【ファジサポ日誌】19.非常事態の中で光ったモノ~第32節vs横浜FC~
こんにちは。
普段のレビューは原則ホーム戦に限定していますが、8月はそのホーム戦もわずか1試合。しかし、クラブはJ1昇格に向けて大事な試合を多く抱えており、その戦いぶりを記録する必要性(自分が記憶したいが正解か?)から今回は例外として、首位横浜FC戦をレビューすることにしました。
(※タイトル写真は以前横浜を訪ねた際に撮影しました。横浜スタジアムです。サッカーの記事なのに競技が異なりすみません。)
首位横浜FCとの戦前の勝点差は9。12試合を残す状況で、優勝、自動昇格をねらう上では勝利(勝点3)を必要とする試合でした。
その重要性は選手、スタッフ、サポもみんなわかっていただけに試合日当日に入ってきた選手6人陽性のニュースは衝撃でした。
岡山サポの皆さまはご存知のとおり、18日(木)に1人目の陽性者が確認され、それに伴って実施されたPCR検査の結果です。
更にこの6人との濃厚接触疑い者に1人の選手が該当、コロナ陽性等で少なくとも計8人、ここに累積警告により出場停止となる(5)柳を加えた計9人が横浜FC戦に出られないという非常事態になりました。
これまで他クラブでもコロナ陽性者は数多く確認されており、私は開幕時期の大分やその煽りを受けてしまった水戸などは、現在の順位にも大きな影響を及ぼしていると考えています。
岡山は他クラブと比べますと、ここまで幸運にも陽性者をそれほど出すことなくシーズンを戦い続けてきました。仕方がないことですが、よりによって首位との決戦、6ポイントマッチを控えたこのタイミングでの陽性者多数発生に愕然としてしまいました。
一方で、来週からの群馬、山形(再開試合)、町田、山形(ホーム)の連戦で発生しなくてよかったと思えたことも事実です(まだ予断は許しませんが…)。
さて、コロナ陽性者が出た場合の試合開催については、Jリーグに規定があります。
当日の選手の体温も踏まえて、試合開始2時間半前に14名(GK最低1名)以上がエントリーできるようにチームは最大限の努力をしなければならない、ということですね。
この「最大限の努力」というのが「クセモノ」だと私は思っていまして、つまり中止ありきではないということです。
最近J1やルヴァンカップで川崎や福岡がGKを複数サブに入れてこの14人を無理やり満たしていたり、福岡に至ってはサブGKがFPとして実際に出場するという、結構無茶苦茶な事象が発生していたのは、この「最大限の努力」を行った結果なのです。(それでも勝利していた福岡はスゴイですね。)
一方で今回の第32節では金沢-長崎が長崎側の陽性者多数、エントリーメンバーを満たせないという理由で中止(延期)となりました。
中止になるということは、それだけ状況が深刻ということですが、エントリーメンバーを満たせるかどうかについては、アウェイチームの場合、代わりの選手が試合会場に到着できるかどうか、試合会場までのアクセスも影響してくると思われます。岡山は(31)谷口や(28)疋田らがチームに帯同(後から合流?)していたようですね。サポートに感謝です。
しかし、今のこのルール、
はっきり申しまして、競技としてフェアではありません。
誰が陽性であったのか分からない一サポとしましては、岡山にもこのような無茶苦茶な努力を求められた結果、例えば(31)谷口や二種登録の選手がFPとしてベンチ入りするのではないか、また仮にメンバー数が揃っても、大幅なコンバートを要さないか、そんな危惧もメンバー発表前には抱いていたのです。
正直なところ安堵したというのが本音です。まず18人のメンバーを満たすことができましたし、最低限試合を作る上で核となるCBの(4)濱田、(23)バイスの健在は不幸中の幸いでした。
もちろん、チーム得点王(7)チアゴ、リーグアシスト王(16)河野、ロングスローの(41)徳元、リーグ戦全試合出場の(26)本山、(14)田中の新人コンビと、岡山のストロングがほぼ不在という厳しい状況に変わりはないのですが、ちゃんと本職の選手が本職のポジションに配置されており、少なくとも大量失点で敗れるようなことはない、「これなら戦える」と勇気を得たのでした。
