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人生、やり切った感ありすぎ。『まるごとインドな男と結婚したら』鈴木成子


タイトルからすると、今風の若くて強い女性が、インド人の彼と結婚してドタバタ、でもほんわかな『中国嫁』のインド版みたいなのを想像してたら、全然違いました。かなりハードモードです。

著者の鈴木さんは私より20歳以上年上。海外旅行が手軽になる以前に青春を迎えたはず。それなのに、旅行先で知り合ったインド人の彼と一年後に結婚。旦那さんは就職しておらず、鈴木さんは英語しかできない。でも、すぐに子供ができて、生活に困るようになって、鈴木さんは子連れで日本帰国。そして、だんなさんがインドからやってきます。

普通はここから、だんなさんと日本で二人三脚する話だと思うじゃないですか。でも、実はそこからもすごい。鈴木さんはしばらくしてまたインドへ戻り、何回も引っ越しをくり返し、だんなさんのしごとがうまくいかないのを支え、子育てにがんばります。

そのおかげで鈴木さんの仕事はうまく行きだしますが、今度はだんなさんがいじけだす始末。鈴木さんは彼の仕事を応援しますが、結局失敗してしまいます。

鈴木さんは、インドの都会から、田舎へ引っ越すはめになり、また苦労。とうとう40代になって、だんなさんに見切りをつけて、日本に戻ります。実母の世話をしながら日本で仕事をして、なのにインドに仕送りまでするし、時間をみつけてインドに帰り、家族の時間を作ったりもします。

鈴木さんのお母さんが亡くなると、鈴木さんはまたインドに戻ります。夫と田舎で落ち着いた生活をしようとしたのに、夫は都会で自分の夢を追おうとします。結局、だんなさんはまた失敗。

鈴木さんは息子が成人するのを待って、日本に戻ります。だんなさんとは別れるつもりで。その後、息子さんが念願の仕事に就職でき、順調にキャリアアップしたので、鈴木さんはインドに戻ります。

鈴木さんの人生。もう、ちょっとやそっとじゃ語れない人生のはずなのに、この本では個人的な感情や家族の話は必要最低限。鈴木さんが語るのは、インドの風景、人々、暮らし。淡々と、でも、興味深く語ってくれるんです。もう続きが気になって気になって、読みだしたら途中でやめられない本です。

私はこの本を結婚直後に読みました。おかげで、夫婦は結局他人ということを実感できたし、だからこそ結婚というチャレンジのしがいもあることがよくわかりました。

この本は、仕事や人間関係で困ったときに読むのがオススメ。自分の些細な苦労なんかどうでもよくなるし、人生もなんとかなると思えます。興味ある方はぜひ。





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