見出し画像

[婚活ビジネス]急成長のカラクリ ー【読書感想】

社会の結婚率は下がっているが、ビジネスとしての婚活市場は右肩上がりの成長を続けている。

タップルによれば、ネット婚活市場は156億円だった2016年から2020年は622億円へと約4倍にまで急成長した。婚活大手IBJの試算によれば、ネットに限らず合コンなども含めた婚活全体の市場規模は1兆円に成長するポテンシャルがあるという。

ただし、後述するがコロナでマッチングアプリが増えて爆増した反動か、逆に現在は低成長路線に入っているという向きもあるようだ。

本書は2019年に発売されているためやや古いが、この右肩上がりで成長を続ける婚活市場の実態を、1事業者目線で執筆した本。データばかり掲げる大手事業者ほど俯瞰的過ぎず、かといって個人ほど偏見にまみれてるわけではない、より婚活の実像が分かりやすい内容となっている。

婚活市場が成長した理由

「結婚すべき」という圧力は減った。しかし、特に若年層の結婚願望は根強い。

内閣府の調査によれば20代から30代にかけて、「絶対結婚したい」「どちらかというと結婚したい」という意欲は6割前後で落ち着いており、年を重ねると高くなる傾向にある。

 性、年齢階級別にみた独身者の結婚意欲(出典:内閣府


ただ、婚活アプリを利用している人の話を聞くと「結婚したいのではなくて、パートナーが欲しい」「結婚した方がお金が浮くしおトク」と言う人の考えも多くいるように思います

筆者のであって来た人の中には、結婚はしたいけど「趣味の時間を大切にしたい」「恋愛は面倒」という意見も少なくないのだそうだ。

こうしたリアルが充実している人の意見も婚活者には目立つ一方で、単純に「異性とうまくコミュニケーションが取れない」と言う人もいる。そうした人たちが相手を探す場がアプリなのである。

「3高」から「4低」

結婚相手に求める価値観も変わってきている。よく言われるのが、「3高」から「4低」に変わったというものだ。

女性の社会進出が進み、自ら働くようになった結果、「高身長・高収入・高学歴」を重視するよりも、一緒にいて気楽な相手を求めるようになった。それが「低姿勢」「低依存」「低リスク」(リストラなど)「低燃費」以下の4低だ。

しかし、バブル期からは緩くなったとはいえ、女性が相手に求める年収は年収500万円~600万円といまだに高水準だ。

国税庁の「令和4年分 民間給与実態統計調査」によると、日本の平均年収は458万円。中央値はもっと低い。500~600万以上となると男性割合は全体の14.2%になる。この中には既婚男性も含まれるため、未婚男性の中での割合はさらに厳しい。


「相手の収入が理想よりも大幅に低かったとしても、人柄や外見など他のところで結婚対象になるか」というアンケート調査では、半数以上の女性が「ならない」と答えるなど、まだまだ男性は高い収入が比較的求められているようだ。

ただ、あくまで個人的な感覚だと最近は女性が頑なに男性の年収に固執しているという印象は受けない。そりゃ「希望」を聞かれたら年収高めを選ぶが、「俺が1000万稼ぐから主婦になれ」というような男性を選ぶ働いてる女性は少ないのではないか。実際はもう少し柔軟に考えている…と思う。

加盟金150万と利用料で大手のシステムは使い放題

結婚相談所は実は”副業”ビジネスとしても人気がある。というのも全国に4000社ほどある結婚相談所のうち大手は数社で、実はほとんどがフランチャイズ契約している相談所なのだ。

業界最大手のIBJの場合、150万の加盟金と月1万5000円程度のシステム利用料(2019年時)で大手の持つ会員データベースを利用できる。PCの他には特別な設備も必要ないため、非常に参入障壁が低く、ほとんどは社員数が1桁なのだそうだ。

最も2024年現在、非常にレッドオーシャン化が進み、広告料金も高まっているため副業として成功するのは元から人脈を持っている人ぐらいなのだとか。

成婚逃げ被害回避策はSNSをチェック

結婚相談所は基本的に成婚料で収益を得ている。それだけにトラブルも少なくないという。まず”成婚”の定義が業者によって違うのだが、多くは実際に結婚していない段階でも「付き合って数か月がたった」「複数回泊まった」などの定義が取られているようだ。

結婚が決まったのに成婚料を払わず途中退会する人が1~2割ほどはいるのだそうだ。食い逃げみたいな行為だが、中小にとっては他人ごとではない。近年はこうした中抜けに対する警戒が強まっており、結婚相談所によってはFacebookやInstagramの監視が業務に含まれているのだそうだ。

面白いことに、中抜けした人たちにとってでさえ、結婚のような喜ばしいことはSNSで報告したくてたまらないのだそうだ。そうした書き込みを見つけて成婚料を違約金も付加して請求するというサイクルが繰り返されているという。

人気アプリと、信頼できるアプリの違い

国内のマッチングアプリのシェアを観ると1位のペアーズ、2位のティンダー、3位のタップル、4位にWith、5位にOmiaiとなっている。

出典:東洋経済オンライン

筆者は本気で婚活したいなら、こうした人気に囚われず、以下のポイントを抑えるべきだと提言する。

  • 月額料金がある程度高め

  • 男女同程度の月額料金

  • 身分証の証明が必須

総じて出会い系寄りのアプリはこうした特徴を抑えていないため、婚活には向いていないのだと筆者は分析している。

最後に

婚活はビジネス側の視点だと、業務内容そのものが面白いのだそうだ。実際、成婚に至ったら金銭面でも、社会貢献ができたという精神面でも非常にリターンが大きいだろうと思う。

しかし実際には「ヤリ目」の男性や「メシ目」の女性が運営側にとっては乗客になる。詐欺などを働いたら流石にアプリ側もそれ相応の態度になるだろうが、なかなかこうした客には対処できないもどかしさは抱えているようだ。実際、男性は医師などハイクラスが登録している「誠心」の利用者にはヤリ目が多く、女性側の口コミはなかなか悲喜交交(ひきこもごも)である。

この本を読んだとき、ちょうど東京都がマッチングアプリ開発を進めているというニュースが流れてきた。信頼性の高さという視点ではずば抜けており、収益を目的としていないのだがらこうした「ヤリ目」「メシ目」に厳しい対応を取ってくれるといい…な。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?