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鮮やかな散り際…老年精神科医の「遺作」から老いを見つめてみる?

精神科医によるリアルな老い

私は絶賛中年期を迎えているせいか、健康診断の結果も芳しくありませんでした(泣)。加えて、これまでお付き合いを控えさせていただいてた、◯十肩(左肩)との交際が始まりました。

今は、先日受診した整形外科で処方された軟膏を左肩に塗りながら、◯十肩の痛みに向き合いつつ、生活習慣を改めてみたい"気持ち"になっているところです。

そんな私に、これから老年期を迎えるのにどうするのか?を教えてくれそうな本、竹中星郎氏の「精神科医がみた老いの不安・抑うつと成熟」を取り上げてみます。

精神科医として高齢者を診察してきた竹中医師による、老年期のリアルとはなんなのか? 考えてみたいと思います。


患者像

本書は以下の8章で構成されています。

はじめに 
【第1章】老年精神科事始め 
【第2章】老年期心性の特異性と不安・抑うつ
【第3章】抑うつの精神医学
【第4章】老年期の妄想盗られ妄想
【第5章】隠喩としての「認知症」
【第6章】脳症状の臨床からみる1 せん妄
【第7章】脳症状の臨床からみる2 生活を通して認知症を考える「認知症」の多様性 
【第8章】老いをいかに生きるか

竹中医師自身のキャリアに始まり、老年期の精神医学について書かれています。老年精神医学の先駆者でありながら、本書では老年精神医学を家庭の医学レベルまで、読みやすい形に落とし込んでいることが特筆すべき点だと思います。

高齢者のうつ、せん妄、認知症の違い?

当たり前かもしれませんがうつ病せん妄認知症は医学の知識がない私でも、多分違う病気とは考えていました。

しかし、自分がその症状を患う or 知り合いがその症状を呈していると疑われるときに、それぞれの病気に応じた対応ができるかと言われたら、疑問符が頭の中いっぱいになるでしょう。

一般に高齢者になると「『認知症』になった」と言われがちですが、実際はうつ病だったことも結構あるようです。うつ病の場合は、治療の基本である休息と"適切"な薬物療法+精神療法が必要です。

また、せん妄と認知症に関しては、素人では判断はまず無理です。しかし、本人が置かれている状態を「臨床的」に、もうちょっとくだけた言い方をすると日々の生活(家族、ケア…)からみていく重要性を説きます。

老いて精神を患うと?

老年期となりますと、人生での経験値が高い状態になります。そこには、これまでの社会における位置付けであったり、加齢に伴う身体的変化であったり、伴侶や仲間との別れであったり…様々な好機と危機の葛折りで構成されています。

葛折りの状態からの精神疾患となると、疾患は除却できても、根本の葛折りから戻す必要が出てくる、場合によっては生き方そのものの否定になりかねないと私は危惧します。

そのような意味でも、老いて、精神を患うというのは全人的な対応になることを改めて感じたところです。

本書の意義

本書は2つの側面から私に問いかけてくれました。

①自分が老いた親などを介護するとき
②自分が老いて他者から介護を受けるとき

①については、多分本書をもう一度読み返して、復習するというのがベターな解答でしょう。

しかし、②については、自分も答えがありません。少なくとも、老年期になってもうつ病とかになるんだという知識は身に付きましたが、自分の身となると複雑です。自分の理想の老いに近づけるのか、未来は予測できませんが、成熟した老人になるには、ある程度の覚悟は必要だと感じました。

本書を遺して

著者の竹中星郎氏は本書の原稿を2019年8月に書き終えた1か月後の2019年9月に食道がんで亡くなります。遺書的な形で本書を遺し、老年精神科医としての人生を終えました。

本書で語られた老年精神医学がどう進化するのか? そして、自分や自分の周りにある老いと向き合うのか? 色々な課題や疑問を投げかけた精神科医だったと思います、合掌。(了)

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