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物語『マイ・キャット・プリン』(物語『しゃべる犬、パスカル』の進化バージョンのお話)

  

 小学校六年生の鈴原綾乃は好きだった男の子に振られました。また、中学受験に失敗しました。落ち込んだ綾乃は飼い猫のプリンに愚痴をこぼします。すると、プリンは綾乃に向けてしゃべりはじめます。そして、綾乃の悩みに答え、アドバイスをくれます。
 綾乃はプリンに尋ねます。
「あなたの正体はなんなの?」
 プリンの答えは、なんと・・・! そして、最後に二人は!?!

 私の名前は鈴原綾乃。区立の小学校に通う六年生。
 二月二日は私立中学校の合格発表日でした。私は電車に乗って、中学校まで合格発表を見に行きました。残念なことに、掲示板に私の受験番号は、ありませんでした。
 それから約十日後、バレンタインデーが来ました。私は、小四の時から好きだった陸君に告白の手紙を渡しました。陸君は驚いた顔をして、言いました。
「ごめん。これからも友達でよろしく!」
 私は悲しくて、くやしくて、どうしようもありませんでした。
 そんな時に、飼い猫のプリンがしっぽを立てて私に近寄ってきました。私はプリンに向かって言いました
「つらすぎる! 何もかも思い通り行かない」
 すると、プリンがしゃべり始めました。
「綾乃! 私の言うことをよく聞いて!」
 私はびっくりして言いました。
「私に話しかけてきたのは、あなたなの?」
 プリンがうなずきました。
「綾乃。イヤな気持ちに襲われた時は、頭の中から考えを追い払うのよ!」
 私はプリンに向かって言いました。
「そんなこと、できないわ」
 プリンは頭を左右にふりました。
「いいえ、できるわ。とにかく、体をガンガン動かすの。運動して、心の中で『バカヤロー』と叫びながら勢いよく地面を蹴って歩くのよ。そうすれば、体の中から怒りを吹き飛ばすことができる。とにかく、やってみて!」
「わかったわ。やってみる!」

 次の日、私のところに、またプリンがやって来ました。私はプリンに言いました。
「行きたかった中学校は不合格だったし、好きな男の子にも振られてしまった。なぜすべて、私の思い通りにはならないの?」
 プリンが言いました。
「綾乃。変えられないことは諦めるのよ。過去の失敗は取り返しがつかないし、他人を変えることはできないんだから」
 私はプリンに向かって言いました。
「変えられないことは諦めて受け入れるなんて、できないわ」
 プリンは首を左右に振りました。
「いいえ、できるわ! とにかく、何度も自分につぶやくのよ、『無理なことは無理』って。そうすれば、過去や他人など、変えられないことを受け入れることができるわ。とにかく、やってみて!」
「わかったわ。やってみる!」

 次の日も、私の前にプリンがやって来ました。私はプリンに言いました。
「毎日が同じことの繰り返しで、おもしろくないの。将来のことが不安でたまらないわ!」
 プリンが言いました。
「綾乃。自分が本当にやりたいことを見つけるのよ。頑張れば、ある程度は自分の思い通りになるかもしれないことを目標にするのよ」
私はプリンに向かって言いました。
「そんな目標、簡単には見つからないわ」
 プリンは首を左右に振りました。
「いいえ、できるわ。毎日毎日、自分に問い続けるのよ、『自分が本当にやりたいことは何だろう』って。そして、自分の目標が見つかったら、その実現に向けて毎日少しずつ努力するのよ。努力しなければ、夢が実現することはないのよ。小さな努力を積み重ねれば、夢は実現するかもしれない。綾乃。やりたいことをやらなかったら、後悔するわ。やりたいことにチャレンジすれば、たとえうまく行かなくても、後悔は生まれないのよ!」
「わかったわ。やってみる!」

 次の日も、私の前にプリンがやって来ました。私はプリンに尋ねました。
「プリン。あなた、本当は何者なの?」
 プリンは言いました。
「目を閉じて、そして、開けてちょうだい」
 私は目を閉じて、そして、開けました。すると、私の前に、私にそっくりな女の子が立っていました。もう一人の私が私に向かって言いました。
「私がプリンよ。そして、私は本当のあなたの姿なの。つまり、私は、あなたの中に眠っている、すばらしい力なのよ。綾乃。自分の中にあるすばらしい力、考える力、行動する力を最大限発揮させるのよ。そうすれば、すべてうまく行く。大丈夫よ。できるわ!」
「わかったわ。ありがとう」
 もう一人の私が両手を広げました。私も両手を広げて、もう一人の私に近づいて行きました。そして、私たちはハグし合いました。私の体ともう一人の私の体は溶け合い、私たちは一つになりました。私たちの体は熱く熱く燃えました。新しい力が私たちの体の中に満ち、私たちは光り輝きました。

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