ

          学校は人に物を教うる所にあらず、ただその天資の発達を妨げずしてよくこれを発育するための具なり。 これは、福沢諭吉の著作『文明教育論』の中の一節です。 明治時代がはじまり、欧米のさまざまな知見を取り入れるで、“education”という英語をどう日本語に訳すかという論争が巻き起こりました。 日本の近代教育を設計した三傑による主張は次のとおりです。 大久保利通は“education”に「教化」という日本語をあてました。一方、福沢は「発育」を主張しますが、受け入れられません。

          「教え込む教育」から「引き出す教育」へ

          忍耐と時、この二人の戦士ほど強いものはないのだよ

          “忍耐と時、この二人の戦士ほど強いものはないのだよ” これは、トルストイの『戦争と平和』に出てくるクトゥーゾフ将軍の言葉です。 1812年、大陸封鎖令に従わないロシアに対して、フランス皇帝ナポレオン1世は64万人の大軍を率いて敵地に攻め入ります。一方、連戦連敗でひたすら退却を続けるクトゥーゾフ将軍は、ついにモスクワを放棄してまたも退却。しかも、その愛する街に自ら火を放って・・・。 このあとのロシアによるドラマチックな大逆転と大勝利、そこから得られる躍動感については、文庫

          忍耐と時、この二人の戦士ほど強いものはないのだよ

          定期テストをやめた理由(わけ)

          テストで頭はよくなりません。 むしろ、「勉強は正解を暗記して正確に再現することであり、とてもつらいこと」と刷り込まれてしまい、自己を磨くための本当の勉強ができない人になってしまいます。 現に日本の大人たちは、まったくと言っていいほど勉強をしません。 テストで知識は定着しません。 長期記憶として知識を定着させるには、忘却曲線を活用し、適切なタイミングで復習を繰り返すという科学的な方法が必要です。 一発勝負の定期テストでは、チャイムと同時にすべてが忘却の彼方に消え去ってしま

          定期テストをやめた理由(わけ)

          誰かが自分に重い弁当を持たせてくれることがある。

          式辞 凛として水冴ゆる賀茂川に、早春の柔らかな光射す今日のよき日、京都府立清明高等学校第七回卒業証書授与式を挙行しましたところ、○○○○ 様をはじめ、多数の御来賓並びに保護者の皆様の御臨席を賜り、卒業生の門出を祝福していただきますことに、心から感謝申し上げ、高壇からではございますが、厚く御礼申し上げます。 ただいま卒業証書を授与しました八十五名のみなさん、御卒業おめでとうございます。今日という日を迎えられたみなさんの真摯な努力に敬意を表し、在校生、教職員一同、心から祝福を

          誰かが自分に重い弁当を持たせてくれることがある。

          彼女が美しいのではない。彼女の生き方が美しいのだ。

          「彼女が美しいのではない。彼女の生き方が美しいのだ。」 今から44年前の1976年、資生堂の化粧品「INOUI(インウイ)」の発売にあたり、日本のコピーライターの草分け的存在と言われる土屋耕一が世に送り出した広告コピーです。 「化粧品」という、人を外面から美しくするツールの広告にもかかわらず、「生き方」という、人を内面から美しくするメンタリティを対峙させる、その大胆な構図の基底には、「私は他人の干渉や保護を受けず、自分の意思で判断し、自ら進んでINOUI(インウイ)を選び

          彼女が美しいのではない。彼女の生き方が美しいのだ。

          『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』 ~安らぎと回復のブックカフェ~

          カフェのある書店を開いたヨンジュと、バリスタとして雇われることになったミンジュンの二人を中心に、書店に出入りする人たちがお店の内外で考え、しゃべり、聴き、変わり、そして歩む、群像劇風の物語。 まず、この本を読むだれもが、ヒュナム洞書店の佇まいを好きになる。 おそらく店主のヨンジュにとってだけでなく、この店を訪れるみんなにとって、自分を疎外せず大切にできる雰囲気が、ここにはあるのだろう。 本があって、コーヒーがあって、二人のすべきことがそれぞれにあって、一緒に過ごしてはい

