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教員じゃないんですが、大学で働いてます

まえがき -私立大学って、給料高いらしい-

卒業シーズンでの会話

Aさん「卒業おめでとーっ! どこ就職決まったの!?」
私  「ありがとうございます! 私立大学です!」
Aさん「あ、教員? すごい、何研究するの?」
私  「いえ、教員じゃなくて…職員でして」
Aさん「へ? 職員……って何すんの?」

 私は、新卒で私立大学の職員になった。別になりたかったわけじゃない。
ただ、就活生だった私は、ふと疑問を抱いたのだ。そういえば、、、

高校生に対しての大学説明会と
就活生に対しての大学説明会。
どんな違い、あるんだろ?

by 就活生の私

 入試と違い、就活は記念受験をしてもタダ!
ということで、エントリーしてみたことがすべての始まりだった。
 本当に有難いことに、大学を含めた複数社から内定をいただき、そこで初めて大学職員のことを調べた。

さっそく調べてみた

 お? どうやら給料が良いらしい(笑)
そのくせ、定時に帰れるし休みも多い。離職率も低くて中途採用での人気はか~なり高い。新卒でも倍率は100倍を超えているという。
 お、これはもしやかなりコスパ最強な穴場業界かも!ニヤリ😏

 しかもしかも、
①大学は不祥事が起きても一発で倒産するとは思えない。
②いくら少子化とはいえ、18年後の人口がわかっているので中長期的に事業を運営できる。
③それに加え、会計管理も他の企業とは違いそう。
 大抵の場合、先に資金を投下して商品・サービスを作り、それが売れて初めて回収するのがビジネスだ。
 しかし大学の場合、4月の時点で入学金・学費、補助金、寄付金が入ってくるはずなので、1年を通じて切り崩していけば良いだけのはず…!

え、ちょっと待って!笑
 こんなにも倒産しづらい企業、他にある??😂
 食品メーカーに行く気満々だったのだが、急遽大学職員行きを決めた。

こうして、大学職員人生がスタートした…ッ!

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

第1章 ドラマにできるぞ、部活動の舞台裏

青春といえば、やっぱり部活!

大学は恐ろしい……

 「万が一」という言葉がある。
意味は、滅多にないが稀に起きること。
しかし言葉通りに捉えれば、1万人居れば1人に起きることとなる。

私立大学の学生数を調べてみた。
早稲田大学:5万人   慶応大学:3万人
上智大学:1.5万人
関関同立:3万人前後  March:2万~3万人

 実際問題、事故件数は想像以上。
2か月に1~2回はコンスタントに人生を左右する事案が多発しているのだ。
 あれ? そういえば最近、あの子と授業で一緒にならないな、と思った友達が実は…ということが往々にしてある。

 そんな数々の「万が一」をいくつか紹介したい。


後遺症:演劇、チア

 大学は、本当に多種多様な部活・サークルがいっぱいだ。
カフェ巡りサークルから、メジャースポーツまで。ありとあらゆる世界がギュッと詰まっている。
 新歓期間など、話を聞きに行ったり活動の様子を見に行ったりするだけでも、こんな世界があるのかと心弾むものである。

 その中でも一際華やかな、演劇団体やチア団体。
ところが、数々の危険が今か今かと待ち受けているのである……。

〇演劇団体の事故^^^^^^^^^^^^^

演劇団体の舞台裏には・・・

 高校の演劇部なら、ステージ上での表現に重きが置かれる。
 その点大学はステージ自体も自作するし、高い所に登って舞台照明も天井に取り付ける。
 企画から広報まで、幅広く舞台運営に関わる全てを経験できるのは、大学ならではの醍醐味だろう。そうして将来舞台や演劇に携わる人材が生まれていく。

 裏を返せばそれだけ危険に遭遇する可能性も無限大。
舞台照明をつけるには、天井すれすれのキャットウォークから身を乗り出す必要がある。ハーネスとヘルメットを着けて安全対策は何重にも行うが、素人だとやはり怖い。
 そもそもどの大学も、課外活動をする建物は古く、施設的な安全対策も十分に施されているとは言い難い。学生も職員も、プロではないのでどうしても至らない点は出てきてしまうのだ。

