見出し画像

私に起こった『蛙化現象』=過去の理不尽冷めを語る、という話。

いつも読ませて頂いている、かぜの帽子さまのこちらの記事。

これを読んで、私もあったあった!しかも何度も!!となったので、私の過去の「蛙化現象」の話を書こうと思う。

ちなみにこの「蛙化現象」の定義は「好意を抱いている相手が自分に好意を持っていることが明らかになると、その相手に対して嫌悪感を持つようになる現象を指す心理学用語。」らしい。

私の場合は「相手が自分に好意を持っている」ことそのものに嫌悪感を持った訳ではなかったけれど、自分が好意を持っていたはずの相手が、ちょっと「脈あり」っぽくなってきた瞬間に、およそ普段なら恋愛に全く関連しないであろう事を原因に、いわゆる「理不尽冷め」を起こしていた。タイミング的に考えて、恐らくこの「蛙化現象」が先にあって、そこを自分に認めさせるためにトンデモ理論で思考回路が走った結果ではないかと思っている。

時期的にはシステムエンジニア時代、『「彼氏じゃなかった彼」に懺悔したい、という話』で書いた「婚活と称して、身近な男性をつまみ食いしてはポイ捨てしていた」時期に集中して起こった現象である。当時私には長年付き合っていた彼氏がいたのだが、私の恋愛は基本的にクズエピソードしかないので、深く気にせず読んで頂きたい。この付き合いが長かった彼氏の話もまた別の機会に書きたいところである。


ケース①「健康に良いものが好き」だったA君の場合

SE時代の同期で、顔立ちが地味系ながらも整ったイケメンだったのと、院卒だったために年上でもあり、落ち着いてクールな印象が気になっていたA君。
入社から2か月間の新人研修中、A君は私が仕掛けたアプローチをことごとくかわし、何度かそれとなく振った二人飲みの誘いも爽やかに全スルーする塩対応っぷりだった。基本的に惚れっぽく、かつ相手が脈ナシであればあるほど燃える質の私にはこの塩対応がなかなかツボで、スルーしつつも同期としての親しさは維持してくれるA君に、興味は募る一方だった。

とはいえ、深追いでキモがられるわけにはいかない。私はA君を「今は脈ナシ」と冷静に分析し、個人的なアプローチを控えて、同期コミュニティの中で、時間をかけて自然に距離を詰めていく作戦に切り替えた。
A君と私の配属先は別々だったので、配属後に顔を合わせる機会はめっきり減ったものの、A君はお酒が好きで、飲み会には積極的に顔を出していた。そこで私は、たまにある同期飲みには全て参加し、二次会三次会、果てはオール飲みまで、飲み会がそこにある限りどこまでも付き合い続け、「同期飲みでよく会話する相手」の立ち位置を確保することにした。
お酒の入ったA君は、普段のクールで落ち着いたキャラから、ノリのいい陽キャに変貌する。このギャップもなかなか味わい深かった。

さて、入社後一年が過ぎた頃。配置転換で、A君は私のいるプロジェクトに異動してきた。チームが違うので仕事中の絡みはなかったが、このタイミングでA君の塩対応が急激に軟化して、かなり仲良さげな雰囲気で話せるようになった。A君も異動での心細さがあったりして、完全アウェイな環境で「既に知り合い」の私から安心感を得ていたのかもしれない。

そして6月、初めての後輩となる新人たちが配属された。そしてそのプロジェクトでの歓迎会は「入社二年目の先輩社員」が幹事をやるのが通例だったため、私はA君と二人で幹事を行うことが決まった。
するとA君は驚いたことに「下見のために飲みに行こう」と提案してきた。候補の店を2,3店まで絞ったら、実際に二人で飲みに行き、最適な店を選ぼうというわけである。
歓迎会でそこまでするか?気合入りすぎじゃね?とは思ったものの、A君と親交を深めるまたとないチャンスだ。その提案に乗っかった私は、僅か10日間の内に、A君と3回のサシ飲みに行くことになった。

「下見」は順調に進んだ。といっても、候補の店に行って2時間ぐらい駄弁りながら飲んで解散するだけの、単なるサシ飲みである。一応店の場所や雰囲気、ドリンクの種類がどのぐらいあるかなどのチェックはしたが、2軒目あたりから、私はA君の「下見」が単なる名目であることに気が付いてきた。