実際、0-1と僅差での敗戦となりました。残念です、無念です。
個々の選手の力量や、したたかな試合運びという点で若干横浜FCが上回っていたかもしれませんが、勝てる試合でもありました。
総括しますと、決め切るべきところを決め切る横浜FCとの力の差が出たと思っています。
しかし、前述しましたようにストロングの多くをコロナに封じられた岡山の成長もみられた試合でした。何点か私が感じたポイントを整理します。
■ スタートから3バック導入
最近の試合では、試合途中から3バックに変更していた岡山です。
これまでの試合での3バック変更の意図は、立ち位置(ポジション)の変化により相手のフォーメーションとのギャップを作り出す効果、右サイド(16)河野により高い位置でボールを持たせるなど、攻撃的な効果をねらったものであったと考えます。
試合内容は3バック変更後の方が良く、試合の頭からの導入についても積極的な意見がSNS上でみられていました。
この試合はついに試合開始から3バックを導入した訳ですが、この意図を私は当初誤解していました。
というのも、急造フォーメーションでしたから、戦術的な攻撃や守備というコンビネーションの部分はある程度捨てて、横浜FCの3-4-2-1に合わせてミラーゲームに持ち込み、選手個々の力量で勝負させる部分を増やす意図と捉えていたのです。
ところが、試合後の木山監督の談話や記事によりますと、週あたまから3バックで試合に臨むことは決まっていたようなのです。
これも後から「ファジラボ」の記事で知りましたが、横浜FCの守備時が4バックという想定であり、前半からギャップを作り出す。中盤の枚数を4枚から5枚に増やすことで幅をとり、サイドに起点を作るねらいがあったようです。
しかし、実際には横浜FCの守備時は5バック。奇しくも各ポジションがマッチアップする形になったのでした。
それでも横浜FCはCH(6)和田やLWG(16)長谷川などが、岡山選手間の中間ポジションに気の利いた動きで入り、ギャップを作り出してはサイドへ展開、岡山3バック脇を起点に岡山最終ラインとCHのライン間を狙います。
横浜FCの攻撃は3バックのチームに対する原則的な形と思えましたが、岡山は時間の経過に連れ、新加入(34)輪笠がバイタルをしっかりカバーする等により対応、急造メンバーながら守備も良かったと思います。
攻撃については、普段のメンバーではみられない傾向があったと思いました。選手間のパス交換からはいつも以上にスピードとリズムを感じることができたのです。決して横浜FCに持たされているという感覚はなかったです。
■ 岡山のパス交換
試合中のワンシーンをヒントに作成した図です。
データに基づいたパス交換図もありますが、普段のレビューでも自分の目線を大事にしていますので、あえて私の印象で述べさせていただきます。
(23)バイスのパスの選択肢と、その先のパスをイメージしています。
(23)バイスが起点の攻撃はロングフィードのイメージが強く、実際にこの試合でも良いフィードはあったのですが、この試合ではそれ以上にグラウンダーのパスの起点になっていたと思います。
実際にこのシーンは、(23)バイス→(10)宮崎幾→(11)宮崎智→(22)佐野とほぼワンタッチで繋がり、最終的には(15)デュークも絡むのですが、この連続するパス交換中、横浜FCは効果的なプレッシングを行えてなく、岡山はバイタルへの侵入に成功します。
このパス交換のポイントを3つ挙げてみました。
① いきなり(15)デュークに当てていない
② パスの選択肢が多い
③ 斜めのパスが多用されている
①については横浜FCにいつもと傾向が違うというところを見せれたと思いますし、今シーズン長期間課題になっている(と思っている)「デュークの落とした先問題」の解決にも繋がります。
②③については一般的に相手は守りにくいものだと考えます。
この急造メンバーでこうした攻撃ができたという点は大きな収穫といえるのではないでしょうか?
