松ぼっくり

読書や映画の感想を描いていきます。読書は基本的に、自身が感じたポイントを3点以内でまと…

松ぼっくり

読書や映画の感想を描いていきます。読書は基本的に、自身が感じたポイントを3点以内でまとめます。 読む記事はサウナの記事が多いです。一応本職はIT系(エンジニアじゃないよ)

最近の記事

日本酒外交 日本酒サムライ、世界を行く【読書感想】

饗宴外交という言葉がある。 フランス革命・ナポレオン戦争後の1814~15年のウィーン会議時に生まれた言葉で、敗戦国フランスのタレイラン外相は天才料理人カレームを帯同して、各国代表に美食とワインを振舞って敗戦国でありながらフランスに有利な形で交渉を進めた。 このウィーン会議の様子は「会議は踊る」というドイツ映画にもなっている。外交と言うと経済力や軍事力をベースにした「ハードパワー」が重視されがちだが、「魅力的な文化」などを通して他国が自発的に支持してくれる外交手段のあり方

    • 2002年統合初日の障害はなぜ起きたか 【みずほのシステム統合と障害の歴史を振り返る #2】

      前回に引き続き、みずほ銀行のシステム統合の歴史を振り返る。 合併直後にまさかの大障害 2002年4月に障害が起きたわけだが、システム障害というのはいきなり天変地異のように起きるのではなく、事前のシステム開発に不備があって当日に表面化することがほとんどだ。みずほ銀行の場合は2000年11月に、第一勧銀と富士通が勧めてきたみずほ銀行の勘定系および営業系システムの統合作業をご破算にしたという。 前回記述した通り、現場に禍根を残しながらも第一勧銀と富士通のシステムに片寄すること

      • みずほのシステム統合と障害の歴史を振り返る #1 戦略の無い統合

        みずほ銀行の勘定系システムは、そのあまりの開発期間の長さから「IT業界のサグラダファミリア」と揶揄されてきた。いつまでも開発が終わらないスペインの世界遺産サグラダファミリアになぞらえたものである。 「東日本大震災の義援金講座がパンク」「ATMが通帳を飲み込む」などで大々的に報じられたので、IT業界や金融業界の人でなくとも、「みずほがシステムでやらかしている」くらいの認識はあると思う。 そんなみずほ銀行のシステム統合の歴史について書かれた本2冊と適宜、調査報告書を読んだので

        • ルックバックーなぜ人は創作を続けるのか【映画感想】

          本作を「絵描きなら誰もが共感する物語」と本作の監督である押山清高氏は述べる。 実際、この物語の主人公である藤野は「うまく描けなくてつまづく」「より優れた絵描きにあって挫折する」という体験をする。絵を描く人は間違いなく体験することだ。私は絵描きではないが、本気で打ち込んでいた分野で挫折を知り、そこそこ恵まれていたが故に環境を言い訳にもできずに、自分が特別な存在ではないことを自覚した経験はある。 特に原作者の藤野タツキにとっては「同年」である人物に負けるととてつもなく悔しいの

        日本酒外交 日本酒サムライ、世界を行く【読書感想】

          ”学術的に”成功しやすい告白とは? 恋愛の科学【読書感想】

          恋愛最大の難関、告白 恋愛最大の難関は告白だろう。成功すれば華々しい未来が拓く半面、失敗したら今ある関係が壊れてギクシャクしてしまう恐れがある。 告白の失敗は老人になったら笑い飛ばせるのかもしれないが、若い時は世界が終わるほどの衝撃を受ける人もいるだろう。単純に若い人たちが結ばれるのは喜ばしいことだ。と言うわけで意外と学術的意義がある分野らしい。では学術的にどういう告白が成功率が高いのか?を本書のパートから抜粋。 告白は男性がするものと思いきや、以外にも男女の差はあまり

