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【文字を記すことを「書く」と呼ぶが、日記は「つける」と呼ぶ。 -- 書評『日記をつける』】

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タイトル: #日記をつける
  著者: #荒川洋治
  書籍: #文庫
ジャンル: #文章術
 初版年: #2010年
 出版国: #日本
 出版社: #岩波書店
 全巻数: #1巻
続刊予定: #完結
 全頁数: #224ページ
  評価:★★★★☆
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【あらすじ】

 誰もが経験のある「日記をつける」。この行為について現代詩人の荒川洋治は一から丁寧に考える。そもそも私たちはなぜ日記をつけるのか。人はどんな日記をつけてきたのか。歴史上の書物や文学作品を参考に、楽しく日記をつける方法を読者にそっと寄り添うように教えてくれる。

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【感想的な雑文】

 文字を記すことを「書く」と呼ぶが、日記は「つける」と呼ぶ。

 その理由について、筆者の荒川氏は本書でこう説いている。

「書く」は、書いた文字がそのときだけそこにあればいいという、どちらかというとそういうものであるのに対し、「つける」は、しるしをつける、しみをつける、がそうであるように、あとあとまで残す感じがある。いつまでも残るように記すこと。これが「つける」なのだと思う。だから日記は「つける」のだ。

 また荒川氏自身も小学生の頃から日記を欠かさずつけている達人であり、古今東西の日記を読み集める生粋のマニアでもある。その日記に対する熱量は「つける」の解説から察する通り、文体は静かだが相当のもの。そんな日記を愛する筆者はつける際に重要なエッセンス「日付・天気・時刻・順序・文量・文体」といった先人が書き残した技法を余すことなく紹介してくれる。

 そうは言っても、続かない・ネタがない・思い出せない……など苦い思いをした人も多いはず。もしかしたら今読んでいるあなたも過去に挫折した経験があるかもしれない(その経験のほとんどは夏休みか正月に集まると思う)。そして私自身もブログを何か月も放置している挫折民の一人である。

 なぜ多くの人が日記に挫折するのか。

 荒川氏は「初心者が陥る“精密さ”」に論点を置いて考えている。

 例えば、以下に心当たりないだろうか。

 ◆意識して元日から始める
 ◆意識して綺麗な字で書く
 ◆意識して綺麗な文で書く
 ◆意識して詳細に書く(そして字が小さい)
 ◆面倒になり文体が荒くなる(そして字が大きい)
 ◆「とても」「たいへん」「非常に」「ものすごく」を使いがち
 ◆日記というのは時系列で書かないとダメ!
 ◆寝る前は早く寝たいから特に平日は記入を休みがち
 ◆後日まとめてつけると日付と行動の記憶が混ぜこぜになる
 ◆そもそも読者が自分だけだから止めても叱られない

 日記初心者がやりがちなこれらについて、荒川氏はこう提唱している。

「正しい日本語」にしばられる必要はないのだ。
 汚れていても、濁っていても、荒れていても、ことばがあればそれでいい。日記は本来は自由の世界である。
 なれないうちは、かたちにこだわらないことだと思う。

 要するに、良い意味で「いいかげん」なのが日記を続ける秘訣とのこと。「こんな長く解説しといて、なに当たり前のことを…」と思われるかもしれないが、そんな当たり前すらできないのが失敗する人の特徴であり、逆に言えば「当たり前を続けることだけが成功に導く」と意味している。

 それに「日記を一年間続ける」「ノート一冊埋まる」「ブログの読者が増える」これらは書き続けた本人にとって、きっと今後に大きな自信を与えてくれると思う。

「正しい日本語」にしばられる必要はないのだ。

 ノートを目の前に、ネットを目の前に、この言葉は大きな勇気を与えてくれる。

 また、別のページにこんな一文がある。

 日記は、字の現場でもある。

 この一文を読んで、これは私の超訳なのだが、もしかしたら文学・芸術・科学・報道など「記録」と呼ばれる媒体物の全てには日記のエッセンスが編み込まれているのかもしれない。

 私たち日常に組み込まれている“日記”を探すのもまた、日常に楽しみを与えてくれる。

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【本日の参考文献】

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【あとがき】

 本書と穂村弘『にょっ記』を交えた解説文も書きましたので、どうぞよろしくお願い致します…!


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