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ミスタードリラーが生まれるまでの話 第8回「予想できてこその予想外」

ぷよぷよにヒントを得た私は、さっそくフィールドに色つきの四角いブロックをランダムに敷き詰めて、上からプレイヤーが消していくイメージを浮かべてみました。
脳内エミュレーターなのでセットアップも一瞬で終わります。

ブロックを消して行くと確かに連鎖は起きるのですが、いつまで消しても自分は潰されそうになりません。真下を消してさえいれば頭上からブロックが落ちて来ることがないからです。このままだと思ったようなピンチ状態にならない…どうしたものか。

考えた結果、ふと「ブロックを六角形にしてみたらどうだろう?」と思いました。

六角形なら下に掘っていても、斜めの地滑りが起きて潰されそうになる。
これならブロックに潰されそうになるピンチのシチュエーションが作れる!

これはグッドアイデアだ!

その時はそう思ったのです。
「思い込んだ」といった方が良いかもしれません。

そして、基本ルールといくつかのシチュエーションをまとめて、企画部の先輩や当時の上司だった吉沢さんに見てもらったのでした。

その時の話の流れは吉沢さんのTwitter(現X)の通りです。

Twitterにもあったように評価は「今ひとつ」でした。

六角形にした結果、ブロックが落下する法則が複雑で分かりにくくなってしまい、「予想外」以前に、予想そのものが最初から出来ない状態になっていたのです。

「予想」できてこその「予想外」なのですから。

結果、体験させたいスリルの感情もうまく伝えることができませんでした。

その時点で素直に考え直せば良かったのですが、諦めきれない私は、エンジニアの先輩に頼み込んで六角形バージョンのプロトタイプを作ってもらっていました。

画面スクロールこそしないものの、自分の書いたルールに沿ってブロックが移動するものを、先輩は快く作ってくれました。

結果は、やはり「分りにくい」という評価でした。

脳内エミュレーターはいくら回しても結局は自分の脳内だけのこと。

自分が分っている前提でしか脳内再現できないので、第三者視点で見て分りやすいか、やりたいことが伝わるのかを判定することができません。

それを防ぐには、思い込みを捨てて他者からのインプットに耳を傾ける姿勢が必要でした。

思い込みと自己完結で無限ループしていた当時の自分にはその姿勢が欠けていたのです。

当時、自分のお願いを聞いてくれて、業務外の時間を使って六角形プロトを作ってくれた先輩には、心からの感謝と、思い込み自己完結クソ野郎だった自分が迷惑をかけてしまったことを謝罪したいです。本当に申し訳ありませんでした。

こうして最初のチャレンジは失敗に終わったのでした。


つづく




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