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ショートシュート

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2023年6月の記事一覧

ケムタの憂い

ケムタの憂い

毛虫のケムタが卵から孵化したのは、葉っぱの上だった。
生まれた頃は、たくさんの兄弟と葉っぱを一緒に食べていた。
しかし、兄弟たちは好む葉っぱが違うみたいで、
それぞれ、違う道を歩みだし、みんなバラバラになっていった。
ケムタは親の顔を知らない。
お父さんもお母さんも、ケムタが生まれた時には居なかった。
ケムタの友達は、葉っぱの様な緑色である。
葉っぱと同じ色にするのは、外敵に襲われない様にする為ら

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歌詞に秘められた思い

歌詞に秘められた思い

歌詞は短い文章の中に物語りや、自分の想いを伝えている。
素晴らしいと想いました。

小田和正さんの「たしかなこと」の歌詞の意味を考えながら聴きました。

私は、歌が好きで良くカラオケに行くのですが、歌詞を以前はあまり考える事なく歌っていたのですが、小説を書き出してからは、
注意深く歌詞を読む機会が増えました。

「たしかこと」と言う題名であるのに、歌詞の中にその言葉は、
出てきません。
注意深く歌

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奇跡なんて起こらない⁉️(600字の小説)

奇跡なんて起こらない⁉️(600字の小説)

毎日の様に僕は、一人で部屋にいる。
外に出る事は無い。
でも、僕は精神異常者では無い。

「いつまで寝てるの?もう朝よ!早く起きないとダメでしょ」
と私を呼ぶ声は、父の後妻の声だ。
後妻は僕の事を何も知らない。

父は、今度で三人目の妻をめとる。
先の二人は不幸な事に父を残して先だった。

父と僕は血の繋がりの無い関係だ。
僕が幼児の頃、ある孤児院から養子縁組で父の子供となった。

父は僕のことを

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偶然の出会い(1200字)

偶然の出会い(1200字)

私が、彼女と出会ったのは駅の出入り口だった。
突然の雨に傘も無く困っていた私に、そっと傘を差し出してくれた。
その可愛げな瞳。
清楚な出立ち。
私は一目みた時から彼女の虜になってしまった。
彼女は、「迎えが来るので、この傘を差し上げます」
と言う。

私は傘を頂いた喜びよりも、彼女の行き先が気になった。

「どちらにお帰りですか?」
と聞くと私に、彼女は明確には場所を言わない。
これ以上を聞くと失

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