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【本】世界各国の夫婦別姓をめぐる話が面白すぎた

『夫婦別姓ー家族と多様性の各国事情』という新刊を読了!!

この問題、わたしは日本の外に出てから興味を持っているので、めちゃくちゃ楽しく読めました。推します!!

夫婦別姓というよりは、姓を通して夫婦や家族のあるべき形や、世界が女性をどう扱ってきたかなどが歴史的な背景から現代に至るまで、姓にまわつる全てが網羅されています。かなり濃いです。

婚姻後の同一姓を法で縛るのは日本だけ

日本では結婚と同時に、家族が同一の姓を強いられます。つまり、どちらかが必ず変えなければいけません。日本の中しか知らなければ、結婚して姓が変わるのはあたりまえと思っている人も多いのかもしれませんが、法で家族が同姓でなければいけないことを縛っているのは、実は日本だけってご存知ですか?

日本では選択的夫婦別姓の議論が始まってから30年も経つのにまだ答えがでないままです。中国や韓国の婚姻と姓にまつわる歴史がこれまた興味深かったのですが、結果として、日本よりも早く改革が進んでしまい「実は日本だけ」になっているわけです。

この問題ひとつをとっても、時代に合わせ、生きやすい社会に変えていくことが下手な国が日本だということもよくわかり、こういう歩みの遅さが、経済の衰退や国家としての衰退ぶりに繋がっているようにも思えます。

昭和、平成、令和と時代は変わっても昭和のまま?

昭和の時代は結婚適齢期なるものを表すのによく“クリスマスケーキ”と言われました。25歳を過ぎてしまうと価値がないと言うような意味でしたから、二十代が後半になると晩婚とさえ言われたわけですから、当時の女性がキャリアを積むことは難しい時代でした。

わたしが自分が生まれたときの姓を捨ててから、かれこれ40年近くになります。21歳で入籍したため旧姓で過ごした時間の倍の年数を婚姻後の夫の姓で生きています。結婚を機に仕事もやめたので、旧姓に執着する理由も特にありませんでした。姓が変わることで結婚を世に知らしめることができてうれしかったぐらいです。

今ほどグローバルな時代ではなかったこと、家父長制度が社会の価値観として生き残っていたことも背景にあったので、なぜ女性だけが姓を変える不便を強いられるのかといった発想や疑問をもったこともありませんでした。男尊女卑的な社会をあたりまえと思い込んでいたわけです。

しかし、時代は変わりましたよね。

米国で暮す我が家の場合

米国では婚姻後の姓は自身で選ぶことができます。出生姓の維持、どちらかの姓による同姓、別姓、連結姓、合成姓、創作姓でも大丈夫ですが、日本同様、妻が夫の姓にすることが多いようです。旧姓をミドルネームに残す人もいます。

娘は米国人男性と結婚していますが出生姓を維持し、日本名のままですから、米国人と結婚していることは名前からはわかりません。運転免許証やパスポートなどのIDも日本名のままです。アパレル業界でテキスタイルデザイナーとしてのキャリアを積み上げていたので、姓を変える気はなかったようです。

何でも検索するネット時代ですから、積み上げたキャリアの姓の変更は不利益に繋がります。米国の場合、培ったキャリアとともに常により良い条件の仕事にステップアップしていくことも多いので、日本のように法律で姓の変更を強いられてはたまったものではありません。そんな娘を見ているので、日本でも「選択的夫婦別姓」は早く進むといいなと思います。

一方、長男と次男は米国人女性と結婚。こちらの二人は、教職と事務職だったこともあり、姓を変えることでの不利益はそれほどなかったのでしょう。結婚と同時に自分の意思で息子たちの姓に変えました。ファーストネームは典型的米国人の名ですが、姓はわたしと同じ姓となりました。

米国人の義ムスメと同姓になったことは、母としてちょっぴりうれしかったのですが、日本の姓で米国で暮すのは、何かとやっかいなことも多いので、変えないほうが楽だったのにとも思っています。

そもそも米国人には覚えにくいし、スペルは間違われ、発音しにくい……などで子どもたちがなにかで表彰されたときにも表彰状の名が違っていたり、ちゃんと呼んでもらえなかったりってことが多々ありましたから、「これからはいろいろ面倒くさいことになるよ」って笑ったものです。

それでも、近い将来、息子たち夫婦に子どもが生まれれば、米国に暮らしながらもうちの姓を受け継いでいくことになるならそれはうれしいことです。

そんな我家の話はさておき、本に戻ります。

今回、この本を読んで世界の姓にまつわる歴史や現況がものすごくよくわかりました。また、姓名にまつわる捉え方や扱い方、宗教的な背景、伝統などなどお国柄が出ているのもほんとにおもしろいのです。

日本では、法により同一姓で縛られているというに、英国では姓名が自由に選べるどころか、オンラインで変えられるというのだから驚きです。酔った勢いでセリーヌ・ディオンに変えてしまった男性がいるというエピソードにはぶっとびました。選択的夫婦別姓が30年議論しても答えが出せない日本と、酔ってオンラインで変えられる国もあるって、このギャップすごくないですか?

ベルギーでは婚姻はあくまで婚姻であり、お互いの姓名にはなんら関係なく、生まれてから死ぬまで同じだそうです。ただし、子どもと家族であることを証明することがやっかいといった、便利や不便も各国の事情から知ることができました。

姓名の歴史からどの国もそれぞれのレベルで男尊女卑社会と戦い、少しずつ少しずつ、誰もが人として生きやすい社会に変えようと、ジェンダー平等を勝ち取ってきたことがわかります。読めば読むほど、停滞したままの日本が残念に思えます。

日本のジェンダーギャップ指数は、156カ国中120位(世界経済フォーラムネ2021)です。諸外国に比べるとまだまだ女性が生きやすい社会とはとうてい言えません。戸籍の存在により、とうの昔になくなっている家父長制度も、基本的な価値観として残っています。

昭和の時代にはよく「後継ぎを生みなさい」なんて言われたものですが、今や子どもが生まれないのですから、かつての家族形態にとらわれることなく少しでも困る人が減るように、法修正を加速させてほしいと思います。

さて、これからどう進んでいくのか興味深いところです。

この本かなり話題になっているので、津田大介さんのポリタスTVでも取り上げられていましたので貼っておきます。


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