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創作大賞2023応募作品

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【短編】「アプリケーション」

【短編】「アプリケーション」

 「「「「「「「出会いに省略形なんてない。でも、普通に恋愛して、普通に付き合って、普通に別れるだけで、自分の居場所を失うリスクをとるなんて、割にあってない。」」」」」」」

 今の時代、「誰もが」そんなふうに思っていると思う。わたしもそうだし、みんなそう。先日も「最近の若者はね」って、見知らぬおっちゃんに飲み屋で絡まれたが、ああいう人たちは基本内弁慶なのだ。しかも、家の中では威張れない。威張れるの

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【短編】生きるためにやること--稼ぐことについての想い出

【短編】生きるためにやること--稼ぐことについての想い出

 世の中には本当にたくさんの職業があって、その数だけ仕事があって、それをこなしていく人々がいるが、そのほとんどが無くてもいいものだなぁ、と気がついたのは小学6年生の時だった。
 当時の僕の欠かせない事といえば、毎週3回のサッカークラブにいくことと、毎月300円のお小遣いを欠かさずもらうことくらいだった。あとは、友達と毎日、ひたすら遊ぶこと。事前に約束して遊びにいくなんてこともあまりない。気がついた

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【短編】移動

【短編】移動

 その日は雨が降っていたと思う。窓から景色を眺めると、車の速度に合わせて景色が変わりながら、その全てが、ぼんやりと、乱反射していた記憶があるから。雨音も聞こえていたはずだけど、あまり覚えていない。あの日は眠かった。

 その日、私は仕事に追われていた。ある会社との契約に関するちょっとしたミスが、私の退勤時間を、予想よりも遅らせていた。
 「大丈夫?」と言う上司。その言葉は、今の仕事に対しての心配で

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【短編】Too small to despair

【短編】Too small to despair

 レイはずっと待っていた。今日という、人生のうちの、いや、一年のうちの一日が終わってしまうその前に、彼自身に自由な時間が与えられる瞬間を待っていた。彼はこの時すでに、度重なるアルコール中毒と、その回復に、人生の大半を使い果たしてしまったために、もう長編小説を書くことができない体になっていた。“もう” などと言っても、今までだって一つも書いたことがないのだ。それでも彼は作家だった。短編ばかりで、後々

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【エッセイ】僕らすでに知っていること

【エッセイ】僕らすでに知っていること

世の中には、少し難しいことがある。

そしてそれは、ひとつやふたつではない。
けれども、どれもこれも、大切なものだと、僕たちはきっとそう思っている。

大人になるとわかってくることがある。
何かを大切にしていくことが、どれほど難しいか、とか。
何かを守っていくことが、どれほど難しいか、とか。
何かのために頑張ることが、どれほど難しいか、とか。

僕らは難しいと言う。

けれどもそれが、大事なんだと

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