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登山

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登山日記を中心に温泉、映画、書籍など山の魅力を紹介していきます。
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山小屋の憩い『鳳凰小屋』

山小屋の憩い『鳳凰小屋』

鳳凰小屋は、オベリスクの巨岩から30分ほど下った山の奥にある。標高2,700メートルに迫り、高所に弱い者(自分がそう)は頭痛と闘うことになる。

レトロな造りで、個室はなく、川の字になって寝る雑魚寝。こやで一番目立つのは談話室のアグネス・ラムの水着ポスターで、暖房器具は掘りコタツ。テレビもない。大晦日はラジオで紅白歌合戦を聴きながら年を越すそうだ。

主人の細田倖一さんは、約60年もの間、小屋の主

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Voyage、高尾山へ

Voyage、高尾山へ

令和六年から早起きの練習を始めた。0時半までに寝て6時32分に起きて8時前にアパートを出る。なか卯で卵かけご飯を食べて、コワーキングスペースで執筆をはじめるのが8時半。と言っても、まだ1日もできていない。20〜30分くらい遅刻。会社員時代は8時に起きて9時過ぎにアパートを出ていた。これが染みついてしまっている。2023年はデビュー著書『WBC 球春のマイアミ』の執筆に1年を捧げ長い間、山から遠ざか

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鳥見山

鳥見山

大晦日に山納めをするのは令和元年の塔ノ岳以来。今年は2月に吹雪く蔵王に登ったあと、人生で最悪の腰痛を再発し、登山がパタリと止んでしまった。両手で数えるほどしか登れず、山に居た時間が少ない。

その代わりに新海誠の足跡を訪ねたり、道頓堀を探索したりと代わりの楽しみを見つけたので悔しい一年ではないが、何かとワチャワチャしていた。11月には断絶していた山の先輩から声かけてもらい、三峰山へ。

令和四年の

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三峰山

三峰山

三峰山(みつみねさん)は奥秩父を代表する埼玉の山で、秩父の山といえば三峰山を挙げる地元の方も多い。

三峰山という特定の山があるわけではなく、雲取山、白岩山、妙法ケ岳の3つを背景とする山域の総称。山頂は三峯神社にある。

江戸時代には信州(長野)から十文字峠を越え、甲州(山梨)からは雁坂峠を越えて三峯神社に参拝した。どちらも大好きな峠で、三峯神社には故郷の英雄・ヤマトタケルの伝承も残る。

雁坂峠

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武尊山

武尊山

令和元年58座目は標高2158m、上州を代表する成層火山の武尊山(ほたかやま)。

前武尊、剣ヶ峰、家ノ串、中ノ岳、沖武尊(主峰)、西武尊(剣ヶ峰山)、獅子ヶ鼻山と、7座の2000m級の峰頭を連ねる総称で、登山ルートも豊富。深田久弥さんは群馬の名峰を「障壁」という褒め言葉で形容している。

山名はヤマトタケル(日本武尊)から拝したもの。ただし『古事記』や『日本書紀』には武尊山に登った記録はなく、大

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平標山

平標山

梅雨がなく、雨季でも週末は必ず山にいた令和元年。しかし、9月末からは3週連続、秋雨のなかの山登りとなっていた。

週末や休日に雨が襲うという悲劇。偶然なのか必然なのか、令和という元号は気象との闘いの時代。

谷川連峰・平標山(たいらっぴょうやま)の雨を予想したのはヤマテンだけだった。他はすべて晴れ予報で、引っかかった登山者は多い。

ヤマテンの代表である猪熊さんが栗城史多さんと対談されて以来、4年

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高水三山

高水三山

新宿からオフィスに向かう神宮外苑のイチョウが見頃を迎えた令和元年12月13日(金)、会社を辞めた。

みんなから「おめでとう」と声をかけられる転職。‬でも、ホントは辞めたくなかった。それでも次のステージに上がるには喪失が必要だった。‬こんな自分勝手な男でも、山はそっと包んでくれる。だから翌日、奥多摩に向かった。