 そして起きてしまう、痛ましい事故が。
学生が怪我をしたという通報が入れば全速力で駆けつける。

 通常、学内で事故が起きた場合のフローはこうだ。
まず、友達や周囲の人が近くの教職員に伝える。
すると、警備室・保健室、そして学生生活に関わる部署(学生部と呼ぶことが多い)に連絡が入る。
 保健室と学生部は大至急現場へ急行。
保健室は応急処置。学生部は、学生証などから学生情報を確認したり、保証人に連絡をとったりする。
 警備室に伝達する理由は、救急車。救急車が学内に滞りなく入れるように手配する。

 例えば、キャットウォークからの落下事故。
 大学は4年間で学生がほぼ入れ代わるので、5年前に起きたことを知る人はもういない。だからこそ、同じことが度々起きてしまう。

 他にも、演劇団体は大型ステージの制作には様々な工具を扱う。
 以前、誤って指先を完全に切断してしまうことがあった。骨が見え、血がドバドバ出て止まらないが、他の部員が切断された指を氷で冷やして病院に届けてくれた。
 大学職員は、耳を塞ぎたくなったとしても知る必要がある。そして憔悴しきっている部員たちから当時の状況を詳しく聞き出さなければならない。何が原因で、どうすれば二度と同じことを繰り返さないで済むのか。

 一番簡単なことは、工具の使用を禁止することだ。しかし私はそれは逃げだと思う。
 例えば自分の子どもが怪我をするかもしれない、と言って公園で遊ぶのを禁止するのか? 車に轢かれるかもしれないから外に出さないのか?
 頭ではわかっていても、痛ましい事故を目の当たりにするとどうしても禁止と言いたくなってくる。

 その上、周囲からも実に様々なことを言われるのだ。
・木材の切削で舞う粉塵は、火災報知器の誤作動を誘発する。
・トンカチの音がうるさい。
・落ちていた釘に気付かず、通りがかった学生が怪我をした。

 絶対に、事故を起こすわけにはいかない。
 その上でいかに安全に、いかに最大限の活動の可能性を死守するか。打開策を見つけていくことが大学職員の使命なのだ。

〇チア団体の事故^^^^^^^^^^^^^^

チアならではの安全管理

 チアダンスやチアリーディングなどチアと括るのは憚られるが、チアを競技としたり他団体の応援をしたりとチアをする団体は複数存在する。

 チア特有の危険性としては、盗撮問題。
学園祭や新歓など、近距離で不特定多数の観客を相手にする場合。スカートの中を覗こうとする学内外者が出没する。
 大学内には学外者も自由に出入りできるため、開催を聞きつけた縁もゆかりもない人間も覗きに来ることができるのだ。
 そういう輩は「撮影禁止」とデカデカ示していても意味がない。

 また、チアに限ったことではないが、指導者のパワハラ問題。
特にこの世界は非常に狭いため、指導者にパワーが偏り過ぎる傾向がある。さらには、複数の大学を掛け持ちしている場合もあり、どのチームにおいてもパワハラの危険性を孕んでいる。

 どちらについても、全員女子部員のため実際に起きたとしても声を挙げづらいという実情もある。

 思わず目を背けたくなるのが、身体的な怪我である。
特にチアリーディングは、スタンツやピラミッドなど複数人が重なってパフォーマンスを行う。
 小さな怪我は日常茶飯事で、後遺症が残るほどの大事故にも繋がっていく。
 新しい技に挑戦する際、下でマットを準備していても、思わぬ方向に飛んでしまうのだ。地上数mからドンッとお尻から床に叩きつけられる。尾骨骨折、排泄機能もままならない。登校も自力では困難となる。
 駅近大学の場合、自動車での通学は認めていないので特別措置の対応をする。

 逆に、下で支える人が犠牲になるケースも多い。
なにしろ、上の人を守るためには身を挺してでも自分が支えなければならないのだ。
 下の人が大怪我をした際、上の人が丁寧にケアしてくれればまだマシだ。意外とあるのが、他人事のような対応をするケースもある(正確には、被害者がそう感じてしまうケース)。そうなると怪我をした本人やその保護者は並々ならぬ苛立ちを覚え、その矛先は大学へ向けられる。

