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【ファジサポ日誌】89.贅沢品から必需品へ~ファジアーノ岡山新(専用)スタジアム建設のために~

昨日、エディオンピースウイング広島で初試合「広島vsG大阪」のプレシーズンマッチが開催されました。

早速、現地観戦されたファジサポさんの投稿から、コンパクトな設計ながら空間的広がりを感じさせる解放感やピッチの近さ、迫力が伝わってきました。

そして更に印象的でしたのが、試合の前後、広島の市街地に広島、G大阪の両クラブのユニを着用したサポーターの姿が目立ったという投稿でした。

これまで市街地から離れた山間部にホームスタジアム(エディオンスタジアム)があった影響もあり、サンフレッチェの紫色が広島の市街地で目立つことは、カープの赤色と比べるとそこまでではなかったのかもしれません。

サッカー専用スタジアムが密閉性のある上質なエンターテイメント空間を保ちながらも、その楽しさ、喜びがスタジアム内部のみでは完結せず、スタジアムの外へ、街全体にじわじわと広がっていく「この感じ」。
今後、全国的にもサッカー専用スタジアムの成功例となる予感があります。

ついに中四国にもこのような市街地型専用スタジアムが完成したのです。

そして、私たちファジアーノ岡山サポーター熱望する新スタジアム、専用スタジアム構想にも希望と活力を与えてくれます。

ここまでの岡山のスタジアム構想を想像するに、そもそも「想像」と表現するのは水面下での動き(水面下からたまにひょこっと顔を覗かせる)に止まっているからなのですが、ここまでの木村オーナー、北川会長をはじめとしたクラブ、地元経済界の動きは非常に活発かつ緻密で確実なものではないかと想像しています。

昨年報道されたSANGAスタジアムの視察の様子をアップしてみましたが、このように岡山地元マスコミとの関係性も良好と思われます。

ではなぜ、新スタジアム構想が本格的に表面化しないのか?

それは、新スタジアムがファジアーノ岡山のJ1ライセンス維持に近い将来必須となるものであり、その時期までそんなに猶予がないことが想定されているからであると考えます。

おそらくこの話は、新体制発表会などの場でクラブが積極的に発信している影響もあり、多くのファジサポさんがご存知かと思います。
そのため詳細は控えますが、現在のファジアーノ岡山のJ1ライセンスは「条件付き」で付与されているものです。極論するならJ1ライセンス不交付でもおかしくないということです。

これまではこの「条件付き」でJ1ライセンスを取得しているクラブが多かったのですが、近年は新スタジアムを建設、既存スタジアムを改装することにより、このJ1スタジアムの条件をクリアするクラブが増えてきました。
「条件付き」でライセンスを取得しているクラブの方が少数派となっている現実があります。

少数派となれば、この「条件付き」という特例がいつ撤廃されてもおかしくない。どこの世界にも存在する理屈が迫っていると予想されるのです。

そして、ファジアーノ岡山が晴れてJ1に昇格した暁には、浦和レッズをはじめとした大規模サポーター集団が現在のシティライトスタジアムに来場することが想定されます。約15,000人収容の現在の規模では、地元サポーターがチケットを購入できない、試合を観戦できない事態も想定されるのです。

そうなりますと、ファジアーノ岡山の新スタジアム建設にあたっては、その過程で大きな失敗が許されない上に相当なスピードが必要となります。
建設資材の高騰、建設人材の不足によりスタジアム建設の工期自体が長くなることを考えると、構想、計画段階での足踏みは避けなくてはならないのです。

ピースウイングもその構想は2000年代に生まれたもので、開業までトータルで約20年の歳月をかけています。おそらくこんなに長い歳月はかけられないでしょう。
また、J2ライセンス保持のための新スタ計画が二転三転しているブラウブリッツ秋田のような事態も避けなくてはならないのです。

新スタジアム計画が日の目を浴びると同時に一気に建設へと押し進んでいく、そんなスプリンター的な建設プロセスをクラブは描いているのではないかと筆者は想像しています。
計画がスプリントするには地をしっかり踏みしめ、瞬発力を高めなければなりません。そのための「堅い土壌」をクラブは今つくろうとしているのかもしれません。

ではその「堅い土壌」とは何でしょうか?
筆者は、県民・市民の広い支持であると考えます。

スタジアムの建設・運営にも公設公営、公設民営、民設民営といった様々な方式がありますが、いずれにしましても行政の力、公金の支出は必至です。
ジャパネットさんのような親会社を持たないファジアーノであれば尚のことです。

当たり前ですが、公金の多くは税金で賄われています。
つまり、ファジサポ以外のファジアーノに関心がない、サッカーに関心がない県民・市民からの理解、支持を得ることが必至なのです。

こうした発信(主にX)をしますと、ファジアーノ岡山の一サポーターに過ぎない筆者にさえ「スタジアム建設反対!スタジアム建設にかけるお金は福祉に!」といった主張の捨てアカからDМがくることが稀にあります。

先ほどのSANGAスタジアムの例にもあるように、新時代のスタジアムが、サッカーのみならず多目的な用途を持ち、広く県民・市民に利用してもらえるもの、防災拠点としての機能を持つこと、賑わいを創出するといったまちづくりの一部であることなど、広い公共性を持つことはスタジアム問題に関心を持つサポーターにはよく知られていることなのですが、サッカーに関心がない人々には全く伝わっていない点が大きな課題なのです。

こうした「一般」県民・市民からの新スタジアムの建設についての支持を取り付けるにはどうしたらよいのか?

