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【ファジサポ日誌】105.濃密なカップ戦~YBCルヴァンカップ2回戦 ファジアーノ岡山 vs 横浜FC (ミニ)マッチレビュー

カップ戦とはこんなに見ごたえがあり、楽しいものであったのか。

個人的には決して楽とはいえない平日ナイトゲーム、しかも試合直前まで霧雨が降るコンディションでしたが、ファジアーノ岡山初のルヴァンカップホームゲームはこの夜唯一の同カテ対決。他カードのようにジャイアントキリングの楽しみはありませんが、ゲームの質という点では、おそらく多くの観戦者を魅了した一戦であったと思います。

今回は簡単に振り返ります。

1.試合結果&メンバー

岡山先制、横浜FC逆転、岡山再逆転、横浜FC同点、PK戦決着というスコアが大きく動くまさにシーソーゲームでした。

YBCルヴァンカップ1st.ラウンド2回戦 岡山-横浜FC メンバー

カップ戦ということでメンバーにも注目が集まりました。
岡山はリーグ戦レギュラーのGK(49)スベンド・ブローダーセン、DF(18)田上大地、МF(88)柳貴博、(24)藤田息吹、(17)末吉塁、(8)ガブリエル・シャビエル、FW(9)グレイソンの7人がベンチ外、完全休養となりました。
その一方で今シーズン清水から移籍のキャプテン、CH(7)竹内涼が今シーズン公式戦初出場を果たします。高卒ルーキーLCB(55)藤井葉大はルヴァンカップ1回戦宮崎戦以来の出場、そしてLWBには岡山U-18の主力(65)三木ヴィトルが抜擢されました。
ベンチにはこの(65)三木の他にMF(62)磯本蒼羽、(64)藤田成充、(66)南稜大とU-18の面々が顔を揃えます。
そしてGKには(13)金山隼樹と(21)川上康平のなんと2人がベンチ入り。試合前アップでは先発(1)堀田大暉と合わせて3人のGKが登場するという珍しい事態となりました。

即ち負傷者、離脱者多数といわれている今の岡山の苦しい台所事情を表していますが、先日のプレミアWEST初勝利を果たしたU-18の面々のプレーぶりへの期待や、野戦病院の状況下においても戦えるメンバーが揃っている点に却って今シーズンの選手層の厚さを感じたのでした。

ルヴァン杯宮崎戦以来の出場となった(1)堀田。奮闘したが、勝負どころでセーブが欲しかったという思いも残った。

一方、横浜FCは直近のリーグ戦(長崎戦)からRCB(3)中村拓海を除き、10人を変更。こちらは岡山以上に選手層の厚さを感じさせます。
目立ったのが、LCB(46)佐藤颯真(東海学園大在学中)、CH(34)小倉陽太(早稲田大)、МF(56)橋本丈(関東学院大)、FW(29)宮田和純といった大卒または大学在学中のルーキーたちです。
横浜FCの着実な新卒リクルートぶりを裏づけるメンバーであったといえます。

そしてCF(9)櫻川ソロモンをスタメン起用。古巣対戦となりました。

さて、ゲーム全体を振り返ります。

(9)櫻川は(5)柳(育)とのマッチアップに臨む

2.レビュー

岡山も横浜FCも堅守から手数をかけずに攻撃するという点では似通ったチームスタイルといえ、またメンバーも普段と異なることから、リーグ戦での戦術的な駆け引きというよりは、お互いの基本戦術に忠実にゲームを進める意図がみてとれました。そうしたゲーム展開の中で個と個のスピード、強度の対決があり、カップ戦という点を差し引いても非常に質の高いゲームであったといえます。