          ”学術的に”成功しやすい告白とは? 恋愛の科学【読書感想】

          恋愛にルックスはどのくらい重要か?─恋愛の科学 【読書感想】

          恋愛は人間関係において最も特別なもの。心理学の世界で恋愛の研究もさぞ進んでいるのだろうと思いきや、実は心理学者の越智啓太氏(以下、筆者)によると恋愛は心理学の中で最も研究が遅れている分野の一つなのだそうだ。野暮という批判や、科学的に研究できるものではないという指摘があったからだ。 しかし、近年は恋愛についての研究も進みつつある。こういうのは海外が本場だが、本書は日本での再現実験の結果なども踏まえてできるだけ平易に恋愛についての研究結果を語る。 モテ度とルックスの関係をどう

          恋愛にルックスはどのくらい重要か?─恋愛の科学 【読書感想】

          全国にファンができる! オンライン講座のつくりかた 【読書メモ】

          講座・セミナーのオンライン化がどんどん進んでいる。だが、「対面が無理だから仕方なくオンライン」という考えでは参加者は満足してくれない。ポイントをまとめる。 オンライン講座は参加者と講師のどちらにもメリットがある 参加者 ・時間や場所に囚われずいつでもどこからでも参加できる ・育児や介護中でもできる ・録画サービスがあれば復習もできる 講師 ・エリアや時間、天候、会場、定員に左右されない ・資料の共有が簡単 ・チャット機能などで、やりようによっては参加者と近い距離で講座を開

          全国にファンができる! オンライン講座のつくりかた 【読書メモ】

          なぜ『異世界もの』の主人公には男友達がいないのか?【読書感想】

          小説や漫画、特にオンラインのものには”あるある”がある。例えば… ・男性向けのオンライン小説のタイトルにはよく「最強」という文字が入っている ・女性向けのオンライン小説のタイトルには「私」はあまり入っていないが、男性向けには「俺」がよく入っている ・殺し屋は男性も女性もいるが、殺される側は大体男性である 漫画に限らないが、サブカルチャー創作物の全体の傾向や売れ線は、人々の”欲望”を描いているというのが筆者の主張だ。 100%ではないが、そういう部分はあるかもしれない。私

          なぜ『異世界もの』の主人公には男友達がいないのか?【読書感想】

          マダム・ウェブ─家族を考える物語【映画感想】

          「期待外れ」という声ばかり聞こえてきた、ハリウッド発の本格ミステリー・サスペンスであるマダム・ウェブを観た。 観た感想を率直に述べると、意外と面白い。だが、期待外れという人の気持ちもよくわかる。 確かにミステリーやサスペンスを期待していると「どこが!?」という気持ちになる。謎解き要素はほぼ無いからだ。 骨子は未来予知という超能力をもつ主人公VSスパイダーマンのような超常の肉体を持つヴィランのバトルだし、謎っぽい謎は全て序盤に設定開示のごとく明かされる。 ミステリーとい

          マダム・ウェブ─家族を考える物語【映画感想】

          警察は本当に「動いてくれない」のか 正しい警察の頼り方 【自分用メモ】

          警官歴28年の筆者が、警察に動いてもらうためのコツをを解説した本。自分用のメモとして。 警察に相談する「目的」と「時間」を考える。 あくまで警察に仕事をしてもらうのだという前提に立ち、想像力を働かせることが良い結果につながる。 夜間や休日はできるだけ避ける 警察も組織の人である。現場では夜間や休日は相談が殺到しており、電話は鳴りっぱなしだ。したがって緊急性を要しない場合は、平日の昼間にあらかじめ電話を介して相談する方が満足いく対応をしてもらいやすい。 捜査をスタートして

          警察は本当に「動いてくれない」のか 正しい警察の頼り方 【自分用メモ】

          ヤマザキマリの偏愛ルネサンス美術論【読書感想】

          ルネサンス(文芸復興)の三大巨匠と言えば「ラファエロ」「ミケランジェロ」「レオナルド・ダヴィンチ」。ルネサンスの芸術面に焦点を当てる時も、彼らを中心に語るのが自然かもしれない。 しかし、本書はテルマエ・ロマエのヤマザキマリ氏が”偏愛”的にルネサンスの画家を語る。 17歳で単身イタリアに渡り国立美術学校で美術史と油絵を学んだ彼女の解説によって、偉大な巨匠たちも親しみやすいキャラクター変身。歴史と美術の双方に通じているヤマザキ氏が、ルネサンス期の”変わった”作家たちについて語

