指輪に刻まれた名前の秘密
◇◇ショートショートストーリー
桜さんは、旅先の神戸で、立ち寄ったアンティークショップで、とても魅力的な指輪を見つけました。「これ、素敵、お母さんが好きそう、お誕生日のプレゼントにいいかなあ・・・」とお母さんへのプレゼントとして買って帰る事にしました。
たくさんあったアクセサリーの中で何故かその指輪が気になったのです。
東京に帰ってからしばらくして、お母さんの誕生日を迎えました。お母さんの小百合さんは毎年、自分の誕生日をいつもさほど喜んではいませんでした。だからこそ、桜さんはお母さんの笑顔が見たかったのです。
お母さんにプレゼントを渡すと、「まあ、素敵なラッピングねー、ありがとう、この年になると、娘からこんな素敵なプレゼントがもらえるんだねー、」と言いながら、ケースの蓋をあけて、指輪を見るなり、表情が一変しました。
「桜、この指輪、誰かに作ってもらったの・・・」
「素敵でしょう、このデザイン、お母さんが好きそうだと思って、アンティークショップで買ったんだよ」
「どこの・・・」
「神戸の異人館近くのアンティークショップだよ、お母さん気に入った・・・」
小百合さんは、鏡台の上に置いてある宝石箱から、慌ててフェルトのケースを持ってきました。そしてその中から、大切そうに指輪を取り出したのです。
桜さんはその指輪をみて、声をあげました。
「あれっ、お母さん、これってペアリングみたいだね、デザインが、同じじゃない」
「そう、そうなのよ、見て、分かりにくいけど、内側には小さく名前が書いてあるのよ・・・・」
「えー、名前・・・、あっ、ほんとだ、全然気が付かなかった・・・・」
ボリュームのある個性的なデザインの指輪の裏にはMITSUKOとアルファベットで刻まれていました。そして、もう一つの指輪には、MARKと書かれています。
二人とも、指輪を前に呆然としていました。
お母さんは、初めて桜さんに話しました。
「実はね、お母さんは幼い頃、乳児院にいてね、1歳の時に、今の両親にもらわれてきたの、本当に優しい両親に出会ってよかったんだけど、その時に、私が付けていたチェーンのネックレスにこの指輪がつけられていの・・・・」
実は、百合子さんは、女手一人で子どもを育てられなかった若い女性が、どうしようもなくて、施設に預けた赤ちゃんだったのです。
その時に、女性が唯一赤ちゃんに、持たせたのが、指輪をつけたネックレスでした。
翌週、桜さんと小百合さんは、神戸のアンティークショップにいました。
「この指輪をこちらに持ってこられた方、わかりますか?」
「ええ、ご本人ではなく、代理の方が持ってこられたんですよ」
「代理・・・」
「ええ、持ち主だった人は、あの高台にある、老人ホームに入居してるらしいんですけど、ケアマネージャーの方がね、持ってこられたんです」
「その方、生きていらっしゃるんですね・・・」と小百合さんは自分でも驚くらい、大きな声を出していました。
「ええ、この指輪は、朝鮮戦争で亡くなった、米軍のパイロットだった男性のフィアンセのものだったんらしいですよ、持ち主のおばあちゃんが、施設に入ることになって、身の回りの物の整理をケマネージャーさんに頼んだみたいです」
その話を聞いて、二人はどうしても、その女性に会わなければと、ケアマネージャーさんに連絡を取ってもらい、ホームを訪ねました。
「あっ、いましたよ」
窓越しから、その人が、指さします。
「光子さんは、あの方です」
そこにいるおばあさんをみて、小百合さんは、時間が止まったような気がしました。
そこには、小百合さんとそっくりのおばあちゃんが笑顔で座っていました。
【毎日がバトル:山田家の女たち】
《よかったねー、その人に会えて》
朝ご飯にグラノーラを食べた後のばあばとの会話です。
「偶然が面白いねー、これあんたが作ったんじゃろ・・・なんか面白い、ようそんなんが書けらい、ほじゃけど、ホントその人に会えてよかったねー」
「お母さん、物語じゃけんね、お母さんがそう言うんは、お話にのめり込めた言う事かな・・・」
「面白かった、それでおしまい・・・・」
母はどうやら私の制作意欲が失せないように気を使ってコメントしてくれているようです。取り合えず、書き続けたいと思います。
【ばあばの俳句】
ステイホームスター気取りのサングラス
サングラスは夏の季語です。私たちはとってもノリがいい親子です。母はそんな二人の個性をイラストにしました。サングラスをかけた親子がステイホームを楽しんでいる様子です。
能天気な親子だと思われるかも知れませんが、これはイメージです。サングラスは簡単に変身願望を満足させてくれますよね。
▽「ばあばの俳句」「毎日がバトル:山田家の女たち」と20時前後には「フリートークでこんばんは」も音声配信しています。お聞きいただければとても嬉しいです。
たくさんの記事の中から、「やまだのよもだブログ」にたどり着いてご覧いただきありがとうございます。
気に入っていただけて、スキを押していただけると大変励みになります。
私のアルバムの中の写真から
また明日お会いしましょう。💗
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?