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mizuki | 目端に映る短編小説
2022年9月30日 02:49
割烹着の店主からお釣りをもらって先生は暖簾をくぐった。私もその後ろに続くと、雲の切間から碧い空が広がっていた。夏空は、もっと風をよこせと急かしているようだ。太陽の下の雲は忙しなく動き、アスファルトは沸騰寸前の薬缶のようで、絶えず陽炎を揺らしていた。 「珈琲が好きなら、一つ、この近くにとても美味しいcafeがあるんですよ。」と先生は言った。「よろしかったら、どうですか?」 「私でよろしければ
2022年8月17日 23:58
1そのカフェがとにかく好きになったのは、飲んだ事もないほどの深煎りのコーヒーと、オーナーさんや店員の気さくさが、僕の居心地を良くさせたからだ。本当に毎日のように通っては、そこでコーヒーを飲み読書をしていた。このお店を知った当時は、とにかく観光客で溢れ、何度も来店を諦めたものだが、今はその観光客は消え、比較的入りやすくなっている。しかし、そのためか、本当に美味しいコーヒーを求めて、あるいは素敵