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ミスタードリラーが生まれるまでの話

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私が初代ミスタードリラーを考案するまでの話を自分史として書いています。
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記事一覧

ミスタードリラーが生まれるまでの話 最終回「ホリ・ススム誕生」

ミスタードリラーが生まれるまでの話 最終回「ホリ・ススム誕生」

最後に、主人公「ホリ・ススム」の話をしましょう。

彼の名付け親は、私の同期で仲の良かったエンジニアでした。
彼は当時、会社の私の席横に置いてあった筐体にちょいちょいテストプレイをしに来てくれていたのです。
そんなある日「このゲームのタイトルなんだけど『ホリ・ススムの大冒険』っていうのはどう?」と、冗談めかして言いました。
そんなベタなタイトルはさすがに…と、タイトルについては却下させてもらったの

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ミスタードリラーが生まれるまでの話 第11回「彼が穴を掘る理由」

ミスタードリラーが生まれるまでの話 第11回「彼が穴を掘る理由」

ようやくゲームのメカニクスが固まってきました。うろ覚えですが、最初の着想からは3年近く経っていた気がします。

エンドレスで掘った距離を競えるプロトタイプをデバッギングステーション(通称デバステ)用のCDに焼いてもらい、「遊べる企画書」という、やや苦しいこじつけで吉沢さんに遊んでもらうことにしました。

その時の経緯は吉沢さんのtwitterの通りです。吉沢さんは見た目のチープさには囚われずに面白

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ミスタードリラーが生まれるまでの話 第10回「面白さのコアを掴む」

ミスタードリラーが生まれるまでの話 第10回「面白さのコアを掴む」


四角形バージョンの試行錯誤をする中で課題はいくつも出てきました。

ひたすら真下を掘れば安全になってしまう。

 →壊せないブロックをランダムで発生させて、ずっと真下には進めないようにしよう。初期配置でルートを完全に塞がないように。

横移動しようとして横のブロックを壊してもすぐに上のブロックが落ちてきて進めない。

 →ブロックが落下可能になってもすぐに落とさず、しばらくグラグラしてから落ちる

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ミスタードリラーが生まれるまでの話 第9回「失敗が自分のせいだと思えること」

ミスタードリラーが生まれるまでの話 第9回「失敗が自分のせいだと思えること」


吉沢さんのTwitter(現X)にもあったように、自分はRAGE RACERの続編、R4のプロジェクトメンバーでした。R4が佳境に入っていったこともあり、本業に専念しドリラーは潜伏期間に入りました。

ただ、思い込みだけは人一倍強かった私は、これが完成すれば今までに無い新しい面白さを持ったゲームになるという確信を持っていました。もちろんマーケット調査はしてないのでエビデンスとなるデータは私1人で

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ミスタードリラーが生まれるまでの話 第8回「予想できてこその予想外」

ミスタードリラーが生まれるまでの話 第8回「予想できてこその予想外」

ぷよぷよにヒントを得た私は、さっそくフィールドに色つきの四角いブロックをランダムに敷き詰めて、上からプレイヤーが消していくイメージを浮かべてみました。
脳内エミュレーターなのでセットアップも一瞬で終わります。

ブロックを消して行くと確かに連鎖は起きるのですが、いつまで消しても自分は潰されそうになりません。真下を消してさえいれば頭上からブロックが落ちて来ることがないからです。このままだと思ったよう

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ミスタードリラーが生まれるまでの話 第7回「脳内エミュレーター」

ミスタードリラーが生まれるまでの話 第7回「脳内エミュレーター」

2年といってもあくまで本業の傍なので、本業そっちのけでドリラーのことだけを考えていたわけではありません。
煮詰まったら考えるのをやめて、時々思い出してはまた考えに耽る、といった感じでした。
当時はUnityみたいな便利ツールはなかったですし、自分でプログラムを組むような技術もありませんでしたから、主に使っていたツールは「脳内エミュレーター」でした。
目を閉じて脳裏にゲーム画面を思い浮かべ、プレイヤ

