わすれられた台湾詩人たち。ドキュメンタリー映画『日曜日の散歩者 』台湾、2017年。
日清戦争で日本が勝って、領有した台湾。この映画の舞台は、日本の植民地時代が40年近く続いた頃の台南です。今だと、台湾の中心は台北ですが、日本が植民地にするまで、南の台南のほうが文化的だったようで、ここを中心に日本語で創作し、新しい台湾文学を創りだそうとする若い詩人たちが出てきます。
彼らは、モダニズム詩人の団体、「風車詩社」をつくります。日本語で教育を受け、日本留学をしたエリートたち。西欧の近代的なものを、日本経由で受け取った世代です。
日本近代詩の先駆者で、世界的評価を得ているモダニスト西脇順三郎や瀧口修造、そのほかたくさんの日本文学者たちから刺激を受けて、ジャン・コクトーなんかの西洋モダニズム文学にふれ、若きシュルレアリストたちの情熱が育まれていったそうです。
すみません、このあたり若い台湾青年たちの熱狂具合はわかるのですが、詩にさっぱりくわしくない私は、どこまで理解できたかちょっと不安です。ただ、日中戦争が始まって、彼らの生活がだんだん苦しくなっていくのはわかります。
日本が戦争に負けると、日本語で新しい台湾文学を生み出そうとした青年詩人たちは、中国大陸からやってきた中華民国政府の弾圧の犠牲になっていきます。二二八事件、白色テロ。そして、日本語も禁じられます。日本の植民地支配と、その後の中国政府の弾圧。この映画は、自由に創作活動ができない中で、試行錯誤して、歴史の中に埋もれていった詩人たちの物語です。
台湾の映画は、大雑把にいってテンポのいいコメディと、淡々としたドキュメンタリータッチの映画に分けられますが、この映画は後者です。2時間半の長丁場と、圧倒的な映像美、そして70年以上前の実際の資料映像のおもしろさを楽しめる人にはおすすめです。
邦題:日曜日の散歩者 わすれられた台湾詩人(原題:日曜日式散歩)
監督:黄亜歴(ホアン・ヤーリー)
制作:台湾(2017年)162分