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「稼ぎ」と「務め」に思うこと。

早朝から地元の振興会による《草なぎ》のお手伝いに行ってきました。

ちなみに草なぎとは、ありていに言えば草刈りのことです。草を横に払って切る、つまり薙(な)ぐというわけで「草なぎ」です。


そのお手伝いから帰宅すると、昨夜うちに泊まったというひとが起きてきました。

「おはようございます。泊まらせていただきました」

という会話から始まり、それからなんとなくコーヒーを飲みながら茶の間で雑談することになりました。

そこで気になったのが、そのひとの、この話。

「最近知ったんですけど、江戸時代の仕事には『稼ぎ』と『務め』の2種類があったんですって。というのは、お金を得るための仕事が『稼ぎ』、地域コミュニティのための仕事が『務め』。いま仕事と言うと、ほとんど『稼ぎ』が多いような。当時は両方できて一人前とされていたそうですよ」

さて、みなさんはこの話を聞いて、どう感じたでしょうか。


じぶんは40歳まで、暮らすには「稼ぎ」が必要だとばかり考えていました。もうひとつの「務め」にはほとんど気が回りませんでした。

もちろんいまでも「稼ぎ」が重要だと思いますけど、それだけじゃないと感じるようになってきています。

つまり、「務め」も大切だと。
そして、互いのバランスと相乗関係が重要なんだと。

いまふうに表現するならば、ワークライフバランスやパラレルキャリアとでも言うのでしょうか。


じぶんは現在《ソーシャルな隠居生活》をおくっています。自ら立ち上げた「ギルドハウス十日町」という住まいに身を置きながら。

そこでは「稼ぎ」と「務め」が絶妙なバランスで展開されているような雰囲気をかもし出しています。

「稼ぎ」を模索するなかで、「務め」となる “まちの用事” がいろいろ舞い込んできますから。上記の草なぎもそのひとつです。

うちの住人たちのなかにも、漫画を描いて「稼ぐ」ために住み始めたというのに、毎日のように最寄り駅の清掃などの「務め」をしているひとがいます。

同様に、「稼ぎ」の本業があるにもかかわらず、いったい何屋なのかわからないくらい「務め」をいろいろしているひともいますね。

そうした「務め」から「稼ぎ」につながることもあるようです。


この話のように、江戸時代における働き方や生き方、もろもろの価値観には共感するものがあります。

うちは「ギルドハウス十日町」だなんて名前であるけれど、全国誌やらテレビに取り上げられるほど “新しい住まいの形” のようでいて、実はすべてがそうでもありません。

というのも、まず建物自体が築100年以上の古い家です。しかしながら長い年月で築き上げられた場の力があり、訪れるひとの多くを「どこか懐かしい」「なんだか落ちつく」と感じさせる共通の美意識が詰まっています。

また、ギルドという組織は、もともと昔の中世ヨーロッパに実在していました。そこで展開されていた徒弟制度などが、江戸時代のたとえば丁稚奉公(でっちぼうこう)といった価値観と同等のものです。

このように、ギルドハウス十日町は、江戸時代と同時期にあった古き良き文化と絶妙に同期しています。新しいことばかりしているようで、本質的には昔のよさをたくさん取り入れているというわけです。

また、ギルドハウス十日町の基本コンセプトとして引用している「住み開き」もそうです。住まいを開放して交流空間とするその概念は、昔にはもっと日常的にあったものと言えます。

多くのひとが無意識下に持つ共通の美意識。ひとどうし根っこでつながっている本質的な価値観。ギルドハウス十日町で、なぜか懐かしさや居心地のよさを感じ、多くのひとが集う理由は、そうした部分にあるのかもしれません。


さて、江戸時代では、近江商人がこうも言っていたそうです。

「商いとは、売り手よし、買い手よし、世間よしの『三方よし』が揃わないといけない」と。

以前、こんな記事を書いたことがありました。

ギルドハウス十日町で展開される事柄には、「稼ぎ」と「務め」、そして「三方よし」がなんだかんだ絡んでいるようです。

巷でもこのところソーシャルビジネスという形態の事業も台頭してきました。じぶんが考案したアプリ「まちかどギルド」でも、ソーシャルビジネスと同様に「三方よし」を意識しています。

いまあるものを共有して成り立つ経済、いわゆるシェアリングエコノミーもそうした時代の潮流の変化によって注目されてきているのでしょうか。


ところで、冒頭の写真は、じぶんが発起人として取り組んでいる「Startup Weekend Niigata」という起業家コミュニティの、とあるイベントのときのものです。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

この写真にいるひとたちも、もちろん将来につながる「稼ぎ」をつくるために集まっているのだろうけど、それだけじゃないように感じます。

つまり、地域コミュニティのための「務め」もバランスよく果たそうとしているような。

(みんな意識しているわけじゃないと思うけど。)

もともとStartup Weekendは、起業支援のイベント団体ではありません。起業家を生むためのコミュニティです。

要するにイベントではなくコミュニティなので、社会や地域の課題と向き合うため日常的に活動するし、共感しあう創業の仲間や支援者を見つけて、ともに展開していきます。そういう意味で、新潟県コミュニティのStartup Weekend Niigataでは、「稼ぎ」と「務め」、「三方よし」のバランス感覚をともない、とてもよい雰囲気になっていると思います。


なんだか、いろいろ書き連ねて、文章が長くなってしまいましたね。

とりあえずこの辺で〆とします。


「稼ぎ」は大事だけれど、そればかりだとバランスが悪いんじゃないか。

もっとじぶんらしい働き方や生き方があるんじゃないか。

感情の出し方に違いはあれど、少なからずそう感じているひとたちがたくさんギルドハウス十日町に来ているように思います。

そうしてうちの住人になったひとたちは、個人差があるものの、いずれも「稼ぎ」と「務め」のバランスを取り戻そうとしている気がします。


歴史にヒントを得ながら、古き良き本質的な豊かさを柔軟に取り入れて。

これからを楽しく、じぶんらしく生きていきたいものです。

そのじぶんらしさがだれかの価値にもなって。

そうしていずれは「稼ぎ」と「務め」が両方とも満たされていき、自他ともに認められる一人前となっていけたら。

人生100年の時代。45歳のじぶんなんてまだまだ半人前以下のヒヨッコ。一人前だなんてとても言えたもんじゃありませんね。

よかったらサポートをお願いします。もしくはギルドハウス十日町へ遊びにいらしていただければうれしいです。