 このようなパフォーマンス競技の場合、練習風景を動画で撮影していることがある。当時の状況を把握するには非常に有効であるが、目を背けずにはいられない痛ましい映像である。


死亡:飲み会、山岳団体

 大学の2大役割とは、"教育研究"と"人材輩出"である。
やはり大学職員としての喜びは、学生が課外活動で活躍していたり、卒業生が社会に貢献していたりすること。

 何より胸が苦しくつらいのは、その反対。"学生の死亡"である。
文部科学省が「大学における死亡学生実態調査」を行っている。
この調査では、主に自殺に重きが置かれた報告内容となっている。

 学生時代には全く気付くこともなかったが、学生の自死は毎年必ず起きている。その場合、自死であることを友人には知らせないでほしいと要請してくる保護者も少なくない。
 自死の他には、事故死と病死。他殺については私が知る限りでは起きていない。大学構内での自殺未遂も10年に1、2回は起きている。
 飛び降り自殺を図ろうとしていれば、我々は大至急駆けつけ阻止する。たまたま居合わせた学生から聞いたり、近隣住民が気付いて通報してくれたりする。
 上智大学では実際に起きたことがあるらしい。

〇飲み会の惨劇^^^^^^^^^^^^^^^

大学生の飲み会で・・・

 サークルで度々問題になるのが、飲酒事故。
2023年でも、近畿大学での死亡事故の裁判で同席学生に4200万円の賠償命令が下された。慶応大学のアメフト部での20歳未満("未成年"とは言わない)の飲酒が発覚し、大学が活動自粛の判断を下している。

 大学生活では20歳以上と未満が同席する飲酒機会は多い。その中で、20歳未満の1・2年生が飲酒や救急搬送が後を絶たない。

 どんなに注意喚起しようとも限界があるのがもどかしい。
それもそのはず。自分自身、入学時や説明会で「飲酒は気をつけて」と言われても、またかと思って聞き流していた。。。
 それに、ちゃんと聞いてくれる人には、飲酒事故が起きないのだ。

 夏休みなど遠方に行く合宿は気分も高まり飲酒を誘発しやすい。
特に難しいのは、注意喚起しすぎると、バレるのを恐れてすぐに救急車を呼ばなくなってしまうこと。
 近年はさすがにコールは減ってきているはずだが、それでも飲酒で命を落とす可能性は十分にある。

 その際たる原因が、"気付かれない"こと。

 例えば、嘔吐しきれずに窒息死。
酒の量や強さに関わらず嘔吐をする可能性は十分にある。辺りに吐き散らせば周りの部員も勿論気づく。
 しかし喉に詰まってちゃんと吐き出せなかった場合。誰にも気づかれず顔面蒼白、死に至る。

 もう一つは、意識を失って低体温で死亡する。
自分でトイレに行き、そこで緊張が緩んで倒れる例も数多い。しかも宴会場のそばのトイレには行かず、別の階のトイレに行く人も多い。
 友人たちに吐いている音を聞かれたくないという心理からである。
てっきり部屋に戻ったものだと思われ、翌朝冷え切った状態で発見される。

 親として納得がいかないだろうと思うのは、大学の責任を追及できた事例は非常に稀であること。大学のサークルは自主活動であるため、大学の監督責任がどこまで及ぶかは非常に判断が難しいのである。

 親は子どもを、大学は学生を、部員は仲間を失う。
本来敵ではない三者が、互いに憎しみ合う関係になってしまう悲しい事件だ。

〇山登り団体の事故^^^^^^^^^^^^^^

山に登るのは命がけ

 飲酒事故のように、どんな団体にも起こりうる事故がある。交通事故だ。
合宿や仲間同士での旅行中。もしも運転していた学生が助かり、同乗していた学生が命を失った場合には、、、
 考えただけでもいたたまれない(が実際に起きている)。
 運転免許を取得し、自由な時間や行動範囲が拡大する大学生活で起きやすいのである。