ふむ。これは「脈アリ」だな。

3件目の下見で行った居酒屋で、めちゃくちゃ奥手というか、無難すぎる話しかしてこないA君に相槌を打ちつつ、そこそこ以上の好意があると分析した私は、冷静に「婚活」目線でA君の採点を始めた。相手が脈アリとなった途端にこちらに余裕が出来て、A君に対する熱が薄れているわけだが、この時点ではまだ自覚はない。そして「ウコン入り○○サワー」(うろ覚え)を注文したA君に味の感想を聞いた時、それは来た。

「『健康に良い』って思うと、どんなものでも3割り増しぐらいで美味く感じるんだよねー」

ちょっと面白い回答である。だが心底楽しそうにそう言ったA君の、その回答を聞いた瞬間、私は冷めた。どういう訳か、完全に冷めてしまった。

「A君が健康に良いものが好き」というのは新人時代から知っていたし、それをネタにからかったことだって何度もあったし、その1分前までは全然気にしていなかったし、私が喫煙者なのを責められた訳でも何でもないのに、だ。
そしてその次の瞬間から、それまで「爽やかでカッコいい」と思っていた彼のやや浅黒い肌の色や、綺麗で真っ白な歯並びがやたらと目について、しかもめちゃくちゃ不快に見え始めた。
突然来た「それ」に自分でも混乱しながら、私はそれまでのテンションを必死に維持して和やかな会話を継続し、飲みを終えて解散し、その後も無難にA君と歓迎会の幹事を務め終えて、その後A君には近づかなくなった。
およそ一か月後、A君からは「花火大会を一緒に見に行かないか」というお誘いのメールを貰ったが、こちらも丁重にお断りした。

「健康に良いものが好き」なのは当時の私の生活スタンスとは確かに離れていたが、私はそれを元々知っていて、彼に近付いたはずである。なぜあの時あのタイミングでそれに冷めてしまったのか。自分の中でも永遠の謎だが、これこそが理不尽冷めだろうと思う。A君、すみませんでした。

ケース②「ホテルで頭痛薬を飲んだ」B先輩の場合

時系列で言うと、①のA君の直後の話だ。

B先輩もまた私と所属会社が同じで、私の勤務先と同じ建物の、別フロアにあるプロジェクトに所属していた。長身の優しげなイケメンで、ややシャイで奥手っぽい話し方ではあるものの、かなりモテそうに見えた。笑うとチラリと見える八重歯が可愛らしく、愛嬌のある雰囲気を作るのに役立っていた。

B先輩とは配属後間もないころから、顔を合わせれば軽く挨拶する程度の仲だったが、それ以上の接点はなかった。しかし上記の「A君と幹事を務めた歓迎会」の場で、学生時代にバンドをやっていた共通点で盛り上がった私とB先輩は、その流れで連絡先を交換することになった。
B先輩の好きな音楽は私の好みから若干外れていたが、先輩の外見に目を付けた私は、その差をあえて近付くためのネタにした。学生時代からよく使っていた「オススメのCD貸して下さい!」戦法を使ったのである。

なお狙った相手が推しているものを「借りる」手は非常に有効なのでオススメだ。誰でも自分が好きなものを布教したい欲はあるし、信者を増やすためならば喜んで貸してくれることが多い。そして重要なことに「会話をする」だけの所から、「借りる」「返す」の2回、短くとも物理的に会う機会を作れる。きちんと返し、お礼を述べると同時に相手のセンスを誉めちぎり、また別のオススメを「借りる」算段を整えれば、永久機関の完成である。

そして3,4枚のCDを借りては返し終わった頃、私はさりげなく「CDはいつもどこの店で買っているのか」という質問を振り、「今度一緒に行ってみる?」という誘いをまんまと引き出して、B先輩と休日デートのチャンスを得ることとなった。この辺り、amazonやサブスクで大体が事足りる今の時代ではちょっと使いにくい戦法かもしれない。

タワレコで先輩おススメのCDを目の前で買い(「先輩オススメのCD、ホント気に入ってるんです!」を演出するための投資である)、ついでにちょっとブラブラしたあと、夕食も兼ねて居酒屋で飲み始めると、しばらく経ってからB先輩がホテルの誘いをかけてきた。草食っぽい雰囲気を出しつつも、そこはやはりイケメン。実際には肉食寄りのモテるタイプだったのだろう。割とそういう流れに抵抗がない、というより単純に「イケメンとはヤリたい」肉食女子だった私は、B先輩の誘いを快く受けた。

