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年齢と性別

よく犯罪の報道やトラブルの描写などで年齢(年代)と性別が付されることがある。おそらくこのことには、まったく理由がないわけではない。例えば、年齢や性別を入れることによって、どのような服装だったり見た目の印象だったりするか、社会的なコードが限定できるという理由もあるだろう。また、たまたま事件のそばにいた人たちが自分の友人や肉親が該当しないかどうか確認しやすいこともあるのだろう。加えて、統計的なデータが見た目による年齢と性別のカウントに偏っているため、年齢や性別は相対的に使いやすい指標となっているのだろう。

とはいうものの、報道や公表する情報において匿名個人の年齢や性別を入れるのには慎重になるべきだ。なぜならば、年代や性別のステレオタイプが強化されるからであり、自分とは異なる年代や性別であるとわかることによって共感が失われてしまうからである。言い換えれば、トラブルを起こしてしまった人、被害に合った人について「明日は我が身」と思えなくなるからである。

とはいえ、飽くまでこれは公表するかどうかのレベルの話である。というのも、既存のデータベースが年齢と性別で構築されてしまっている以上、それを全く無効になるような仕方でやるのは治安対策として、あるいは全体の利益として得策ではないだろうから。また、年齢や性別以外にも個人を特定はしないが限定するような持ち物や風貌の特徴はあるのだから、公表する際にはそのような特徴によって読者が自分の身内であるかどうかを推定できるようにすべきである。

もちろん、一定の妥協は必要だろう。というのも、例えばそのような持ち物や特徴が新しいステレオタイプを形成し得ることもあるし、実務では年齢と性別というわかりやすい指標にまず注目する習慣になっていて他の情報がかえって印象や記憶記録に残らなかったり、特定の特徴にだけ毎回注目するという担当者のクセが出てしまう可能性もあるからだ。それでも、最初に速報として公表する段階では、例えば「或る飲食店で客が暴力行為を働いた」と書くに留めておき、最初から「女性客(30代前半)が暴力行為を働いた」と書く必要があるかどうかは本当にそうしなければならないかどうかを検討してからにすべきだろう。

したがって、少なくとも公表の段階、それも第一報という最も耳目を集める段階では、単に前例主義で不必要かもしれないのに無原則に年齢性別の情報を入れて発表することは回避すべきである。

(1,011字、2024.03.26)

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