 反対に、死に直結する部活も数多い。
スキューバダイビング、航空部、ヨット部、馬術部、そして山岳部。

 同じ山でも、季節や天候やその日のコンディションによって難易度が大きく左右される。
 バランスを崩して稜線から滑落し、一直線にかなり下まで転落。
事故発生場所は無線が通じずすぐに救助要請を出せない場合も多い。
 団体活動中の場合、まずコーチや仲間に連絡し、続いて警察や大学に連絡が入る。過去には他の登山者が無線を拾ってくれて連絡が通じた事例もあった。

 山頂付近は気流が不安定で、警察のヘリコプターの配備に時間もかかる。
多くの場合、事故の瞬間を仲間が目撃できていない。特に県境だと、どちらの県に落下したのかわからず発見が遅れることもある。
 大学のサークルには、OBOGがコーチとして協力していることも多いため、捜索はOBOG会なども参加して大捜索を行う。

 遺族の意向に最大限寄り添いつつも、なぜ事故が起きたのか。
どこに原因があったのか。どうすべきだったのか。どうやって後輩達に引き継いでいくのか。
 団体は活動停止となるが、果たしていつから活動を再開するのか。はたまた廃部となるのか。

 代表はもちろん、同じパーティーのメンバーの下級生。
関わる全ての学生のメンタルを慎重にケアしていく必要もある。


~~~~~~~~☕coffee Break~~~~~~~~~~~

≪ひと息≫ 意外と多い不法侵入

 第1章では、学生の未来に関わる事故ばかりを紹介した。
軽い気持ちで大学職員になってしまった私には、衝撃の連続である。

 一方で、こんなことも起きるのか!と驚かされる出来事(事件ではない)も多々ある。

〇深夜の不法侵入^^^^^^^^^^^^^^^

夜のキャンパスは静かで良いけれど

だって、星空を見たかったから・・・

by不法侵入者

 職員になったばかりのころ、呆気にとられたのが深夜の不法侵入。
閉門後に学生が塀を乗り越えて大学内に立ち入ってしまうのだ。
これが割と月に1度ペースで頻繁に発生する。

 処分があるというよりは、厳重注意で済まされることがほとんど。
 塀を飛び越える理由は、酔っぱらった勢いで大学に来てみたかったり、キャンパス内で寝っ転がりたかったり、星空を見てみたかったから。

 終電がなくなってしまい行く当てがなくなると朝まで大学で過ごそうと考えるのである。
 しかし深夜も警備員が徘徊しているので捕まって、大学に報告されてしまう(-_-;)

 他にも、キャンパス内でBBQをしていたところを警備員に見つかって中止させられたり、教室でカラオケをしていて追い出されたり。
 実にバラエティ豊かな学生対応が職員の元には舞い込んでくるのだ。

~~~~~~~~☕coffee Break~~~~~~~~~~~

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第2章 走れ、走れ、走れ! ドタバタ入試!

緊張するのは受験生・・・だけじゃない?

人生を左右する1日・・・

 だからこそ、入試にミスが起きてはならない。
責任ある立場にいる教職員は、前日は大学周辺に泊まり込み何が起きても大学に辿りつけるよう万全の対策をとっている。

 それでも入試は何が起こるかわからない。
例えば、2022年の大学共通テスト。東京大学で刺傷事件。
最近は毎年のように取り上げられる替え玉受験やカンニング等の不正行為。
2023年には東京大学で試験時間を1分不足させるというミスも。

 もしかしたら来年の入試では、試験中に大災害が起きるかもしれない。リスニングのスピーカーで音が出ないかもしれない。誰かの携帯が鳴ってしまうかもしれない。

 大学に集う全ての人の心臓がバクバクしている空間。
それが入試なのである……。


ドッキドキ! 明日は入試!

帰りたくないのが入試前日!

 試験問題は、複数人の目で何度も何度も見直している。それでも見落としているミスがあるかもしれない。
 もしかしたら、試験場の机に貼ってある受験番号が間違っているかもしれない。
 教室に貼っている掲示がすり替わっているかもしれない。
どんなにチェックをしても不安で帰れない。それが入試前日。

〇迷宮! 誘導経路地獄^^^^^^^^^^^^^

本当に大変なのが受験者の誘導💦

 入試は当日の朝が本当に忙しい。
一番最初のミッション:試験開始時間を絶対に死守すること!!!