序盤の横浜FCは当然のように岡山の左サイド(55)藤井と(65)三木を狙ってボールを動かしますが、(65)三木のファーストディフェンスが非常に安定していたように見えました。ユース年代という点、相手が横浜FCという点、本職のポジションではない(普段は右)点を踏まえれば十分なデキであったと思います。
(55)藤井もオフザボールのポジショニングにやや迷いが見え、守備面での強度もまだまだこれからという面はみせたものの、全体的には安定して守れていたと思います。
この試合の(55)藤井はCB(5)柳育崇からのスライドで(9)櫻川をみたり、後半途中からは横浜FCの切り札FW(10)カプリーニにも対応しましたが、延長後半(10)カプリー二に決められた点を除けば、これも全体的にはよく守れていたと思います。
なお、この(10)カプリー二のゴールについては岡山CB陣が自陣からクリアを続けながらも、こぼれ球を拾われ続けたことによるもので、(24)藤田(息)の偉大さも改めて感じることとなったのでした。
(55)藤井については、本職がLSBであったこと、1回戦宮崎戦から一気に対戦相手が強化されたことを考慮しましても、確実な成長をみせてくれたと言えるのではないでしょうか。

守備では(20)村田を自由にさせなかった(65)三木
ボックス前を崩す積極性、技術、アイデア、全てが伸びしろである。

2人とも今後の課題は攻撃面にあると思います。
(65)三木はバイタルまではボールを運べるものの、相手DFを目の前にするとあっさりと後方に戻してしまう場面も多かったです。戦術的な理由もあったのかもしれませんが、今後はトップで通用する突破力を身につけることが課題というよりは、伸びしろになるのかなと感じました。
それでも後半からは積極的な仕掛けもみせ始め、79分の交代直前にはあわやというシュートも放ちました。トップチームに良い足跡を残したといえます。

(55)藤井もフィードの質はまだまだこれからと感じました。今は守りを身につけることで精一杯かもしれませんが、今後は天皇杯もあります。
一戦ずつ進化をみせてほしいです。

しかし、この2人の頑張りが、この試合を接戦にした大きな要因であったことは改めて強調したいと思います。

(10)カプリーニの同点ゴール。(55)藤井が詰めてはいたが。

岡山の攻撃に関してはとにかくLST(10)田中雄大とCH(44)仙波大志の鬼気をも感じさせる気迫がすごかったです。
今日、この試合(ルヴァン)に出ているという立場に2人とも満足していないのだと推測します。この2人はこの2人で確固たるレギュラーを掴むための戦いが続いているのです。

(10)田中はボランチ脇のスペースを埋める守備、ボール受け、そしてCFを追い越すランニングと、今の岡山のSTに求められる攻守のタスクを忠実にこなすばかりでなく、自身の武器であるドリブルによる持ち上がりを随所に披露してくれました。
この(10)田中の「シャドー」ぶりが満点に近いデキであっただけに、岡山の最前線を狙ったロングボールに対してCF(99)ルカオとLST(29)齋藤恵太のいずれがボールを収めるのか曖昧であった点はもったいなかったと感じます。これは(99)ルカオがどうしても1トップタイプではなく、サイドに流れようとすることから、代わりに(29)齋藤が収めようとすることによるものと憶測しますが、最初から(99)ルカオと(29)齋藤の位置を入れ換えれば良かったのではないかと思いました。
経過が前後しますが、延長前半(10)田中の勝ち越しゴールもサイドに流れていた(99)ルカオのヘディングが繋がったことによるものでした。
やはり(99)ルカオはサイドにいる方が良いプレーを魅せてくれます。

延長前半(10)田中のこの日2点目。
これで今シーズンは公式戦4得点。
今後の量産に期待がかかる。
そして足が攣る。
ドリブルの段階で攣っていたようだ。

(44)仙波も持ち前のボールキープ力を存分に披露、ピッチを縦横無尽に動き回る姿はまさに「ゲームメーカー」そのものであったと思います。

この(10)田中と(44)仙波を効果的にサポートしていたのが初出場の(7)竹内で移籍後公式戦初出場とは思えないこの2人との好連携には目を見張るものがありました。残念ながら前半で交代しましたが、試合後の挨拶も普通に来てくれましたし、これは予定どおりの交代であったのかもしれません。そうなりますと明後日の清水戦にメンバー入りする可能性もあり、楽しみとなります。
先制点はこの3人の連携の良さから生まれたものでした。

ボックス前へ持ち運ぶ(44)仙波
(7)竹内のクロスに(10)田中がドンピシャのタイミングで抜け出し先制。
移籍後初出場の(7)竹内
初出場とは思えない連携のスムーズさが目を引いた。

