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使いそびれた高齢者割

ー義母86歳と行く台湾(6)

義母は台湾でもシルバー割引が適用されるー。恥ずかしながら、礁渓ジャオシー温泉(宜蘭ギーラン県)に向かう高速バスの切符を買うとき、たまたま窓口の女性スタッフに教えてもらって初めて思い出した。なんたる失態。先んじて気付いていれば、日本を発つ前に奥さんに伝え、コストを大幅に抑えられたのに。こんなときに使う台詞はこれしかない。どうしてこうなった!?

連載「義母86歳と行く台湾」:「(1)開かないスーツケース」「(2)クレカ決済不能!?」「(3)オキニの杖はいずこ?」「(4)さらば苦手意識」「(5)突然の雨に備えなく

"独り反省会"

礁渓行き高速バスを待つ乗客(台北、撮影=りす)

「あなたのお母さんは高齢者だから半額ですね」ー。台北駅構内にある葛瑪蘭客運カマランバスの乗車券売り場。台北から礁渓までのチケットを頼むと、女性スタッフはこう教えてくれた。きっかけは奥さんの一言。「母親が86歳で足が悪いので乗り降りに迷惑をかけない座席にしてほしい」。この言葉がなければ、シルバー割を忘れたまま台湾を去ったかもしれない。

台北から礁渓まで1時間超の距離。料金は大人112ニュー台湾ドル(元、およそ560円)。義母はシルバー割が適用され、その半額。台湾は公共交通機関のうちの幾つかが、外国人高齢者もシルバー割の対象にしていて、これまで義母と奥さんご一行が利用した公共交通の中にも、受けられたはずのものが含まれていた可能性がある。なんだか申し訳ない。

流れていく景色をバスの車窓越しに眺めつつ、しばし"独り反省会"。結果、義母を高齢者と知りながら、足が悪いなどの身体の面に気が向かい、高齢者が受けられる権利の面に意識が及んでいなかったと気付く。救いは義母、奥さんともにまったく気にも留めていないこと。なんという大物感。この流れに乗り、今回の経験は次回に生かすと決めて割り切ることに。

良い予感

高速バスは乗降口のステップ一段がかなり高い。成人男性の膝くらいありそう。いよいよ礁渓に着いて義母が降りるようとするとき、運転手がやにわに飛び出して義母をサポートしようとしてくれた。乗客も高齢者に向ける視線がやさしく、気持ちが温かくなる。こうした一挙手一投足が観光客の台湾熱を高めるのだろう。父親、母親と一緒に訪れる日が待ち遠しい。

今回の教訓もある。両親との台湾は良い予感しかしない。(つづく)

余談:

実は、台北駅構内で高速バスのチケットを購入する前、義母と奥さんに少し時間をもらい、駅近くにある中華電信(台湾最大の電気通信事業者)の店舗に走り、SIMカードを買った。それまで街中に飛んでいるフリーWi-Fiを拾いつつ、奥さんとLINEを通じてやり取りしていたので、SIMカードを入れ替えてもらった後は快適そのもの。苦手だからと言って逃げていたらダメなんだと実感。「逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ」(碇シンジ)は真なり。

アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の主人公、碇シンジの知られた台詞

(写真:連載トップ画像=奥さん撮影の画像を基にりす作成)

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