 そのためには最寄駅〜大学までをいかにスムーズに誘導できるかが鍵となる。
なにしろ、開始時刻目掛けて1万人弱の受験者が一斉に降り立つのだ。
 信号・踏切や、入構時の検問などで手古摺れば、改札前まで受験者が埋め尽くす。
 そうなれば最後、受験者の入構が終わらずに試験時間を遅らせるほかない。

 そこで重要なのが、駅〜大学のルート選び。
例えば、車通りの多い交差点をなるべく避けたり、信号が最も少ないルートを探ったり。
 しかし道中には、去年と違い工事や運送業などの大型トラックが停車する建物ができているかも。即座に交渉へ。

○月△日の×時〜□時にトラックを停めるのを控えていただけませんか?

by 大学職員の私

 先方も仕事なので、協力してくれることは非常に稀なのだ……😓

 警察には道路使用許可を申請するが、その際に信号の長さを調整してもらったり、交通誘導のご協力を賜ったりもする。

 ・・・でももし当日雨が降ったら?
傘の分だけ列が間伸びする。建物に入る時には、傘を畳むために確実に渋滞が発生する。

 ・・・雨ではなく雪が降ったら? 積もったら?
受験者が転ばないように早朝に雪かきをしなければならない。
雪かきできるマンパワーには限りがあるので、誘導経路を絞らなければならない。2月に雪が降らない方が珍しいのだ。

 ちなみに複数駅の中間に位置する大学もある。そのような大学は、むしろ下手に誘導しない方がスムーズに入構を促すこともできる。

〇迷惑! 近隣クレーム地獄^^^^^^^^^^^

駅から続く長蛇の列

 一万人弱の受験者がずらっと大学へと続く。続くったら続く。
その道中にある店舗からはクレームが入る。
「おい、受験者が邪魔で客が入れないじゃないかッ!!」

 確かに、確かにその通りなのだ。とても客が入れるような状況じゃない。
……だから事前に菓子折り持って挨拶に言っているのだ。

 店舗だけじゃない。
こっちが入試中でバタバタしているのはお構いなしに近隣住民からもクレームが入る。
「ちょっと! 道占領されて全然歩けないんだけどッ!?」

 おっしゃる通りだ。この時間にこの道で駅に向かうのは難易度MAX、茨の道だ。
……だから事前に看板も設置してご協力賜っているのだ。

 試験終了時刻が近づけば、迎えにきた保護者が道に溢れ、路上駐車が蔓延する。注意はするが、地方から受験に来ていれば親も迎えにくるだろう。

 ちなみに大学によっては、学外の誘導を警備会社に委託しているところもあれば、職員がおこなっているところもある。また、在学生にバイトで依頼している大学もある。
 しかし、在学生の誘導の場合、追加で悲惨なことがある。
通行人から「邪魔だ! どけ!」と罵声を浴びせられたり、肘でど突かれたり足で蹴られたり。学生が怪我をすることもある。
 警備員相手だとここまで明らかな行為はしてこないのに…。

 だけど、やっぱり地域の方達には理解もしてほしい。
高校生にとっては、一世一代の1日なのだ。
せめて、せめて今日くらいは。応援の眼差しを向けてはもらえませんか??


⚠️緊急事態発生⚠️ 入試当日!

入試当日もドタバタは終わらない!

 少しでも当日のドタバタやクレームを減らすべく、前々からさまざまな準備をしている。
 それでも当日は実に豊富なイレギュラーが発生する。

受験票や筆記用具を忘れた、というものから、
・試験中に嘔吐した
・昨日大怪我をしたので急遽松葉杖
・トイレが詰まって溢れている etc…

他の受験者や教室へのクレームも多い。
・貧乏ゆすりで机が揺れる
・鼻を啜る音がうるさい
・大講義室で床に傾斜がついていて気持ち悪い

 公平性の観点から、対応可否を短時間で慎重に吟味し、受験者の不安を一つ一つ取り除いていくしかない。

〇走れ! 電車が遅延!?^^^^^^^^^^^^

JRが一斉に遅延した!!

