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【詩】無くす


都市のなかで、ぼくは無くす、を発見する、冷房に揺れる、丸まる、レシート、誰も使わない、緑色の、公衆電話、荷物は、軽くなった、未来は、健全に分からないものになった、明日は、今日の地続きではないことを知った、のどが渇いていたことに、ずいぶん歩き回ってから気づいた、辺境に降る雨は、違う世界につながっているだろうか、きみはぼくに無いものをかつて持っていて、もう失くしてしまった、(失くして、ありがとう、無くして、さよなら)都市は膨張し、失望は増えていく、断熱コートが、ひとの視線を遮る、ぼくを無くし、ぼくが溢れる、ここにあって、無いもの、を投射する、ぼく以外の、ひとが、街をつくっている、動いている、置いてけぼりのようで、船の先端のようで、ひとりぼっちの暗がりを、ぼくは掘り続けている。





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