それは新スタジアムが贅沢品ではなく必需品であるというわかりやすいストーリーを描くことにあると思います。

実は、ファジアーノ岡山は過去に非常に説得力のあるストーリーを描いたことがありました。そうです、政田サッカー場・クラブハウスの建設です

2013年4月に開場したファジアーノ岡山の練習場、そしてクラブハウスがある政田サッカー場。この建設にあたり広く署名活動が行われました。
政田サッカー場の所有者は岡山市、ファジアーノ岡山が指定管理者として運営・管理を行っています。建設費は約9億円、土地造成費用等も含めて多額の公金(税金)が支出されました。建設にあたり大きな力になったのがこの署名であったのです。

X上でのアンケートではまず署名行動について伺いました。
当然筆者のフォロワーさん中心にお伺いしていますので、ファジサポさんがほとんどな訳ですが、驚きであったのがこの署名活動自体を知らなかった方が想像以上に多かったことです。
十年ひと昔とはよく言われたものでして、サポーターの世代交代や岡山の人口移動性の高さ(転勤等)を感じさせる結果となりました。

まず、政田サッカー場開設にあたっての熱意について風化させてはならないと感じました。

また、署名したかったけど出来なかったという層も一定数認められます。
これは現在のクラブの課題にも繋がっていると思いますが、スポンサー企業等を通じない一般的な署名活動が岡山市、倉敷市の県南地域に集中していることを指しているものと思われます。
岡山県全域がホームタウンのファジアーノですが、実質的な全県的広がりをどのようにつくっていくのか、今後の取り組みに注目したいです。

2番目のアンケートが署名(賛成)理由についてですが、ここで半数を示したのが「選手の過酷な練習環境を改善したかった」という理由です。

当時は岡山市内長岡(東岡山駅近く)の「財田スポーツ広場」や西大寺の「神崎山」などで練習を行っていたと記憶していますが、天然芝の養生期間である春先、人工芝のグラウンドなどで練習することにより怪我人が続出する、選手は自家用車の中で着替える、現在の地域リーグのチームのような光景が広がっていたのです。

そして衝撃的であったのが、当時の助っ人イリアン・ストヤノフなどの主力選手たちが、衆目の中、水が張られた子ども用ビニールプールでクールダウンを行う姿が地元のニュース映像に流れたことでした。

当時の映像を探し出すことが出来ませんでしたが、この映像をきっかけに地元のプロクラブに所属する選手たちの過酷な練習環境の実態が明らかとなり、オレがワタシが応援している選手(「推し」という言葉は当時多分なかった)を守りたい、この街のクラブを強くするために専用練習場・クラブハウスを建てたいというストーリーが醸成されたのでした

一方で反対意見について伺ったアンケートからは、新スタジアム建設に向けて広く県民・市民に訴求するための、現在にも通ずるヒントがあったような気がします。

「時期尚早である(強くなってからでも良い)」というのは、新スタジアム建設によく出てくる「タマゴが先か、ニワトリが先か」という話なのですが、これも決して馬鹿にはできないと思います。チームが強くなるというのは単純明快かつ最も効果的なストーリーなのかもしれません

そもそも岡山県民の中でファジアーノに関心を持っている人はどれぐらいの数なのでしょうか?

昨シーズンのファジアーノのホーム開幕戦は清水エスパルスとの対戦でした。清水にはGK権田修一やMF乾貴士といった日本代表歴のある選手が在籍。清水がJ1でもお馴染みのクラブということもあり、Cスタは満員になりました。
一方、今年のホーム開幕戦の相手は栃木SCです。栃木さんには申し訳ないですが、チケットの売れ行きはやはり昨シーズンの清水戦よりは劣ります。

筆者の知人にはこの清水戦は観戦したが、これ以降一度もファジアーノの試合を観に来てくれない人もいます。

アウェイの観客数は考慮しないといけませんが、サムライブルー等でサッカーには関心はあるが、ファジアーノまでには関心が広がらないという層が岡山にはかなり存在するのではないでしょうか(潜在サポーター?)。

こうした潜在層を「ライトなファジサポ」へ変えていくためには、J1昇格というストーリーは最も効果的と考えられます。

先日、森井社長の就任会見から筆者が個人的に感じた内容です。
足元で新スタジアムの公共性をじっくり岡山県民に浸透させつつ、チームがJ1昇格を目指し岡山全体で盛り上がり、そして昇格を果たすことで、J1にふさわしいスタジアムの必要性を広く県民に訴求する

ファジアーノが描こうとしているストーリーは、あまりにも愚直で、でも最も分かりやすく効果的なものなのかもしれません。

改めまして今シーズンの重要性が身に染みます。

スタジアム建設の話題はどうしても主語が大きくなりがちで、一般的なサポーターの立場からは語りにくい面もあるかと思いますが、ファジアーノ岡山のストーリーを引き続き追っていきたいと思います。

今シーズンもよろしくお願いいたします!

【自己紹介】
雉球応援人(きじたまおうえんびと)
地元のサッカー好き社会保険労務士
日常に追われる日々を送っている。

JFL時代2008シーズンからのファジアーノ岡山サポ。
得点で喜び、失点で悲しむ、単純明快なサポーターであったが、ある日「ボランチが落ちてくる」の意味が分からなかったことをきっかけに戦術に興味を持ちだす。

2018シーズン後半戦の得点力不足は自身にとっても「修行」であったが、この頃の観戦経験が現在のサッカー観に繋がっている。
レビュアー3年目に突入。今年こそ歓喜の場を描きたい。

鉄道旅(独り乗り鉄)をこよなく愛する叙情派。

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