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小さな幸せの価値

日々仕事に追われていると前しか見なくなる。次の予定、目標数字…自然と足も早足になりがちだ。

次々と仕事を攻略していき、成果をあげて収入を増やし、欲しいものを手に入れる。次から次へと新商品が投入されるのでどんどん欲しくなる。手に入れた瞬間にそのものに興味を持てなくなってしまう。

高級なもの、みんなが欲しがるもの。まだ誰も手に入れていない新商品、限定商品…世の中は「欲しいもの」であふれている。

気が付くと仕事は「消費」のための作業になりがちだ。自分の人生の大切な時間すらも消費してしまう。「消費」している自分に気が付くと「癒し」を求める。

色んな所に「癒し」は売っている。「消費」が「癒し」に化けている場合もある。本来「癒し」ってどんなことを指すのだろう?

「肉体の疲れや精神の悩みや苦しみを何かに頼って解消したり和らげること」を指すらしい。僕にとっての「癒し」って何だろう?

29才で独立して2年目に年収が2000万円に届くようになった。それまで蓄積していた「購買欲」をフル稼働させて「欲しいもの」をどんどん買った。でもすぐに飽きた。奥さんも子どももいたので「女」も買わないし、「車」にも興味がなかった。

僕にとって「消費」行動は「癒し」には結びつかなかったのだ。

事業を拡大していくことで組織を大きくして自分の存在を世間に知らしめようとした。「仲間」が増えていく事でワクワクした。一方で自分の考えている通りにならない事が多すぎていつもイライラしていた。

指示したことを指示通りに100パーセント実行するのは難しい。僕にもできないだろう。でも指示した人間は「これくらいできるだろう」と部下に対して指示を出す。指示した70パーセントが返ってきたらすごいことだ。30パーセント程度できていたら御の字だと思う。

いつもそんな感じでイライラしながら仕事していた。部下の「こなした」仕事の埋め合わせをするために夜遅くまで修正作業を繰り返し、自分が独りぼっちだと認識させられた。

お金は入ってきた。部下たちの心をつなぎとめるためにたくさん飲み食いさせた。その間、僕は事務所で伝票を入力したり請求書を発行したりしていた。

「社長~、そろそろ会計お願いします~」って携帯に電話。全然成績が出ない同じ年の営業Kからだった。支払いだけしに居酒屋に行った。

支払を済ませたらまた事務所に戻って夜中まで仕事した。「社長だからみんなのお父さんだから」そう思って自分で仕事と責任を抱え込んだ。

夜中に家に帰ると子ども達はすやすや寝息を立てて寝ている。寝顔が本当に愛らしい。ぷくぷくとしたほっぺたにふれる。やわらかい。子どものにおいがする。とっても良いにおいだ。

風呂に入る気力もなくそのまま布団に入る。娘が僕の冷え切った手を小さな両手で包み込んでくれる。無意識なのか、起こしてしまったのか…

隣で眠っている娘の温もりが気が付かずにこわばっていた僕の身体を弛緩させた。「あぁ…この幸せの為に生きているんだな」そう実感し、2時間程度の睡眠をとり翌朝も仕事に向かった。

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