一方でこの後、シーソーゲームになった要因、そして最終的な岡山の敗因についても触れておきたいと思います。
全体的にはマイボールになった際に、より手数を掛けずにボールを運べていたのは横浜FCの方で、そこにはマイボールを簡単にロストしない技術の高さもあったのですが、それよりも大きく両リームの差になっていたのは、ミドルシュート、フィニッシュへの高い意識です。

横浜FCの同点ゴールを決めた(34)小倉はこの試合が公式戦初出場であったにも関わらず、鮮やかなミドルシュートを決め切ります。
(34)小倉本人の能力もありますが、やはりチームとして普段からミドルシュートを意識したトレーニングが出来ているのだと推測します。

一時横浜FCの勝ち越しをもたらした(9)櫻川のゴールもボックス外からのシュートのこぼれ球を決めたものでした。昨シーズンの岡山在籍時を振り返ると、こぼれ球を狙うという同様のシュートチャンスはほとんど記憶になく、つまりは岡山のミドルシュートが少なさを表しているといえます。
この試合で(5)柳(育)をはじめ岡山DF陣は(9)櫻川にほとんど仕事をさせていなかったのですが、先制点のアシスト(落とし)と、このゴールという決定的な2つの場面で自由を与えてしまったといえます。

(10)カプリー二の同点ゴールもボックスやや外からの強引なシュートであったと思います。(55)藤井が詰めていましたが、若干寄せが甘くなりました。

少しでもシュートコースがあれば逃さない横浜FCの隙の無さが窺えますが、これだけ積極的にシュートを撃てるというのは、仮に跳ね返されてもその後のトランジションに自信があるということの現れなのかもしれません。

一方岡山も、途中交代MF(27)木村太哉の同点ゴールは手数を掛けずに個の勝負に持ち込むシンプルな形であり、インテンシティの高いゴールであったといえますが、全体的にはボックス内を最後まで崩し切ろうとする意識の方が強く、横浜FCの守備網に掛かる場面が多かったようにみえました。

前回、熊本戦のレビューで(27)木村の決定機逸について述べましたので、この大事な場面で決めてくれた点については(27)木村を心から称えたいと思います。もう少し力を抜けばと思えた熊本戦のシュートでしたが、この同点ゴールはフルパワーで振り抜いたからこそ生まれたものであり、やはりこの思い切りの良さは(27)木村の魅力といえそうです。

リーグ戦も含めて、なかなか横浜FCに勝てないのですが、失点シーンを振り返りますと、やはり横浜FCの方が得失点に直結する勝負の肝となる場面を悉く制しているといえます。
ゲームの質の高さに一定の満足感を得ながらも、岡山も重視している「やる」「やられない」の局面で僅差ながら及ばなかった試合内容に悔しさも感じています。

もっと強くなって、秋の三ツ沢では勝ちたいですね。

以上、簡単ですがルヴァンカップ横浜FC戦を振り返りました。

今回もお読みいただきありがとうございました!

お互い今シーズンはサブに回ることが多いGK
3失点を喫したことで難しいメンタルであったかもしれないが、見応えのあるPK戦を披露してくれた。
(99)ルカオのクロスを交代出場(19)岩渕が巻くようなシュート。やはりこの人にはゴールへのアイデアがある。
出し切ってくれた(10)田中
その姿勢には感謝しかない。
初登場(66)南稜大

※敬称略

【自己紹介】
雉球応援人(きじたまおうえんびと)
地元のサッカー好き社会保険労務士
日常に追われる日々を送っている。

JFL時代2008シーズンからのファジアーノ岡山サポ。
得点で喜び、失点で悲しむ、単純明快なサポーターであったが、ある日「ボランチが落ちてくる」の意味が分からなかったことをきっかけに戦術に興味を持ちだす。

2018シーズン後半戦の得点力不足は自身にとっても「修行」であったが、この頃の観戦経験が現在のサッカー観に繋がっている。
レビュアー3年目に突入。今年こそ歓喜の場を描きたい。

鉄道旅(独り乗り鉄)をこよなく愛する叙情派。

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