デュークの落とした先問題については下の記事をどうぞ⬇️
前回の山口戦と今回の横浜FC戦のパス数を比較してみました。オレンジ色が今節スタメン入りした選手です。本当は平均値と比較したかったのですが、時間の都合上お許しいただきたいと思います。
まず、チーム全体のパス本数が約2倍に増加している点が注目されます。更にこのデータが面白いのは前方へのパス数、つまりビルドアップなど攻撃に向かうパスも倍増とまではいきませんが、やはり増加している点です。
パス成功率についても軒並み上がっているのですが、これは前述しましたように(15)デュークへの縦一本のパスがそれほど多くなかった分、ショートパスが多かったからだと推測します。パス距離が短い分、単純にパス成功率は上がるという見立てです。
横浜FC戦の特に中盤の選手の前方パス割合が、山口戦と比べて低い数値になっていますが、図でご覧いただいたように、これは相手陣内でのリターンパスが多かったからではないかと推測します。
更に、ビルドアップの起点になっていた(23)バイスの数値変化は強調しておきます。ロングフィードのみではない彼のビルドアップ能力を再認識しました。
もちろん、山口戦と横浜FC戦ではボール支配率が全然異なります(山口戦38%・横浜FC戦55%)ので単純比較はできないのですが、この試合のように岡山がややボール支配率で相手を上回った場合、例えば第27節の栃木戦(支配率52%)ではパス数371本、前方パス数138本とやはりこの試合のパス数が上回っています。
■ この試合の素晴らしさ
これまで岡山の攻撃の核となってきた選手が多く欠場する非常事態、それは岡山の「ストロング」を発揮できないハンデとなりましたが、代わって出場した選手たちは彼らのプレー特性やその技術の高さを活かして、ただ欠場選手の代役になったのではなく、ビルドアップと多くのパス交換による攻撃という新味を出してくれました。
残念ながら勝利には結びつきませんでしたが、即興にもかかわらず、こうした主体的なサッカーを魅せてくれた選手、チームに敬意を表します。
非常事態において、決して岡山は受け身ではなかった、最善の策で勝ちにいっていたと思います。
■ 失点シーン、そして…
決勝点はまたカウンターでの失点となりましたが、両CBが上がる以上、濱田選手がコメントしていましたように(主審にアピールする前に、相手の出方をみる前に)全力で戻るしかないのかと思います。
カウンターからの失点については、各クラブから既にスカウティングされていることでしょう。今後の対策に期待します。
スカウティングといえば、陽性者特定の件について最後に少しだけ触れたいと思います。今回の件はクラブ側の考えもあると思いますし、サポーターにはわからない事情もあると思いますが、事の発端となりました有料媒体の配慮は不足していたと思います。
いつも楽しみに拝見している媒体ですので、こんなことはあまり書きたくはないのですが、そうだと思います。
しかし、それをSNSで拡げる必要は全くなかったのですが、おそらく一つ一つの投稿に悪意はないのでしょう。同じ岡山サポ同士での情報交換、共有が目的であると思いますが、J1昇格争いというリーグ全体を巻き込む緊張感の中、まずは内向きな意識を外向きに変えていくことが大事なのだと思いました。
メンバーなんて後からわかるから一緒と思われるかもしれませんが、時は金なりでして、相手は早く分かればその分、代わりに出そうな選手の分析も細かくできますし、戦術の変更、マッチアップする自軍選手への情報提供、落とし込みなども深めることもできます。
当然、試合結果に影響します。
相手のスカウティング担当も特別な分析ツールだけではなく、サポーターと同じでSNSも見ているという意識は常に持っておきたいと思います。
私自身も気をつけていきます。
次は苦手群馬戦ですが、どこまでのメンバーが戻って来れて、どのようなサッカーを選択するのか注目しています。そして昨今の感染状況をみていますと難しいと思いますが、これ以上陽性者が出ないことを切に願います。
お読みいただきありがとうございました。
※敬称略
【自己紹介】
今シーズンから未熟な内容ながらもレビューを続けております。
ありがたいことに、最近、コメントや反応をいただくことも多くなって参りましたので、少しばかり自己紹介をさせていただきます。
雉球応援人(きじたまおうえんびと)
40代。社会保険労務士です。
コミュニケーション能力に長けていないにもかかわらず、人の意図、心情、人と人との関連性、組織の決定などを推測しながら、サッカーを広く浅く観ています。
公私において、全体的にこのレビューのような論調、モノの見方、性格だと思います。
1993年のJリーグ開幕でサッカーの虜になり、北九州に住んでいた影響で、一時期はアビスパやサガンをよく観戦していました。
(ギラヴァンツが産声を上げるずっと前の話です。)
ファジはJFL時代からです。
J2昇格がかかったリーグ終盤、佐川急便戦を落とした時の伊藤琢矢選手の涙は未だに印象に残っています。
ずっと何気なく一喜一憂しながら応援していましたが、2018シーズン後半に「なぜファジは点を取れないのか」考えるようになり、ちょっとずつ戦術畑を耕すようになりました。
ミラーレス一眼片手の乗り鉄です。
金沢アウェイに岡山→大垣→東京→上野→水戸→郡山→会津若松→新津→新潟→直江津→泊→富山→金沢という、周囲から不思議がられるルートで入ります。状況が許すようになれば、乗り鉄&away戦のレビューも行いたいです。
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