          ヤマザキマリの偏愛ルネサンス美術論【読書感想】

          ヤマザキマリの多様性を楽しむ生き方──昭和に学ぶ 【読書感想】

          テルマエ・ロマエを執筆した漫画家のヤマザキマリさんは”昭和”を愛している。職場のBGMはもっぱら昭和の音楽だし、日本の家は大井町の昭和の風情が残る街を選んでいるそうだ。また、テルマエ・ロマエの日本側の時代設定は昭和50年代である。 イタリアやスペインなどいろんなところに滞在経験のあるヤマザキさんにとって、日本の印象と言えば昭和だ。 地球人類みな兄弟ー昭和は多様性社会だった 昭和と言えばご近所付き合い。 本書のサブタイトルには”多様性”とあるが、読む限りでは平成・令和と

          ヤマザキマリの多様性を楽しむ生き方──昭和に学ぶ 【読書感想】

          [婚活ビジネス]急成長のカラクリ ー【読書感想】

          社会の結婚率は下がっているが、ビジネスとしての婚活市場は右肩上がりの成長を続けている。 タップルによれば、ネット婚活市場は156億円だった2016年から2020年は622億円へと約4倍にまで急成長した。婚活大手IBJの試算によれば、ネットに限らず合コンなども含めた婚活全体の市場規模は1兆円に成長するポテンシャルがあるという。 ただし、後述するがコロナでマッチングアプリが増えて爆増した反動か、逆に現在は低成長路線に入っているという向きもあるようだ。 本書は2019年に発売

          [婚活ビジネス]急成長のカラクリ ー【読書感想】

          修業論ー無敵の探求 【読書感想】

          努力する以上、努力した結果得られるものを先に知っておきたい──これは自然なことだ。 一方、昭和の頃の”修業"と言えば、寡黙な師匠が「いいいから黙ってやれ」と言わんばかりの態度で意味が分からない雑用を課したり、芸の世界では身の回りの世話をするなど、先の見えない状態で行うものーこんなイメージがある。哲学者である内田樹氏が、自身も38年間続けて7段を取得している合気道についての知見から修業について持論を語る。参考はこちら。 努力と修業は別物である 修業で取得できる内容は、事前

          修業論ー無敵の探求 【読書感想】

          なぜ働いていると本が読めなくなるのか【読書感想】

          本を読む時間はあるのにスマホを観てしまう。電子書籍が普及してその気になればスマホで本を読める時代なのに。 「私も働き始めて、本が読めなくなりました」「私の場合は音楽ですが、働き始めるとなかなかバンドを追いかけられなくなりました」「本を読もうとしても、疲れて寝てしまって、資格の勉強ができないんです」 作家の三宅香帆氏のもとにはこんな投稿が数多く寄せられたという。 「本を読めない」とあるが、この悩みの本質は読書に限らない。あらゆる趣味や家族との時間を諦めざるを得ないーそんな

          なぜ働いていると本が読めなくなるのか【読書感想】

          35点男の立ち回り術 田村淳【読書感想】

          「みなさんは自分を何点の人間だと思いますか? ボクは100点満点で、せいぜい35点です」 ロンドンブーツの田村淳が自身の”立ち回り術”要は処世術を語った本。こんな本が企画されて世に出ている通り、田村淳について立ち回りがうまいと感じる人は少なくないと思う。田村亮が下手糞すぎて目立つのかもしれない(笑) バラエティーの外でも、知識人ポジでもないが、馬鹿ではなくちょっと鋭いことをたまに言う…と言う感じで、良い感じ。テレビに依存せず、個人のYoutubeやオンラインサロンで儲けて

          35点男の立ち回り術 田村淳【読書感想】