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ほんの一センチメートルだけ愛していてください



お誕生日おめでとう。
そう伝えたくて、久しぶりにどうしても会いたくて、仕事で色んなことがあって聞いてほしくて、7月ぶりに彼に会った。


3ヶ月ぶりだとは思えないくらい、会話も弾んで、あなたは変わらずわたしの話をうんうん聞いて。
仕事の話がとまらなかった。あれもこれも、聞いてくれて。お酒もすすんだ。

話の流れでわたしの生い立ちの話になって、人に話したことがないことも話した。
あなたが間違いなく、わたしのことを人間的にすごく好きなことや、特別浮気性ではないこと、そんなことよくよく理解してる。
そしてなぜか、わたしもあなたがずっとわたしのことを人として好きなんじゃないかって、変な自信があって、それも当たってた。

人に対して興味の有無が激しくわかれるあなただから、そんなあなたがわたしを好きになってくれたこと、感謝しなくちゃいけないのかもしれない。
でもね、でも、わたしの立場って辛いんだよ、そうはじめて本音を伝えた。あなたにとって二番目だってこともよく理解してるよ、って。
あなたは否定も肯定もしなかった。
それがあなたらしくて、そしてあなたがはじめてわたしに「りんちゃんの立場だと辛いよね」と一言言ったこと聞き逃さなかった。


21時に閉店で追い出されて酔いを覚ますために一駅歩いた。コンビニでコーヒーを買って一緒に飲んだ。あなたはコーヒーの蓋がない方が飲みやすいことを知った。まだまだ知らないことがたくさんあるね。


いつもならご飯もわたしの好きなものを頼んでそれを食べてたけど、あなたが食べたいものを頼んでくれたことや、あなたの人生の一欠片を、わたしがずっと聞きたかったことを、聞けて嬉しかったの。話してくれてありがとう。

ちょっと酔ってたことと、本当にここ1ヶ月色んなことで仕事がしんどかったこと、あなたが変わらず優しくニコニコ話を聞いてくれたこと、あなたが変わらず優しすぎたこと、それら全てが重なって少し泣いてしまった。
めんどくさい女の子にはなりたくなかったのに。
でも、めんどくさがることも困ることもなく、泣かないでってそう優しく背中をさすってくれたから思わずもたれかかってしまった。


わたしは誰かに優しくされることに慣れてない。
でも、あなたなら許してくれることを知ってた。
しんどかった。辛かった。誰かに甘えたかった。最近は特に眠れない夜が多すぎた。寝付けない夜を、何度も中途覚醒しながら朝まで過ごす夜を泳ぎながら、一瞬でも心を許して甘えていい場所が欲しいと願った。


あなたの人生を少しくれたら、わたしの愛を全部あげるのに。そうしたかった。できないことをわかっていても。



わたしのことを誰より分かってくれて、気がついてくれて、見つけてくれて、優しくしてくれて、忘れないでいてくれて、知ってくれて、認めてくれて、一瞬でも好きになってくれて本当にありがとう。


いつか、手を引いたわたしのことも忘れていいから、ほんの一センチメートルだけ愛していてください。
永遠のない世界で、わたしがあなたを好きでいることを許してもらえたらいいな。


そう書き綴った手紙を渡した。
物を集めることが嫌いなあなただから、いらなかったら捨てられる、でもわたしの気持ちが少しでも届くように手紙にしたの。
すごく嬉しい、ありがとうと言ってくれたし、そこに嘘はないことは十分すぎるほど分かった。


本当に親友だったら良かったのに。
なんでも話せて、背中を押してくれる親友なら良かったのに。
異性である以上、言い聞かせても心は嘘をつけない。


もう少し。
昇格したら、わたしはそれ以上今の仕事で求めることがない。だから転職しようかと最近本気で考えている。そのタイミングで全てを変えてしまおうか、と。物理的距離が必要なんだと思う。



そしたらもう二度とあなたの前に姿を現さないと、そう約束するから。



だから、もう少しだけ、楽しく飲めておしゃべりできる関係でいてね。





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