見出し画像

台湾初の女性大統領のキャリアとは。『蔡英文自伝』


台湾で初めて女性として総統(大統領)となった蔡英文の自伝。日本での出版は彼女が大統領になった後ですが、台湾でこの本が出版されたのは、大統領になる少し前。なので、大統領になった後や、なる過程の話は残念ながら出てきません。

でも、彼女が内気な少女時代から、家族の提案で台湾トップの大学の法学部に進んだ学生時代。さらにはアメリカで修士課程を学び、イギリスに留学して博士号をとるために猛勉強の時代の話は、とってもおもしろく読めました。すごいスーパーキャリアウーマンです。

彼女は帰国後、大学の教授になって、通訳や政府の官僚としても各国を飛び回り、やがて政治の世界に入っていきます。役人として、依頼されたことを引き受け、できることを自分なりに誠実にこなそうとしている過程で、有能な人として評価されていきます。もちろん、いろいろ失敗もするのですが、それでも学んでいく姿勢はとても共感がもてます。

細かい部分で面白いのは、やっぱり台湾っぽいところ。中国との直接交流が始まるときに、政府の予定が優先されるか、媽祖のお告げが優先されるかなんて、日本なら議題にもならないことだけど、台湾の議会だとそれが重要議題になっちゃうのがおもしろいです。

あとは、さりげなく国民党の重鎮・王金平が出てきたりして、そのあたりもひまわり運動のあたりを考えると興味深かったです。もっと台湾政治に詳しいと、彼女が自伝に書いていないことがよくわかると思うので、何を話し、何を話さなかったのかがわかると、この本の出版時期とあわせて、もっと気の利いた感想がかけるのですが、私の手にあまるのが残念。

自分の仕事に役立つなと思ったのは、彼女の演説が最初の頃、あまり盛り上がらなかったときの話。ある舞台監督は、彼女にこうアドバイスしたそうです。「いい俳優は、観客の反応が盛り上がっていても盛り上がらなくても、淡々と自分の演技をする」。蔡英文はそれを見習うことにしたというので、私もそれに習いたいと思います。


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?