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ヒット作はあたり前だけどおもしろい。『チーム・バチスタの栄光』海堂尊


東京から実家まで、新幹線+在来線で約3時間。当時は電子書籍がなかったので、駅の本屋で気になっていた本を購入。どの書店でも山積みだっただけの理由はありますね。期待通り、もう新幹線に乗っていることさえ忘れ、乗り継ぎの短い時間も面倒で、ずっと読み続けていたいほどでした。3時間があっという間に過ぎて、スリリングで楽しかったです。

物語の舞台は、架空の東城大学医学部付属病院。アメリカの心臓専門病院から心臓移植の権威、桐生恭一を招き、彼の外科チームは通称“チーム・バチスタ”として100%の成功を誇っていた。ところが、3度立て続けに術中死が発生。原因不明の死と、メディアの注目を集める手術が重なる事態に、高階病院長は、神経内科教室の万年講師で、不定愁訴外来責任者・田口公平に内部調査を依頼する。

こんな、ありえない設定から始まるんですが、病院内の人間関係や手術のディテールが本当におもしろくて、さすがお医者さんが書いた小説。第4回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作ということですが、やっぱり普通の小説家さんが取材して書いたものとは違うんですよね、空気感が。

わたしも学生時代に某大学附属の研究所でアルバイトをしたことがあるので、あの当時の病院の雰囲気を懐かしく思い出しました。若いお医者さんたちより、実は現場の婦長さんや看護婦さんたちが現場をしきっている感じとか、お医者さんたちの学生時代からのお付き合いの感じとか。性格はかなりひどくても、手術は絶対上手なお医者さんとか。

なにより魅力的なのは、白鳥というキャラクターですね。著者がどうやって、彼みたいなキャラを生み出したのか興味があります。普通の医療小説では厚労省の官僚なんて、悪役でしかないですから。なのに、田口医師とコンビを組ませて、魅力的なバディものにするなんて。

その後、『チーム・バチスタの栄光』は映画化、ドラマ化。ストーリー説明もいらないほど有名になりました。それが当然と思えるほどのおもしろさで、著者のデビュー作。すごいです。私はその後、彼の本が出るたびに全部読破しましたし、夫や娘にもすすめました。2人にも、ものすごくよろこばれましたっけ。


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