昭和のはじめ、高畑棟材さんが命名したと言われる高水三山(高水山・岩茸石山・惣岳山)。

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甲斐駒ヶ岳

甲斐駒ヶ岳

「日本の十名山を選べと言われたとしても、私はこの山を落とさない」
深田久弥さんが”日本アルプスの金字塔”と称え、花崗岩の白砂に輝く名峰が甲斐駒ケ岳。

標高2967m。18座ある”駒ヶ岳”の中で堂々の最高峰。「山の団十郎」「南アルプスの貴公子」など絶賛の呼称は尽きず、雪の富士山を岳神とするなら、冬の甲斐駒は《王様》。そして、何といっても甲斐駒ケ岳の山梨側には黒戸尾根がある。

山頂まで9時間。縦走

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本仁田山

本仁田山

月の最終日が土日だとうれしくなる。
山に登り、一新した自分に生まれ変わって次の月を迎えるからだ。

晩秋と初冬に揺れる11月30日(土)。令和元年の55座目に選んだのは奥多摩にある『本仁田山(ほにたやま)』

標高1224m。「奥多摩富士」という愛称もあるピラミダルな山。奥多摩駅から30分も歩けば登山口に着くことから人気は高い。

この山の名物が大休場(おおやすんば)尾根。
鷹ノ巣山の稲村岩尾根、

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三輪山

三輪山

故郷である大和(奈良県)の桜井には”神々の山嶺”がある。標高467mの三輪山(みわやま)

『古事記』『日本書紀』『万葉集』で描かれた日本で最も歴史の古い山の一つ。三輪とは『古事記』に登場するオホタタネコの衣に縫われた三巻の糸のことで、オホタタネコは、美和大神でもあることから、「美和山」とも伝承された。

三輪山の西麓には桜井出身の英雄・ヤマトタケルが詠んだ歌碑がある。「大和は 国のまほろば たた

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白神岳

白神岳

東北の山のシンボルは、天上の湿原とブナの原生林。八甲田山の翌日、朝5時に目を覚ますと秋田の十和田は大粒の雨に降られていた。

「朝起きてから山に登るか観光か決めよう」と先輩に言われていたものの、はじめから自分の羅針盤は白神岳を指していた。

出発の朝7時50分になっても小雨は止まなかったが「昼から晴れるから」と半ば強引に先輩を説得。

10時30分、雨上がる。昔からマタギの間で「白神の岳は9里(約

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愛宕山

愛宕山

数十年に一度の脅威が日本全土を襲った3年前の台風19号ハギビス。多くの死者を出した痛ましい令和元年の傷跡となった。

幸い新宿はゴミが散乱するくらいで被害がなく事なきを得たが、毎週末の救いである山登りへの影響は甚大。あらゆる登山道が崩壊し、都心の電車は完全ストップ。

部屋に幽閉されたフラストレーションを晴らしたい。そんな台風の夜に手に取ったのが山口 耀久さんの『山頂への道』だった。

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晴登雨読『わが山山』

晴登雨読『わが山山』

晴れの日は山に登り、雨の日は山を想う。山岳の書籍を読んだ日々を回想する「晴登雨読」。今回は、深田久弥さんのデビュー作であり、昭和9年(1934年)に出版された『わが山山』。

大正時代、深田さんが高校・大学生だった頃の登山を中心に紹介させている。《山々》ではなく《山山》としているところに、深田さんの山への深い愛情を感じる。処女作にして文章力の高さに感心させられるが、それにも増して若さゆえの勢いが心

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御嶽

御嶽

2015年9月15日、木曽の名峰・空木岳の山頂から富士山と同格のオーラの山が見えることに自分の眼を疑った。まさか日本にそんな山があるわけがない。しかし何度見返しても、風格と存在感が他の山とは別次元。

凄惨な犠牲を生んだ大噴火から1年、赤く輝きならが噴煙を上げる御嶽(おんたけ)だった。

それから4年が経った令和元年9月28日、先輩が早朝4時30分に新宿まで車を走らせてくれ、東京から信州へ。間近で

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