          『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』 ~安らぎと回復のブックカフェ~

          気づいたら校長になっていた episode 2

          お正月、コロナ明けで久しぶりに実家に行ったおり、ボクのことを誰だかわかってなさそうな父親とチグハグな会話を続ける勇気もなく、一人で散歩に出ることにした。 バス通りをしばらく進むと、あの場所に通りかかる。今はもうないが、かつてミッション系の幼稚園があったあの場所だ。 人生ではじめて受験に失敗したのは3歳のときだった。名前を訊かれても、年齢を訊かれても、ボクは目も合わせずジッと前を向いていた。怖かったのではない。目の前にいるシスターの満面の笑顔のその奥に潜む偽善を読み取ったの

          気づいたら校長になっていた episode 2

          ボクとピーターのエミー賞

          「アル・ユ・ストレント?」「アル・ユ・ストレント?」 1986年1月15日、カルカッタ国際空港。さっきからインド人の税関職員がしつこく質問を繰り返している。ところが、ボクには彼が何を言っているのか、さっぱりわからない。 「アル・ユ・ストレント?」「アル・ユ・ストレント?」 ・・・お手上げ状態のボクの額にいよいよ脂汗がにじんできたそのとき、後ろに並んでいたカナダ人が “ Are you a student? ” と、耳にやさしくて美しい、そしてなんとも懐かしい感じのするき

          ボクとピーターのエミー賞

          「腹中書有」について考える。

          安岡正篤の座右の銘に「六中観」がある。「読書感想文集」の発刊にあたり、ここではそのうちの「腹中、書有り。」について考えることにする。 「腹中、書有り。」についての安岡の説明は以下のとおり。 まず「書」とは書物、つまり本のこと。 普通、本は「頭」で読み、「頭」で理解する。でも、読書というものは、そんな段階で満足していてはダメで、「腹」でわかり、「腹」に納めなければならないと言っているのだ。 なるほど、「腑に落ちない」「腹で考える」という表現を使う文化を持つボクたちには、な

          「腹中書有」について考える。

          雪解けて村一ぱいの子ども哉(小林一茶)

          世に「冬の時代」というレトリックがある。 大逆事件の後、明治末から大正初を「社会主義運動冬の時代」と呼ぶことを、本校生徒で知らない者はいない。 おニャン子クラブ解散後、1980年代末から90年代前半を「アイドル冬の時代」と呼ぶことを、本校生徒で知る者はいない。 過去、メキシコ五輪銅メダル獲得後の日本サッカー低迷期も「冬の時代」と呼ばれたし、今、米研究者のFilip Piekniewski氏は、世間のAI言及バブルの様相を懸念して、「AI冬の時代」がやってくると主張する。

          雪解けて村一ぱいの子ども哉(小林一茶)

          『ノスタルジア 4K修復版』~4Kを待っていたかのような映像美~

          「4K修復するなら、どの映画?」 もし、そう尋ねられたなら、まちがいなくタルコフスキー監督の映画と答えるだろう。それほどこの人の映像作品は美しいし、なかでも『ノスタルジア』は群を抜いてきれいだと思う。 今回の修復版の監修は、オリジナル版の撮影監督だったジュゼッペ・ランチ。これ以上の適任者はいないだろうということで、もう回数も覚えてないぐらい何度も見返した作品ではあるけれども、ぜひ劇場で見てみたいと、とても楽しみにしていた。 水がとにかく美しい。水だけではなく雨、霧、靄、

          『ノスタルジア 4K修復版』~4Kを待っていたかのような映像美~

          『フェルメール The Greatest Exhibition』 没入と共感のアートドキュメンタリー

          「日本百名山」はたった24座のまま、とうとう還暦を迎えてしまった。「別府八十八湯」も60湯ぐらいでどうでもよくなってきて、今でもときどき別府温泉には行くのだけれど、めんどさくてスタンプは押さなくなった。 定年退職したら「四国八十八カ所」の歩き遍路でもやろうかと思い、ついこのあいだ本を買って読んでみたら、マムシが多いというできれば知りたくなかった情報に触れてしまい、速攻断念した。 さて、フェルメールが描いた作品の総数は約37点ほどと言われていて、その少なさが彼の謎めいた魅力

          『フェルメール The Greatest Exhibition』 没入と共感のアートドキュメンタリー