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小説&ブックレポート

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小説: 高校の文芸部に所属していた頃に書いた小説を「供養」しました。 ブックレポート: 読んだ本の紹介や書評、感想を書きます。
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2018年12月の記事一覧

「安楽死で死なせて下さい」読書感想文

「安楽死で死なせて下さい」読書感想文

2018/2/2 はてなブログ自記事より

こんにちは。あすぺるがーるです。

連日の寒波により、今日もまた雪が降っているようですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。

母に頼まれたお使いのあと、浮かない気持ちを晴らそうと本屋を散策していた私の目に、こんな本が飛び込んできました。

元々安楽死については興味があったものの、なかなか安楽死について知ったり話したりする機会がなかったので、これを機にと

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「母からの解放」読書感想文

「母からの解放」読書感想文

こんにちは。あすぺるがーるです。

今日は、信田さよ子さんの「母からの解放」という本を紹介します。

今の私のように、母親の存在に悩まされている方(特に女の方)必見の一冊です!

豊富な毒母被害の例この本では、多種多様な毒母からの被害の例が載っています。

・母親に汚らわしいものを見る目で見られた
・健康に悪いしきたりを強制された
・父のDVから母を庇おうとしたら貶された
・あからさまに病んで

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【小説】海の涙 8

【小説】海の涙 8

「男の子がいたぞ!」

低い男の怒鳴り声で、二人は目を覚ました。

海音はひどくおびえたような顔で遥希を見ていた。

「どこだ!」

「あそこだ! あの大きな木の下だ!」

「あの子、悪霊に取り憑かれたんだって?」

「ああ。一人で一日中、ずーっとしゃべり続けてるらしい。昨日の夜中なんて、浜辺でずっとガラクタ集めてたそうだ」

「ひゃぁー、怖い!」

「ああ恐ろしい恐ろしい。くわばらくわばら…」

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【小説】海の涙 7

【小説】海の涙 7

海音が眠った後も、遥希は眠れなかった。

海音の言葉が胸に引っかかっていた。

「もっと早く聞いてもらえればよかったのに…」

海音はいったい、何を聞いてほしかったんだろう。

その、聞いてもらえなかったことで、今もずっと苦しんでいるのだろうか。

そして俺は、海音に何ができるのか。

海音…

遥希は海音の方を見た。

海音の寝顔には、安らかな微笑みが浮かんでいた。

ふと気が付くと、遥希は貝殻

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【小説】海の涙 6

【小説】海の涙 6

その夜のこと。

「あのね、俺がなんでここに来たかってこと、まだ話してなかったね」

海音は頷く。

「実は、俺が海音に初めて会った日、俺は家出してきたんだ」

「家出!?」

「ああ。親に『勉強しろ!』って言われるのが嫌になって」

「遥希も言われるんだね、勉強しろって」

「海音にも、そんな経験ある?」

「うん…」

相槌を打つ海音は、どこか悲しそうだった。

「俺、正直言って、

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【小説】海の涙 5

ある日、遥希が公園のトイレから戻ってくると、海音が歌っていた。

フルートのような、のびやかな美しい声で。



遥希はこの歌を知っていた。



合唱コンクールで歌った曲。



とても美しいあの曲。



その名前を思い出す前に、遥希は歌の続きを口ずさんでいた。
 

そのメロディーは、浜に打ち付ける波の音と見事に調和していた。



波の音…


波?… 海… 



ああ、「君とみた海」
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【小説】海の涙 4

【小説】海の涙 4

しばらくして、少女が遥希に話しかけてきた。

「私、澄水海音。あなたは?」

「お、俺、二宮遥希」

そこから、二人は何日にもわたって様々なことを話し合った。

好きなこと嫌いなこと、友達のこと、思い出話などなど…

遥希は読書を唯一の生きがいとする、バリバリのインドア派。

一方、海音は生き物と遊ぶのも、手芸をするのも大好きだ。

遥希の友達は、口やかましいからかい魔。

海音の友達は、この海と

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【小説】海の涙 3

【小説】海の涙 3

朝日のあまりの眩しさに、遥希は目を覚ました。

普段の朝とは違った、静かな朝だった。

一度、バイクが走っていく音がしたきり、何の音も聞こえなかった。

浜に打ち寄せる波の音を除いては。

今何時だろう。腕時計だけでも持ってくるんだった。

遥希は公園へ時計を見に行こうとした。

時計は案外すんなりと見つかった。

木々の間の小道を抜けたところにすぐ広場があり、そこに時計が立っていた。

まだ五時

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【小説】海の涙 2

【小説】海の涙 2

 「あなた、誰?」

遥希が目を開くと、そこには紺色のワンピースを着た、色白で長い黒髪の少女が立っていた。

遥希はその現実とは思えないような美しさに驚くあまり、声も出せずに、ただ茫然とその少女を見つめていた。

「あなた、誰?」

少女の二回目の問いに、遥希は我に返った。

「お、俺…」

「ここから出て行って欲しいんだけど」

少女は、遥希が名乗ろうとするのを遮るようにきっぱりと言い張った。

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【小説】海の涙 1

【小説】海の涙 1

「俺に何をしろって言うんだ!」

遥希はそう叫んで家を飛び出した。

母親の「勉強しなさい!」という叱責に、とうとう耐えられなくなったのだ。

責めつけるような蝉の合唱から逃れるように、遥希はあてもなく、ただひたすら走り続けた。

どのぐらい走り続けただろう。

遥希がふと我に返って周囲を見渡してみると、全く知らない場所に来ていた。

息がはずみ、汗が滝のように流れている。

一休みしたい。

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