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マダム・ウェブ─家族を考える物語【映画感想】

「期待外れ」という声ばかり聞こえてきた、ハリウッド発の本格ミステリー・サスペンスであるマダム・ウェブを観た。

この糸《ウェブ》が、すべての運命を繋いでゆく。
『スパイダーマン』のスタジオが贈る
マーベル初の本格ミステリー・サスペンス

ソニー・ピクチャーズ

観た感想を率直に述べると、意外と面白い。だが、期待外れという人の気持ちもよくわかる。

確かにミステリーやサスペンスを期待していると「どこが!?」という気持ちになる。基本は未来予知という超能力をもつ主人公VSスパイダーマンのような超常の肉体を持つヴィランのバトルだし、謎っぽい謎は全て序盤に設定開示のごとく明かされる。

ミステリーというよりは心の成長に焦点を当てたドラマ

だが、この作品が描きたかったのはミステリーでもサスペンスでもなく「家族の絆」なのではないかと思う。主人公とヒロインの学生3人は孤児だったり、強制送還されていたり、家出中だったり、家庭環境に問題がある子しかいない。

そうした4人がエゼキエルというおじさんに命を狙われる中で、徐々に絆を深めて、最後は4人で疑似家族になる──という流れだ。この軸がとても骨太に描かれていて、仮にだが自分が親を子供の時に亡くしていたら刺さったのではないかと思う。

エゼキエルの変身した姿。敵版のスパイダーマンといったところ
毎晩ヒーローとなった3人の少女が自分を殺しに来るという夢をみるため殺そうと決意。
結局、少女たちは変身できるようになってたので正解だったのでは…?と思う

個人的に良かったのは4人が”不幸ぶっていない”ところだ。むしろ本人たちは自身の境遇が開示されるまで明るく、気丈に生きているように見えた。

主人公のウェブだけは序盤から、仕事はそつなくこなしながらも孤独感を感じて周囲に馴染めない感じは出ていたが、それは一人で野良猫相手に物憂げな表情を見せてるだけで、周囲に八つ当たりとかはしていない。

とは言えウェブには余裕のなさと、どうにも他人に冷徹なところがあった。そんなウェブが成長する過程はこの映画の見どころだと思う。

そんな孤独を抱えた4人が徐々に寄り添いあっていく流れは丁寧だったと思う。

ただ気になるところも結構ある

まず気になったのはモブとか死にすぎじゃない?ってところ。

主人公が未来予知を駆使してエゼキエルから逃げる過程で、警官や巻き込まれた店の店員などがどんどん死んでいく。主人公も逃げるために車を盗んだり建物を壊したり、その巻き添えで救急隊員が乗ったヘリも墜落するし、散々である。それらを顧みる描写が一切無いのがどうにも消化に悪い。

また、ヴィランであるエゼキエルおじさんが金とハッキング能力を駆使して主人公たちを指名手配したのだが、それがいつの間にか消えて普通に日常に復帰している。

それと本作は舞台が2003年だった。これは2024年公開の作品に必要な設定だったのだろうか?と疑問に思う。社会システムや文化は現代なのに、ぶっちゃけるとスマートフォンだけ取り上げられている感じ。実際、スマートフォンと言わずガラケーがあれば解決したすれ違いが何個かあったように思う。

百歩譲ってミステリーならスマホを没収するのも分かるが、ミステリー要素はほぼ0である。その癖映画全体の雰囲気は暗い。

2003年だからこそ魅力的になる部分みたいなのが一切ないので、正直脚本の都合しか感じれなかった。詳しくはないが、スパイダーバースとの兼ね合いで仕方なかったのかな?



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