 走るのは受験者ではなく、我々職員だ(笑)
特に主要な路線が遅延した場合、通常の試験時間で開始することを諦める。
 その時は、全キャンパス共通で試験開始時間を1時間遅らせるのだ。

 遅延した人には優しいけれど、遅延してでも間に合う時間に来た人には不憫だ。そんな時、Twitterで「○○大学」と調べると受験者からの称賛や恨み辛みが大量に呟かれている。

 試験時間が変更になる場合、全ての試験場に新たな試験時間を掲示する必要がある。そのため、急いで必要部数の時間割を印刷し、全ての試験場へ走って貼りに行く。
 絶対にミスしてならないのが、試験会場。

 受験科目によっては(例えば理系)、他と試験時間が異なる場合がある。
また、特別措置をとる受験者もいる。
 例えば、目が不自由な場合は試験時間を長くする配慮もあるのだ。
もしくは、急な体調不良などで新たに試験会場を設置した場合にはその部屋を忘れてはならない。

〇走れ! 問題ミス発覚!?^^^^^^^^^^^

問題訂正が発生した!!

 もう一つ、複数の試験会場に対して迅速に周知しなければならない緊急事態。それは、問題ミス。
 試験中に受験者からの指摘で気付くこともある。

 この場合、大至急訂正箇所と内容を該当試験場に伝達する必要がある。
絶対に気をつけなければならないのが、違う科目の試験場に伝達してしまうこと(日本史のミスを世界史の試験場に伝達するなど)。

 試験時間の変更と同様、特別室や試験場を変更した受験者がいる場合には必ずそちらも赴かなくてはならない。

 仮に、1教科でのみ発生するのであれば対応は可能だが、複数教科で同時に発覚した場合には大混乱。
 スタッフは、構内を一目散に駆け出していくのだ。

~~~~~~~~☕coffee Break~~~~~~~~~~~

≪ひと息≫ こんなクレームもらってます

 第2章では、あまり考える機会のない入試の舞台裏を紹介した。
とはいえ、近隣からのクレームは、入試に限らず日常茶飯事だ。

一番多いのが、通行マナー。
・横並びが酷く全然歩けない。
・大きな鞄が娘の頭に当たった。
・タバコのポイ捨てでスカートが焦げた。

 実際、どの大学でも通行マナーの苦情は切っても切れない課題である。
 そもそも元気な若者が街に出て大人しいはずもない。

 連絡してくる相手は固定化されている。ぜひいつか、聞いてみたい。
そもそも、それは本当に本学の学生ですか??
あなたが20歳前後の時は、同じことしていませんでしたか??
そもそも大学がある場所に後から引っ越してきたのはオタクでは??
 ・・・うん、絶対聞くことはない(笑)

意外と多いのが、親からの内部告発。
・20歳未満のうちの子が、サークルで飲酒して帰ってきた。

 前述した通り、サークル運営として非常に由々しき問題である。
しかし、自分の子どもが法律違反したと大学に伝えて本当に良いのだろうか?
 まずは、家庭内で教育を見直すべきでは?
…と、思わないこともない。

~~~~~~~~☕coffee Break~~~~~~~~~~~

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

あとがき -ふらっと遊びに-

《まえがきの続き》
Aさん 「へ? 大学の職員……何すんの?」
私   「学生と一緒に学園祭作ったりするんです!」
Aさん 「へぇ〜! なんか楽しそう笑」
現在の私「すっっごく楽しいですよっ!!!

 今回は全体的にネガティブなことばかりを取り上げたが、実際は楽しい仕事ばかりだ。
 ここに挙げたことを「万が一」とするならば、楽しいことは残りの「万が9999」。

 例えば学園祭の運営。
こんなことをやりたい!と熱意溢れる学生達と学園祭を作り上げる。

 営業先だって、企業ではなく高校や塾になる。
高校生に対して、ウチを受験してくださいと説明をしにいく。

 大学を目指す人、大学に通ったことのある人、近くに大学がある人。
一度どこでも良いのでキャンパスに足を運んでみてほしい。
まるで公園のような空間が広がっていて、季節によって景色も変わる。

 学生は大人になる場所。
だけどきっと大人も、学生時代に戻れる場所。それが大学。
そんなところで私は働いています。


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