さて、ホテルに着いて互いにシャワーを浴び、コトが済むと、先輩は頭が痛いと言い出した。
先輩がどのぐらい酒に強いのかは知らないが、酒を飲んだ後であることを考えれば、その頭痛は十中八九アルコールの影響だろう。私はそう思ったが口には出さず、ひとまず先輩の体調を気遣い、実家暮らしの先輩が終電に間に合うよう、時間になったら起こすからと、しばらくそのままベッドに横になるように勧めた。
すると先輩は、おもむろに自分の鞄を漁り始め、頭痛薬を取り出すと、「薬が効けば大丈夫だから」とペットボトルの飲み物でそれを飲んだ。

その瞬間、何故か、私は冷めた。

元々頭痛持ちならば、鎮痛剤を持ち歩くのは理に適った行動である。むしろ準備が良いと誉めても良い。飲酒後に飲んで平気かは分からないが、今身動きが取れないほど痛むなら、持っている痛み止めを飲むというのは当然かつ自然な対応だ。
そう頭では分かっているのに、一旦冷めてしまった目で見ると、バスローブ姿でベッドに横たわるB先輩はもはやイケメンには見えなかった。チャームポイントだったはずの八重歯が「ただの歯並びの悪い男」にしか見えなくなってしまった私は、体調を気遣う演技をしつつ、それとなく先輩に触らずに済むように振る舞い、先輩の頭痛が和らぐのを待ち、その後そそくさと解散した。

行為が終わった直後に「それ」が起こったということは、私の側の「賢者モード」の影響かもしれない――と考えた私は後日、念のためもう一度B先輩と飲みに行ってみた。
が、一度冷めてしまった事実は何も変わりがなかった。B先輩が笑う度に「歯並びが悪い」笑顔が苛立たしく不快に見えてしまった私は「明日は早朝から用事がある」と、2度目のホテルの誘いを未然に防いでおいて、一定時間和やかに飲む努力だけをして帰宅し、以後B先輩のことは切り捨てることにした。

それまでずっとチャームポイントとして見ていたはずの八重歯が、冷めたら歯並びが悪いだけに見えるというのは、完全に「あばたもえくぼ」の逆現象だが、頭痛薬を飲んだのが何故、あの日の私にとって問題だったのだろうか。
A君の件と共通するのは「健康」に関する点だが、私は無意識に男性に「完全無欠の健康」を期待してしまっていたのか。だとするとその原因は何か。「健康」が共通するというのは今書いていて初めて思い当たったが、ちょっと心当たりがなくもないので、ここは深掘りしてみる価値がありそうである。


他にも冷めエピソード……というより「セックスしてみたら好みじゃなかったのでヤリ捨てをしてしまった」パターンが2,3回あるが、いずれもこの「蛙化現象」の結果だろう。私の場合『好意を抱いている相手が自分に好意を持っていることが明らかになる』を、好意的な言葉や雰囲気などではなく、セックスで認識してしまい、それが「セックスが好みじゃなかった」という不満に転嫁されて「ヤリ捨て」の正当化をしていたように思う。

「蛙化現象」は『性的対象だと思われるのが苦手』なことが原因の一つになりがちらしいが、自分が最初から性的対象だと思って相手を認識していると、私のような「ヤリ捨て」パターンになることもあるのかもしれない。
そこまで大量の人数と言うほどでもない(はずだ)し、私が女だったのがせめてもの幸いというか、処女を食い散らかしたとかではないので罪は軽かったはずだと思いたいというか、まぁまぁどちらにしてもクズビッチだった自覚はあるので、当時私の被害に遭った男性諸氏が、今頃は幸せになってくれていることを願うばかりである。

やー、誠にすみませんでした。
流石に今は年食って落ち着いてるから許して!

いつだったか、漫画広告か何かで『私のことを好きな男なんて好きじゃない』的な台詞を見て※、めちゃくちゃ激しく同意した。私は思春期からずっと、恋愛に関してはこの傾向があった。まさに蛙化現象の前提条件となる思考であるように思う。
当然、この思考で幸せな恋愛が出来るはずがないのだが、そのあたりに関してはまた改めて書きたいところだ。

どうあれ、この蛙化現象。年齢的にもそろそろ大丈夫だとは思うが、二度と発生させないよう気を引き締めつつ、自己肯定感も頑張って上げていきたい所存である。
ケロケーロ!

※ググってみたら、「ハッピーマニア」という漫画の「あたしは あたしのことスキな男なんてキライなのよっ」という台詞があるらしいので、恐らくこれだと思われる。一時期ネットで流行っていたようなので、多分それで見たのだろう。うーん、共感するけど、してちゃまずい奴ですね。ケロケロ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?