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キャリアチェンジ:化学メーカーから製薬会社の経営戦略部門へ

今回ご紹介するのは化学専攻で大学院を卒業後、化学メーカーの研究開発職→MBA→技術営業を経験して、製薬会社の経営戦略部門へ転職をした方の事例です。どのような問題意識からMBA留学や職種転換をしたのか、何を求めて転職をしたのか。その考えの変遷と行動を見てみましょう。

研究開発職からMBA留学へ

滝川秀一さん(仮名/36歳)は、理系出身でありながらもコミュニケーション力が高く「何か面白いことをしよう」と常に目を輝かせているのが特徴の明るいお人柄です。大学・大学院では化学を専攻して卒業後は大手化学メーカーの研究開発部門に入社しました。

そして、基礎研究に従事して5年程が経過した頃から「研究者としてのみ生きるのではなく、研究を事業につなげたい」という思いが次第に高まりました。そんな時に会社にはMBA留学制度があることを知り「研究者からビジネスマンに移行するきっかけになれば」と思い同制度に申し込みました。当時、その会社では研究開発部門からMBA留学を希望する人が殆どいなかったこともあり(ご本人曰く)運よく選抜されて留学をすることが出来ました。

MBA留学後は営業部門へ

帰国後は研究開発部門ではなく、「研究を事業につなげる」という目的に近づく為に営業部門への配属を希望して技術営業職に就きました。このポジションはお薬の錠剤に使用されるコーティング剤(錠剤で薬の成分を包んでいる白く甘い部分)を製薬会社に売り込む仕事です。この仕事をやり始めて「営業戦略を考えて、企業に提案して仕事を受注する」という事業開発の楽しさを実感し、やはり自分は技術の強みを活かしながら事業を推進していくことが好きだと確信しました。

仕事での気づきから転職を考える

また、技術と営業という2つの視座とMBAをきっかけにグローバルな視野を得た滝川さんは、グローバルの製薬業界の潮流を国内の製薬会社が十分に理解していない様に見えることに危機感を感じました。具体的には製薬会社それぞれが多大な資金を新薬開発に投じてヒット製品を如何に作るか…という新薬開発競争から、世界トップクラスの製薬会社が自社ブランドでジェネリックを手掛けるなどブランドビジネスへ移行しつつあるという流れに国内大手企業が対応出来ていないことに気づいたのです。

滝川さんは「このギャップを最大限に活かして、国内の製薬会社の事業を変革することが俺の使命だ」と考えてすぐに行動しました。クライアントである製薬会社で経営企画を管掌する役員に会う約束を取り付けて、自らの仮説を基に議論をしました。その議論は数回に及び、次第に同社がとるべき戦略がブラッシュアップされていきました。この段階になると、二人の間にはこれを実行しない選択肢は無いという共通の思いが生まれていたそうです。

製薬会社に転職!

そして、この戦略の推進担当として同社に採用され、現在は経営戦略部にて同テーマに取り組んでおられます。立てた戦略を実行する為にクリアする課題は大量にあるそうで、それらを1つ1つ解決しながら前に進む日々を過ごしておられます。古くからの慣習に反することを仕掛けておられるので様々な抵抗があるそうですが、世界の技術開発のトレンドと事業環境の大きな潮流を、分かりやすい言葉で熱心に語る滝川さんに理解を示す人々の輪が広がっているそうです。そして「ひょっとしたらこの大きな会社を変えることが出来るのではないか」と手ごたえを感じ始めていると、滝川さんはワクワクした様子でお話になっていました。

===3年程が経過===

後日談


上記のお話から3年程が経過した時に、その後のご様子をお聞きしました。協力して頂ける人々の輪が非常に広がったことも後押しとなり、もともと立てていた戦略を粘り強く遂行して工場への設備投資や顧客との契約が大きく進み、数年以内には莫大な収益を会社にもたらせるだけの仕込みが出来たとのことです。事業の業績という目に見える成果はもう少し時間が必要ですが、それを実現できる道筋をつけたことに静かな自信と感謝の気持ちで一杯のご様子でした。

最後に、気になる年収ですが、転職前と後では殆ど変わらず900万円で、3年が経過して職位が上がったこともあり1100万円程度になったそうです。
尚、ご本人は年収金額に無頓着で質問した時は金額を把握しておられませんでした(笑)
年収よりも自分が興味あることをやるという姿勢が一貫しており潔さが格好良い滝川さんでした。

(2022年1月11日)
山本恵亮
1級キャリアコンサルティング技能士
プロフィール
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