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ミスタードリラーが生まれるまでの話 第6回「公園の砂場」

ミスタードリラーが生まれるまでの話 第6回「公園の砂場」

「予想外な大ピンチによるスリルとそれを切り抜ける達成感」が面白さのコア

このゲームの「面白さのコア」はそれじゃないか?という所まではたどり着きました。ただ、大ピンチによるスリルといっても抽象的で具体性がありません。

地底探検アクションというテーマはいったん決めていたので、具体的に地底探検中にで起こりそうな大ピンチのシチュエーションを色々と考えて見ました。

・地底モンスターに襲われる
・閉じ込

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ミスタードリラーが生まれるまでの話 -第5回「面白さのコアはどこにある?」

ミスタードリラーが生まれるまでの話 -第5回「面白さのコアはどこにある?」

プレイヤーの感情を生み出すシチュエーションの具体的イメージ、それが「面白さのコア」

本業の方は相変わらず今ひとつな状態でした。
なんとかこなしてはいたものの、メンバーの目には「理由は分からんがイマイチやる気のないやつ」という風に映っていたんじゃないかと思います。

実際、自分が前に書いたような鬱屈した気持ちを抱えていることや、本当に自分が作りたいゲームのことについては同期の数人くらいにしかは話し

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ミスタードリラーが生まれるまでの話 第4回「ディグダグ×トルネコ?」

ミスタードリラーが生まれるまでの話 第4回「ディグダグ×トルネコ?」

80年代ナムコ2Dゲームと90年代ローグライクRPGの組み合わせというアプローチ

私はナムコが大好きで、80年代ナムコ的な2Dゲームが作りたいと思っていました。
一方で固定配置のステージがあってクリアし、次のステージへ進んでいく従来スタイルのゲームは古いと思うようになりました。

そう思うようになったのは、就職1年目の1993年9月に発売されたスーパーファミコン用ソフト「トルネコの大冒険 不思議

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ミスタードリラーが生まれるまでの話 第3回「2Dゲームへのこだわり」

ミスタードリラーが生まれるまでの話 第3回「2Dゲームへのこだわり」

ポリゴンを使った3Dゲームがメインストリームとなり、2Dゲームは古くさいゲームとして時代の流れに取り残されていった。

ファミスタ’94は「初心に戻ってシンプルファミスタ」というコンセプトの元専用ゲームモードを作らなかったことや、先輩方のフォローのおかげもあって、無事発売することができました。

タイトル画面やメニュー画面のドット絵を描かせてもらったり、巨大水族館を球場に見立てたオリジナルスタジア

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ミスタードリラーが生まれるまでの話 -第2回「知・好・楽な人達」

ミスタードリラーが生まれるまでの話 -第2回「知・好・楽な人達」

新卒で入社したナムコは、社員達が「遊ぶように仕事をして」、「仕事をするように遊んでいる」不思議な会社だった。

新卒で入社したナムコの第一印象は「不思議な会社」でした。
出社しても、机でで仕事らしい仕事をしている人はほとんどおらず、遊んでるのか仕事してるのかよく分からない。…というか、どう見てもひたすらゲームして遊んでいるようにしか見えない。
出勤や退勤時間もバラバラで、お昼過ぎにフラッと来る人が

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ミスタードリラーが生まれるまでの話 第1回「憧れのナムコ」

ミスタードリラーが生まれるまでの話 第1回「憧れのナムコ」

脳出血で死にかけた私は終活として自分史を書き始めた。

私は今年、突然の脳出血で死にかけたことをきっかけに、50代ですが「終活」を始めることにしました。その終活の一環として50歳までの半生をまとめた「自分史」を作ろうとしています。
自分史を書く上で外せないのが、私が28歳頃に企画とディレクターを務め、1999年に業務用ゲームとしてリリースされた「ミスタードリラー」というアクションパズルゲームです。

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